私たちの住む世界は一体何次元なんだう?
私はときどき、そんなことを思い浮かべることがあります。
ぼーっと考えているだけでも、想像力がかきたてられます。
最先端の物理学では、この問いにこたえるために、
さまざまな理論があります。
今回は、ランドール・サンドラム理論 について書きたいと思います。
まず、出発点は4次元です。
えっ? と思われるかもしれません。
4次元という言葉には、不思議なイメージがあるからです。
ですが、物理学では空間と時間を合わせて、4次元の時空といいます。
ですから、物理学の4次元は、
私たちの住む普通の世界のことを表しています。
ところで、物理学の理論では、
私たちの世界は5次元以上の可能性があることを示唆しています。
ランドールとサンドラムにより提唱された理論もその1つです。
この理論によると、
私たちの住む世界は、
大きな海に浮かぶ小さなボールみたいなもの
に例えることができます。
小さなボールが私たちの住む4次元の世界で、
大きな海が5次元以上の世界です。
すごいですね。
私たちの住む世界は、
5次元以上の大きな空間に包まれている
可能性があるということです。
そして、小さなボールは他にもたくさん存在するといいます。
私たちの宇宙以外にも、たくさんの宇宙が存在するということです!
物理学の言葉では小さなボールを 「ブレーン」 といい、
大きな海を 「バルク」 といいます。
ランドール博士によると、大きな海は、
5次元かもしれないし、6次元かもしれないし・・・
まだ何次元とは断定できないといいます。
ブレーンというのは日本語で「膜」という意味ですが、
必ずしも平面的な膜とは限りません。
1次元の膜は弦であって、2次元の膜は平面的、3次元の膜は空間的、
というように何次元の膜も存在します。
そして、私たちの住む世界は4次元のブレーンだといいます。
5次元以上のバルク(大きな海)に埋め込まれた
4次元のブレーン(小さなボール)
そんな世界観が、ランドール・サンドラム理論から見えてきます。
<1つの宇宙(膜)が5次元空間に浮かんでいるイメージ>
さらに、この理論には魅力的なアイディアがあります。
世の中には、
重力や電気、磁気、原子より小さな粒子に働く力
などがありますが、これらのなかで、
重力だけが極端に弱いのです。
ではなぜ、重力だけが弱いのでしょうか?
それは、
重力だけが5次元以上の空間に働いているからだと
ランドール・サンドラム理論はいいます。
すごいことですね。
重力だけが5次元以上の世界を移動できるというのは、
不思議な気持ちにさせられます。
< いくつもの宇宙がスライス状に並んでいるイメージ >
ところで、5次元以上の世界というと、
私たちの住む4次元より、次元の数が多いのですが、
このことを 「余剰次元」 といいます。
つまり、
5次元だと余剰次元が1次元で、
6次元だと余剰次元が2次元ということになります。
それまでの物理学では、余剰次元のサイズは
極めて小さいとされていましたが、
ランドール・サンドラム理論によると、
余剰次元のサイズは必ずしも小さくないといいます。
私たちは小さなボールの世界に閉じ込められていて、
外の世界の大きな海を感知できないだけなのです。
なんだか壮大な景色が目に浮かぶようです。
今回は、ランドール・サンドラム理論について紹介しましたが、
5次元以上の世界はまだ実験で検証されていませんので、
正しいかどうかは今後の展開次第だといえます。
◆ 「数」 と次元については、私の本 『数の世界』 をご覧ください。
私の本では、実数から八元数までの「数の広がり」について、
数学的な観点から詳しく書かれています。
実数、複素数、四元数、八元数は、
1次元、2次元、4次元、8次元の数とみなすことができます。
(ブルーバックス)
【執筆者】
松岡 学
数学者、博士 (学術)
高知工科大学 准教授
大学で研究や教育に携わる傍ら、
一般向けの講座を行っている。
アドラー心理学の造詣も深く、
数学の教育や一般向け講座に取り入れている。
音楽 (J-POP) を聴くのが趣味。
ファッションを意識し、自然な生活を心がけている。
出版物:『数の世界』ブルーバックスシリーズ、講談社。
『5歳からはじめる いつのまにか子どもが算数を好きになる本』スタンダーズ社。
『キララな恋愛や結婚生活を送るエッセンス』CLAP。
詳しいプロフィールはこちら
< お問合せ先 >
※ 企業様などから、松岡へのお仕事のご依頼の窓口はこちらから
※ 出版社様からの執筆(出版)のご依頼は、
こちらから直接ご相談ください。