THE BRIDGE/ブリッジ | Just for a Day: 小林真里ブログ

Just for a Day: 小林真里ブログ

映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

スウェーデン&デンマーク合作のTVドラマシリーズ

『THE BRIDGE/ブリッジ』シーズン1鑑賞。





スウェーデンとデンマークを結ぶオーレンス橋の、

国境線上で女性の死体が発見される。

胴体をぶった切られたその死体は、上半身は

スウェーデンの政治家、下半身はデンマークの娼婦と、

別々の女性のパーツだったことが判明。

スウェーデンの敏腕女刑事サーガとデンマークの

ベテラン刑事マーティンが組んで、この猟奇的な事件解明に奔走する。


前半は犯人が、トリッキーな犯罪を次々と仕掛け、

スウェーデンとデンマークの社会問題(移民問題、ホームレス問題、医療保険問題)

をあぶりだし、「なんかビジランテみたいな奴だなあ」と思わせ、

後半一気に本題のパーソナルなリベンジに暴走するという急展開がダイナミック!

そして、長期間に渡る緻密で綿密な犯罪計画に戦慄。


期待通りの、北欧らしい闇を感じるダークな作風がナイスでヘヴィかつリアルな

展開がスリリング。これは感服しました。

映画だけど『ミレニアム』三部作よりも、圧倒的に面白い。


本作がユニークなのは、主人公の刑事二人の特異なキャラクター造形。

30台後半の美人刑事サーガは、鋭い洞察力と観察力を持ち、天才的な推理で

事件を解明していくが、周りの同僚からは「変な人」呼ばわりされており、

不器用どころか、人の感情や空気が読めないばかりか、

「ウソも方便」という言葉の意味もわからず常にルール第一。

仕事一徹でプライベートもなく、友人も恋人もいない。

時々欲求不満になると、バーで「ねえセックスしない?」とストレートすぎる言葉で男を誘う。

言動も行動も傍若無人かつトリッキーで、観ていてはらはらすると同時に滑稽で笑いを誘う。

ヘヴィでダークなストーリーにユーモアを軽妙に絡めることに成功しているのだ

(アメリカのリメイク版『ザ・ブリッジ』ではダイアン・クルーガーがこの役を演じており、

アスペルガー症候群という設定だが、本作にはこの言葉は登場しない)。


相棒の刑事マーティン(演じるのは、『プッシャー』や『ブリーダー』など

ニコラス・ウェンディングレフィン初期作の主演キム・ボツニア!)は、

「パイプカットしたばかり」の子沢山な刑事だが、浮気性で色々家庭の問題を抱えている。

前妻との間にできた、ニートのティーンな息子が転がり込んできたのも悩みの種。


骨太クライムサスペンスとしてもツイストが効いていて、

知的で緊迫感がありで面白いが、

この凸凹コンビのやりとりも秀逸で、仕事を通じ信頼関係を強めながら、

マーティンのアドバイスや言葉を糧に、サーガが変化を見せる成長譚の物語でもあるのだ。


『True Detective』とはまた違う魅力を持つ素晴らしい作品でしたね。

というわけで、早速シーズン2のUK盤のDVDをオーダーしました。

その前に、『オーファン・ブラック』シーズン2のBDが届いたので、観ねば。