ドア・イン・ザ・フェイス、そして、フット・イン・ザ・ドアという、恋愛心理の2大交渉テクニックの話をしたけど、今回は、最後の1つ…禁じ手とも言える「ローボール・テクニック」についての話だ。
これは、マイナス面や不利な条件をあえて伏せておいて、何らかの承諾を得たあとに「実は…」と、後出しでそれを出す感じ。
分かりやすい例で言うと、モ○ゲーや、GR○Eなんかの「ソーシャルゲームアプリ」のプロモーションなんかがまさにそう。
テレビのCMであるように、最初は「無料」を謳ってユーザーを集めて、実際に無料で始められるんだけど、ゲームを進めていくうちに、よりレアなアイテムを手に入れるためには、実は課金が必要になってくる…というアレだ。
このローボール・テクニックの効果についても、アメリカの心理学者のチャルディーニが実験をしている。
まず、学生を対象に、
「心理学の実験に協力してください。」
という依頼をして、それを承諾してくれた相手に、
「では、実験は、水曜日か金曜日の朝7時から始まるので間に合うように来てください。」
と、学生にはちょっとキツい条件(けっこう早起き)をあとから提示した。
最初から「朝7時から始まる実験…」という依頼した場合は、31%しか承諾してくれなかったんだけど、事前に「心理学の実験に協力して欲しい」という依頼を承諾を得たあとに、本命の依頼をした場合は56%が承諾した。
![キャッチボールをする彼女](https://stat.ameba.jp/user_images/20130519/04/lovestrategist/0e/65/j/o0600040012544033823.jpg?caw=800)
photo by underclasscameraman
もともとの由来は「ローボール」という名前のとおり、キャッチボールをするときに、最初は低いボールや易しいボールを投げるんだけど、次第に高いボールやスピードボールなど、取りにくいボールを投げても、相手は受けてしまう…ところから来ている。
ローボール・テクニックも、フット・イン・ザ・ドアと同じ、
「一度受け入れた(承諾した)要求は、なかなか自分で覆せない」
という、「一貫性の原理」に基づいたテクニックなので、一見すると同じように思うかもしれない。
けれども、フット・イン・ザ・ドアの場合は、それぞれの要求が別モノであるのに対し、ローボール・テクニックの場合は、要求自体は変わらずに、あとから最初の好条件を撤回したり、別の条件を付け加えるんだ。 そして、条件が変わったにもかかわらず、(一貫性の原理によって)結果的に承諾させてしまう…というテクニックなんだ。
これを恋愛に当てはめて…たとえば、いつも早く帰っちゃう女の子を、ちょっと遅めのデートに誘うような場合。
キミ:「このあいだ観たいって言ってた映画のチケットが手に入ったから一緒に行こうよ!」
彼女:「えーほんと?観たーいっ!」
(そして、OKを取ったあとで)
キミ:「あ、でもこれ…時間がね、9時からの最終の回で、ちょっと遅くなるけど、まだ終電あるから…いいよね?(^_^;)」
※絵文字は雰囲気を汲んで欲しい。
…と、こんな感じ。
映画を観終わったあと…ちょっと一杯…と粘るか、それとも、次のデートの約束をとりつけて、じっくりと攻めるかは、そのときの雰囲気次第だ。
また、ベタな手口だけど、
キミ:「○○ちゃん、今度みんなで飲みに行こうよ!」
彼女:「わぁ!いいね!行く行くー!」
(そして、OKを取ってから、あとで…)
キミ:「なんかね、他の連中…仕事で忙しいみたいなんだけど、お店キャンセルするのがもったいないから、二人分の予約に変更しておいたよ。」
と、二人きりのデートにしてしまう。
こんなベタベタなやり方で、相手が乗ってくれるか…と思うかもしれないけど、このテクニックを使う場合、気をつけなきゃいけないのが、あとから条件を提示するときだ。
言わば「後出しジャンケン」するようなものなので、
「最初から言ってくれないなんてズルい」
と、嫌悪感を抱かせないようにしなきゃダメなんだ。
つまり、ただ好条件を撤回したり、別の条件を付け加えるんじゃなくて、
「あ、ごめーん!ちょこっと最初と変わっちゃった(^_-)-☆」
と、あくまでもうっかりした感じを演出したり、申し訳ない感じを出したり、または、(自分ではコントロールできない)不測の事態で条件が変わってしまった「フリ」をして、相手の女の子に
「もぉ…しょうがないなぁ…」
と思わせるんだ。
…ただし。 最初に話したとおり、ローボール・テクニックは、ある意味「禁じ手」のようなものだ。
なぜならば、テクニックとしてこれを使う場合は、仕掛ける側(つまりキミ)が、最初の好条件を覆したり、またはマイナス面や、あとから提示する別の条件のことを、もともと知っているって前提だからだ。
あとからちゃんとそれを伝えるから、女の子に断る機会も与えてるし、もちろん、ウソをつくわけじゃないけど、やっぱり…後出しジャンケンって…ズルいよね。
確かに、ビジネスなどではよく使われているし、ハマったら強力だけど、使い過ぎると、下手すると「うそつき」「詐欺師」扱いされて、それまでの信頼を失いかねない。
だから、何度も使えるもんじゃないし、不快な気持ちにさせないためにも「うっかり&申し訳ない」…って演出がかなり重要なんだ。