スーパーやデパ地下に行くと、ときどき綺麗なおねーさん(じゃないこともあるけど)が、調理された商品を持って試食を勧めてくる。
本来は、味を確かめて、美味しいと思ったら買ってね…っていうプロモーションなんだけど、その裏には実に巧妙な心理トリックが仕掛けられているとしたら、キミは信じられるだろうか?
もし、あれが、試食品がただ置かれているだけだったら、一口食べてスルーすることもできる。
けれども、おねーさんがそこにいて、直接商品を手渡すってところがミソなんだ。
ボクらは、人から何かしてもらうと、お返しをしなきゃならない…って感情を抱く。
これは「返報性の原理」と言われているもので、ビジネスなどでも使われる「ドア・イン・ザ・フェイス」というテクニックは、譲歩的依頼法とも言われ、まさにこの返報性の原理に基づいた交渉術だ。
![ドアから覗く女](https://stat.ameba.jp/user_images/20130517/01/lovestrategist/b2/0c/j/o0600045012541542174.jpg?caw=800)
photo by tavopp
アメリカの社会心理学者のチャルディーニは、このドア・イン・ザ・フェイスの効果を確かめるために、学生たちに次のような実験を行った。
実験者は「これから非行少年たちを動物園に連れていくんだけど、2時間ほど手伝ってくれないか?」と依頼した。結果は17%の学生がこの依頼を承諾した。
次に、この依頼の前にもっと大きな依頼をしたらどうなるかを調査。 まず「2年間にわたり毎週2時間、非行少年たちのカウセリングをしてくれないか?」と学生に依頼したところ、この依頼には全員が拒否をした。
けれども、その後、前述の「動物園に連れて行く手伝い」の依頼をしたところ、50%の学生がその依頼を承諾。つまり、承諾率が約3倍に跳ね上がったんだ。
このテクニックの成功のコツは、1番目と2番目の依頼の間に時間を空けないこと。時間を空けてしまうと、相手のなかで別件として処理されちゃうからだ。
ところで、ボクは10年以上、デジタル系専門学校で講師をしていたんだけど、その授業で、生徒たちに課題をやってもらうためにこの「ドア・イン・ザ・フェイス」を使った例を話そう。
学校では毎週1回、ウェブ制作やデザインを教えていて、毎回課題を出すんだけど、ロゴやイラストを作るソフトを教える授業のときに、
「じゃあ、来週までに10個イラストを描いてきてください。」
という課題を出していた。当然のことながら生徒たちからは、
「えぇー!そんなの無理っ!!」
と、声が上がる。でも、反発が起こるのは想定内。なので、すかさず
ボク:「あぁ、確かに最初からそれは厳しいか…じゃあ、5個ならいい?」
生徒:「5個も…厳しいです…」
ボク:「じゃあ…しょうがない、最低2個でいいから描いてきて。」
と譲歩案を出すんだ。
けれども、ボクの本当の狙いは
「イラストを描いて、ソフトの練習をすること。」
つまり、生徒たちが能動的に課題に取り組んで、ソフトを使って操作方法を覚えてくれればいいわけで、実はイラストの数は1つでも2つでもいいんだ。
最初に10個…と言うのは、初心者にとってはかなり厳しい数だ。だから、当然「無理っ!」という反発が起こる。
けれども、そのあと5つ…いや、3つと「譲歩」することで、生徒たちも譲歩せざるをえないという気持ちになるんだ。(返報性の原理)
じゃあ、この「ドア・イン・ザ・フェイス」を恋愛やモテるためにどう使うか…。
たとえば、女の子をデートに誘うとき…
「○○ちゃん、これから湘南にドライブ行こうよ。」
と言ったとき、それでOKが取れればいいけど、彼女が、まだ二人きりで長時間はちょっと…と思っていたら、当然「ドライブはちょっと」と難色を示す。
そこで反発が起こっても、すかさず、
「あ、でもいきなりじゃ都合がつかないから、30分ぐらいお茶しようよ。」
って譲歩案を出すんだ。 「ドライブはまだ早いけど、お茶ぐらいなら…」と思ってくれたらキミの勝ち。
キミの譲歩に対して、女の子も譲歩し返さなきゃ…って思わせることで、お茶デートを勝ちとるんだ。
そして、まずは30分でも1時間でも、二人きりで話す機会が持てたら…そこでまたいろいろ仕掛けて、次の一手を考えるんだ。
気をつけなきゃいけないのは、ドア・イン・ザ・フェイスは、あまり使い過ぎないこと。
女の子は、キミのお願いを断ったり、断らないまでも100%満たせないことに対して、無意識に小さな罪悪感を持つ。
たとえ小さいとはいえ…罪悪感ばかり与えていたら、女の子も心地良くないからね。