前回は、返報性の原理を使った「ドア・イン・ザ・フェイス」というテクニックの話をした。
逆に、最初に小さな依頼から始めて、次に(本命の)大きな依頼を受け入れやすくする「フット・イン・ザ・ドア」というテクニックの話をしよう。 (読んで字のごとく、訪問販売のセールスマンが「話だけでもいいんで…」って言いながらドアに足を突っ込んでいる…あの状態。)
フット・イン・ザ・ドアの効果を示すために、アメリカの心理学者のフリードマンとフレイザーが1966年に行った実験がある。
カルフォルニアの住宅街で、2つのグループに分けて、景観を損なうような「安全運転をしよう」と書かれた大きな看板を設置するよう依頼する…というもので、1つ目のグループは、そのまま看板の依頼をしただけ。この場合は17%しか承諾してもらえなかった。
けれども、2つ目のグループは、なんと76%が承諾したんだ。
彼らがやったのは、看板の依頼をする2週間前に、家か車の窓に「安全運転」のステッカーを貼ってほしいという依頼をしていたんだ。
たったそれだけなのに、結果は4倍以上の差。いったいなぜそんなことが起こるんだろう?
![ドアと足](https://stat.ameba.jp/user_images/20130517/22/lovestrategist/e0/17/j/o0600040112542535078.jpg?caw=800)
photo by Simón Sánchez S.
これもまた、ボクのリアルな体験を話そう。
10年ほど前、ボロボロの車に乗っていたんだけど、エアコンをかけるとカビ臭くて、窓を開けていないと乗っていられないぐらい。
あるとき、買い物で街に出たとき、道路脇にあるディーラーがたまたま目に入った。
以前から興味のあったスポーツタイプの車を扱うディーラーで、冷やかし程度に車のカタログでも貰っていこう…そんな気持ちでふらっと入ると、
「いまちょうど試乗車が帰ってきたんですけど、よかったら乗ってみませんか?」
と、営業さんが声をかけてきた。時間もあったし、乗るだけだったらタダだし、まぁいいか…。
ほんの10分、近所を運転させてもらったんだけど、男っぽいその車の走りに、見事に魅了されてしまった。
そして、試乗から帰ってディーラーに戻ると、温かいコーヒーが出されて、
「ご検討いただく前に、お見積りだけでもどうですか?」
まぁ、買う買わないは別として、見積もりだけだったら…そんな軽い気持ちで、ローンシュミレーションなんかをしてもらっているうちに…ますます「欲しい」って気持ちが湧いてきた。
そしてディーラーに入ってから約1時間…もうお気づきのとおり、なんとその車を購入することになっていたんだ。
もちろん、これは極端な例かもしれないけど、世の中を見渡すと、同じようなテクニックが溢れている。 テレビのCMで有名な化粧品の無料サンプルや、健康食品のお試しがいい例だ。
ボクらは、自分の行動や発言、態度、信念などに対して「矛盾のない一貫したものでありたい」という心理が働く。それを「一貫性の原理」と呼ぶ。
そして、この一貫性の原理によって、一度簡単な依頼を承諾してしまうと、次の依頼を断りにくくなってしまうんだ。
もし、ディーラーで、最初からガツガツ営業をかけられたいたとしたら…ボクは車を買うなんて思いもしないで、ただカタログを貰って帰っていただろう。
けれども、
「試乗」⇒「見積もり」⇒「ローンシュミレーション」
…と、無料でリスクもなく、断る理由もない小さな提案を少しずつ受け入れたことで、けっきょく、そのあとの「購入」っていうところまで、一気に突き進んでしまったんだ。
こんなふうに、フット・イン・ザ・ドアとは、段階的要請法と言われるように、受け入れやすい小さな依頼を積み重ねることによって、段階的に要求を上げていくテクニック。
もし女の子に使うんだったら…
たとえば、同じ会社の女の子であれば、
「昼休みにボールペン買うのちょっと付き合ってくれないかな?」
(そして、OKを取って買い物に出かけたら)
「あ、『ついでに』ランチ一緒にどう?」
OKが取れれば…1時間のランチデートがゲットできる。
たとえば、趣味のサークルや習い事で知り合った女の子であれば、
キミ:「こんどみんなでお茶しようって言ってるんだけど、いつが都合がいい?」
(そして、OKを取ってみんなでお茶をしたあと)
キミ:「こんど美味しい豆腐料理のお店があるんだけど、ランチしようよ」
(そして、ランチデートを勝ち取ったら)
キミ:「○○ちゃん、飲みに行くとき、バーと居酒屋どっちが多い?」
彼女:「友だちと…居酒屋かなぁ…」
キミ:「オレも!中目黒に美味しい焼き鳥のある居酒屋があるんだけど、焼き鳥好き?」
彼女:「うんっ!」
キミ:「じゃあ、今度の木曜日行ってみない?」
そうやって、小さくて簡単な提案をまず最初に彼女にぶつけて、そこでOKを取ったら、徐々に要求を大きくしていくんだ。
もちろん、最初から、彼女がデートする気満々だったら、こんなめんどくさいことはしなくてもいいよ。
でも、まだそこまでお互いを知っていないのなら…お互いをもっと知り合うために、彼女が受け入れやすい、小さな依頼から始めるんだ。