どれくらい突っ伏して泣いていただろう。
多分5分~10分だったと思う。
(あみちゃんに会いに行かなきゃ)
不意にそう思って、体を起こした。
お義母さんに電話を掛けた。
救急車で運ばれて、みんな近くの大学病院にいるとの事だった。
アパートから車で10分くらい。
頭の中は半分パニックになりながら、車を運転して病院に向かった。
(どうして?何で?何で死んじゃったの?
こんなの信じたくない!あみちゃんが死ぬ理由がない!)
頭の中で、ずっとこの考えが頭を駆け巡っていた。
泣きじゃくりながら車を運転した。
今考えたら、あの状態でよく運転できたと思った。
大学病院の駐車場に車を停めて、お義母さんに教えてもらった場所に走った。
足がフワフワして現実味がない。
それでも心のどこかで、あみちゃんが死んだことが信じられずに、まだ蘇生処置をしてくれているんじゃないかと願っていた。
大学病院はとても広い。
教えられた場所までの道のりは、とても長く感じた。
(まだ、きっと処置をしてくれてるに違いない。きっとそうだ。
お義母さんはパニックになってあんな事をいったに違いない。
そうに決まっている!)
病院の長い廊下を走り抜け、ようやく目的の場所に着いた。
受付の人に名前を言うと、すぐとなりの控室を案内された。
控室のドアを思い切って開けた。
部屋の中には、お義母さんとお義父さんが3人掛けの長いソファーに座っている。
机を挟んで向かい側の椅子には警察官が座っていた。
みんな一斉に私の方を見た。
「yoshiちゃん!」
そうお義母さんが言った。
「yoshiちゃん、ここに座って。」
お義父さんが言った。
私はお義父さんとお義母さんの間に、一緒にソファーに掛けた。
「yoshiちゃん、ダメだった。助けてやれんかった。
俺は家にいたのに。俺のせいだ。
気付かなかった。
気付いてやれんかった、、、。」
お義父さんが言った。
私はそれを聞いて、今度こそ確信した。
本当に死んでしまったんだ。
もう泣くことを堪えようがなかった。
私はお義父さんとお義母さんの間で、子供のように泣いた。
「私が、、。私が悪かったの。
今日、パートだったから。
私がパートなんか行かなかったら、、、。家にいたらこんな事にはならなかったのに。」
お義母さんは泣きながら言った。
「yoshiちゃん、ごめんな、、、。本当にごめんな、、、。
yoshiちゃんみたいな良い人とせっかく結婚できたのに、、。
せっかく一緒になれたのに、、、。
yoshiちゃん、本当にごめんな。
許してくれ、、、。」
お義父さんはそう言って、頭を抱えて泣いている私の肩をさすってくれた。
みんなが泣いていた。
しばらくすると正面に座っていた警察官が口を開いた。
「この度は誠にご愁傷さまでした。お悔やみを申し上げます。
お疲れの所、大変申し訳ないですが、これから一緒に現場に行ってもらいます」
病院以外で亡くなった時には、警察が動くことになる。
私は早く妻と対面したかった。
でもすぐに現場検証をしなければならないらしかった。
現場である妻の実家に移動することになった。
お義父さんは案内がてら、警察とパトカーで行った。
私は自分の車で妻の実家へ向かう事になった。
「大変でしょうが、事故に気を付けてゆっくり来て下さい」
車で移動する途中も(どうして?なんで死んじゃったんだ?)という感情がずっと頭を占めていた。
一人になると涙がとめどなく流れる。
実家に向かう時もずっと泣いていた。
妻の実家に着いた。
家の前にパトカーが3台も並んだ。
近所の人は絶対に何かあったと思うだろう。
部屋の明かりや外灯がついていないので、妻の実家の雰囲気もいつもと雰囲気が全く違って見えた。
お義父さんが玄関のドアを開ける。
警官5~6人と一緒に家に入って行った。