警察数人と妻の実家に入った。
「現場はどの部屋ですか?」
警察官が聞いた。
お義父さんが言った。
「2階の、、、、娘の部屋です。」
みんなで階段を上がり、彼女の部屋に向かった。
部屋の前に着いた。
ドアは開いていて、部屋の中が見えた。
(ここがあみちゃんの部屋か、、、。)
私と付き合っている時も「今度遊びに行くから部屋に入れてよ」と言っても、
「物だらけで散らかってるからヤダ!」と言って、一回も入ったことがなかった。
結婚してからもそれは変わらなかった。
初めて部屋の中を見た。
(どこが散らかってるんだよ。綺麗に整頓してあるじゃないか、、。)
この時初めて部屋を見て、そんな事を考えていた。
「どこで実行したんですか?」
警察官が聞いた。
「そこの、、、、。クローゼットの中です、、、。」
お義父さんが、絞り出すように言った。
(こんな、、、こんな場所で死んじゃったのかよ、、、。こんな所で、、、、。)
私はやるせない気持ちで涙が止まらなかった。
「それで、どういう状態でした?」
警察官はどんどん聞いて行く。
「このクローゼットの中の、洋服を掛ける棒にこの紐を掛けて、、、。」
床には紐のようなものが、切り刻んで落ちていた。
洋服の腰紐みたいなものだった。
「それで、どうしたんですか?」
警察は容赦なく聞く。
「慌ててハサミを持ってきて、紐を切りました」
「そうですか。それでハサミというのは、、ああ、これですか。」
警察は床に転がっていたハサミに気が付いた。
「それで、どういう状態で紐を切りましたか?娘さんを持ち上げて切ったんですか?そのままで切ったんですか?」
「そんなの覚えとらんよ!無我夢中で!!」
お義父さんはたまらず答えた。
もう、、、もういいだろ、、、、。もう聞かないでやってくれよ。
もうそっとしておいてやってくれよ。
警察とのやり取りを廊下で聞いていて、そう思っていた。
「それで、身体の向きはどっちを向いてましたか?」
もう聞いてられなかった。
私は廊下を降りて、玄関を出た。
玄関の外の階段に座って、声を押し殺して泣いた。
(あんな場所で、、、、たった一人で、、、何でだよ、、、、何でそんな寂しく一人で逝っちゃったんだよ、、。)
しばらくて気が付いた。
そうだ、俺の両親に連絡しなきゃ、、、。
携帯を取り出して、母に電話をした。
「もしもし、、。俺だけど、、、、。落ち着いて聞いてくれよ。
あみちゃんが、、、首を吊って、、、、、死んじゃった、、。」
「うそーーー!嫌だよ!何でそんな事に??」
母は私から話を聞いた瞬間、驚いてすぐに泣いてしまった。
「あんた、今どこにいるの?」
しばらくして母が言った。
「あみちゃんの家だよ。警察と一緒にいる。まだ時間が掛りそうだから親父と一緒に病院に行っててくれ。
お義母さんがいるから、、、。」
何とか母にそう伝えて電話を切った。
何でこんな電話を掛けなきゃいけないんだ。
この状況は一体何なんだ!
全てを信じたくなかった。
家の中に戻った。
「遺書のようなものがないか探します」
警察がそう言って、家の中を探し回った。
しばらくして「遺書のようなものはありませんでした」と言った。
「それではこれで終わります。次はお二人のアパートを調べますので、ご主人ご案内をお願いします」
今からアパートに行くのか、、、。
早く妻に合わせてくれよ、、、、。
病院から移動して、もう2時間くらいたっていた。