コロンブスの卵「杉真理 LIVE 2021-WINTER SONG SELECTION」 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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杉真理は“新曲は分が悪い”と言う。新曲は“デビュー3年目くらいまでは観客に歓迎されるけど、それ以降は誰もが知っているお馴染みの曲を聞きたがる”そうだ。そんな状況がありながらこの日、杉真理は“新曲”を数多、歌った。勿論、お馴染みの曲も披露するが、際立つのは出来たばかりの文字通り、“新曲達”である。聞けば20曲中、8曲が新曲(未発表曲で、配信では初披露になる)だという。

 

 

12月17日(金)、東京「SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」で開催された「杉真理 LIVE 2021-WINTER SONG SELECTION」。FBの友人のタイムラインを見たら“街に音楽が戻ってきた”とあった。街に出て、音楽を聞くという日常が戻りつつあるのだ。この日のライブも様々な制約や制限はあるが、配信だけでなく、会場での観覧もできる。数年前までは杉真理やBOXなどの東京でのライブは皆勤賞ではないものの、これはというライブには顔を出し、FBやブログなどにその模様をリポートしている。杉真理をライブ会場でリアルに見るのは随分と久しぶりになる。まだ、予断は許さないが、文字通り“日常”が戻りつつあることを感じる。

 

杉真理はライブの開催にあたって、“絶対に観てもらいたい内容です。この日しかやらないあの曲、この曲、新曲。溜まったエネルギーを全放出します! 一緒にポップスの吹雪を楽しみましょう!”というコメントを出している。“WINTER SONG SELECTION”というタイトルからクリスマスソングやスノーソングなど、杉真理流の“WINTER SONG”の蔵出しを予想していた。しかし、その予想はいい意味で裏切られる。勿論、杉真理流のクリスマスソング(「クリスマスのウェディング」、「恋の手ほどき~X'mas In Love」など)やお馴染みのナンバー(「スキニー・ボーイ」、「ミュージシャン行進曲」など)も披露されたが、前述通り、“新曲”のオンパレード。それもニュー・アルバムからの新曲などではなく、ほとんどが未発表や未公開など、未来の新曲という楽曲ばかり。大谷翔平の応援ソング「It’s Show Time」や架空の地への空想旅行を歌った「ヴェナリッツ」、1983年に未来から80年代を懐古した「懐かしき80’S」の現代版とでもいうべき「2021年のラプソディー」など、いま、まさに歌わなければいけない曲達である。いわゆる“トピカルソング”やあからさまな“メッセージソング”を書いたり、歌ったりしない杉真理だが、どの曲もこの2021年が書かせたと言っていいだろう。もし「TOKYO2020」(名称としては“2020”のままだった)が “2021”ではなく、そのまま“2020”だったら違うものになっていたはずだ。不変的な冬の歌集ではなく、2021年の冬の歌集といってもいいだろう。勿論、天賦の才を持つメロディーメイカー、曲そのものは“期間限定”ではない。ある種の普遍性を獲得している。

 

とりわけ、アンコールに披露した今のところ、一番好きですと言う新曲「MUSIC」は心に残る。杉には珍しく朗々と歌いあげる(作った時点ではジュリー・アンドリュースのような女性シンガーが想定していたらしい)。音楽と音楽によって知り合えた皆さんに愛を込めというた、まさに音楽の捧げものである。到達点などというと、伸びしろ充分の彼には失礼かもしれないが、新しい至高の名曲の誕生と言っていいだろう。

 

しかし、配信を含め、新曲ばかりのセットリスト、2021年に生まれるべくして生まれた“新作(ニュー・アルバムからA面、B面の選りすぐりの曲)”をリリース前にライブで披露する。思わず、この手があったか、と独り言ちる。まさに“コロンブスの卵”的な発想の転換だろう。音楽の冒険家である杉真理ならではの挑戦だ。新曲を歌詞も見ず、そのまま歌いきるなど、それだけでも果敢な冒険である。

 

この日、杉真理 (Vo、G)を支えるのは藤田哲也 (B)、橋本哲 (G)、小泉信彦 (Kb)、清水淳 (Dr)、高橋結子(Perc)、宮崎隆睦(Sax)というお馴染みのメンバー。生まれたばかりの新曲達を絶妙の間合いと息の合った演奏で盛り上げる。特に清水と高橋の鼓笛隊的なやり取りはウィングスを思わす楽しさを醸し、元T-SQUAREの宮崎のサックスは都市の陰りと彩りを加える。

 

杉真理の歌と彼らの演奏は、この困難な時期にあっても“大丈夫さ”と言っているように聞こえる。自然と背中を押され、勇気を貰い、多幸感を抱く。このライブの配信は12月24日(金)までアーカイブ視聴が可能だ。未聴の方は自分へのクリスマスプレゼント思って、聞いてもらいたい。

 

 

杉真理 LIVE 2021- WINTER SONG SELECTION

12.17 (金) SHIBUYA PLEASURE PLEASURE セットリスト

 

<一部>

01 DowntownのAngel

02スキニー・ボーイ

03 Simulation Game

 

MC

 

04 This Feeling

 

MC

 

05 クリスマスのウェディング

06 神様のプレゼント

07 恋の手ほどき~X’mas In Love~

 

MC

 

08 It’s Show Time(大谷翔平 応援ソング)(新曲)

 

休憩・換気タイム

 

<二部>

09 Best of my love

10 エスコート・ソング(新曲)

11 ヴェナリッツ(新曲)

 

MC

 

12 歌はどこへ行った(新曲)

 

MC

 

13 2021年のラプソディー(新曲)

 

MC

 

14 Human Distance(新曲)

15 素直になりたい

16 K氏のロックンロール

17 ミュージシャン行進曲

 

MC

 

18 アナログマン(新曲)

 

<アンコール>

EN01 Happy Ending

EN02 MUSIC(新曲)

 

 

なお、2022年1月15日(土)には同じく東京「SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」で「杉真理 LIVE 2022 - BEST SONG SELECTION」を開催する。今回のライブは杉によると「新年初のライブは、ファンの皆さんからのリクエストを集計し、ベスト10を発表します。デビュー45周年に向けての、滅多にやらない大企画!もちろん新曲も披露しますよ!あなたの1票、お待ちしてます!」だそうだ。詳細は以下の杉真理オフィシャルホームページを参照ください。

 

http://www.masamichi-sugi.net/news/live.html