前回、生活革命の中で、コーヒーハウスからロイズ保険組合の原点になったことを話しましたが、今回はロイズ・コーヒーハウスから保険市場の発展について説明したいと思います。
 
 1688年頃、エドワード・ロイドは「ロイズ・コーヒーハウス」を開店しました。


 開店当初は商人や仲買人(broker)が集まって情報交換をしていたにすぎなかったのですが、次第に、ここで活躍する仲買人の手によって、資本が必要な荷主や船主と、資本を投資したい保険引受人が出会うようになりました。
 
 その結果、ロイズ・コーヒーハウスに情報が集まり、海事ニュースとして、ロイズ・ニュースも発行され、やがて船舶保険業務を取り扱うようになり、これが保険会社ロイズ(ロイズ保険組合)の起源とされています。


 保険業の発展はコーヒーハウスのサービスからというのは驚きですね!
 
 ロイドについてもう少し詳しく説明しますと、ロイズに集まった商人や仲買人の中には、賭け事に興じているような人々もおり、それを賭博を嫌った給仕長のトマス・フィールディングが1769年に新ロイズコーヒー店を開きました。
 
 1771年12月に、79人の保険引受人と1人の仲買人が100ポンドを出資して、ロイズ協会が誕生しました。
 
 ちなみに100ポンドという金額は当時の中産階級の年収と同じほどです。
 
 新しい店は繁盛して、店が手狭になったので、1774年にジョン・ジュリアス・アンガースタインが中心になって、ロイズ協会は王立取引所内の部屋を年160ポンドの賃借料で確保することになりました。
 
 その結果、賃借の責任者・契約者がコーヒーハウスではなくなり、ロイズの主体はロイズで保険を扱っているロイズ協会に移りました。これ以降、ロイズは、引受人がコーヒーハウスに集まっていた喫茶店ではなく、保険会社となりました。
 
 このアンガースタインはコーヒーハウスから保険会社にし、黒人奴隷貿易などで富をなし、現在、世界最大級の保険市場となったロイズ保険組合の生みの親になります。
 
 このようにイギリス保険市場は黒人奴隷貿易を中心とした三角貿易や再輸出貿易(外国からの物品を再び、外国に送り出す貿易)で潤い、これらの保険料はJoseph E. Inikoriケンブジッジ大学教授によると、18世紀後期の海上保険引受人が得た総保険料の3分の2以上になっていると推定されています。
 
 ロイズ協会では1689~1807年にロイズの海上保険の対象の多くは奴隷船であり、保険の支払いを受けた奴隷船は1000隻を越えたとのことです。
 
 1779年にロイズの海上保険証券の書式が統一されましたが、ロイズは当時の海上保険で大勢力をもっており、この書式は世界的な海上保険の標準となり、1982年まで使われていました。
 
 イギリスは黒人奴隷貿易を三角貿易に発展させ、大西洋貿易の覇権に握った結果、19世紀初頭のナポレオン戦争時代には海運業の中心はアムステルダムからロンドンに移り、それとともにロイド海上保険も拡大化していきました。
 
 このようにイギリスを中心に保険市場が発展したのは黒人奴隷貿易が大きく関係していることがわかっていただけたと思います。
  
 
【豆知識】
 ロイズ協会の生みの親であるアンガースタインは美術収集家で、多くの名画を所有しており、1824年に遺産相続にからんで、その収集品が売りに出されたとき、その38点を集めて設立されたのが、ロンドンのナショナル・ギャラリーです。
 
 さらに設立当初のナショナル・ギャラリーはアンガースタインが以前所有していたロンドンのペルメル街100番のタウンハウスでした。
 
 ナショナル・ギャラリーは入場料は無料ということで珍しく、現在、ヨーロッパを代表する美術館の設立に王室、貴族コレクションではないことも非常に珍しいことです。
 
 ちなみにヨーロッパを代表する美術館の設立のコレクション所有者は下記の通りです。
 ・ルーブル美術館:フランス王室
 ・プラド美術館:スペイン王室
 ・エルミタージュ美術館:ロシア女帝エカチェリーナ2世
 ・アムステルダム国立美術館:オランダ国王ルイ・ナポレオン
 ・アルテ・ピナコテーク:バイエルン王室
 ・ウィーン美術史美術館:ハプスブルグ家
 ・ウフィツィ美術館:フィレンツェのメディチ家

 ヨーロッパ主要王室のコレクションは国有化して美術館になっているのですが、イギリス・ロイヤルコレクションは私的財産で、金銭的価値は総額3,600億ポンド(約58兆円)といわれています。
 
 とてつもない資産ですし、その美術品で王室はグッズ販売も含めた展示経営しており、その展示品は私物のため、運送費は少なく、レンタル料はなしで展示経営してるのですから、この収入も多く、2009年には40億円以上の収益があったようです(@_@)


 もし、アンガースタインの美術コレクションがなければ、イギリス・ロイヤルコレクションの多くが国有化されていたでしょう(^^)


◎つづきを見られたい方は下記をクリックしてください。

 http://ameblo.jp/la-luna-sarah/entry-11721039664.html


◎奴隷貿易の最初(奴隷貿易その1)から見られたい方は下記をクリックしてください。

 http://ameblo.jp/la-luna-sarah/entry-11613793711.html


◎奴隷貿易が世界に与えた影響の最初(奴隷貿易その4)から見られたい方は下記をクリックしてください。

 http://ameblo.jp/la-luna-sarah/entry-11644847378.html



■本ブログ全体の目次は次から見てください。

 http://ameblo.jp/la-luna-sarah/entry-11076468738.html


ブログ村でランクアップ挑戦中!!

下記クリックで応援して下さい<m(__)m> ブログを書く励みになりますニコニコ
ブログランキング・にほんブログ村へ



最後まで読んでいただきありがとうございました。