精神科の仕事の濃淡について | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科の仕事の濃淡について

先日も触れたが、「九条良源のブログ」を時々見ている。専門的な記事はついていけないものの、自分は理系であることや、彼が極端に難しい記事は避けていることもあり、結構、読んでいる方だと思う。最近の記事で面白いものがあった。

2014年12月06日
人間らしくない生活をしていました
昨日は、本当にひどい一日だった。新しいシステムが初動して3日目の朝、会社に出勤してシステムの稼働状況を確認すると、何とシステムが止まっていた。プロジェクトメンバー全員で何とか原因を特定し、大急ぎで復旧させるという大トラブルに遭遇したのである。


から始まる文章で、簡単言うと、彼の会社のシステムがバグを起こしてしまい、そのバグの修正のために時間に追われながら、大変な目にあった話である。

この話は、システムを作る業務には避けられないものだと思われる。実際、銀行などに納入しているシステムのバクのため、納品した会社のシステムエンジニアの人が不眠不休で修正業務にあたり、過労の結果、自殺者が出たりしている。

僕が思ったのは、精神科医はこのような事態に見舞われるのか?ということ。

ちょっと似ているのは、彼らが作るシステムと同じく、自分の人生と患者さんの人生、それも膨大な数が並行して進んでいることだ。

システムのバグとは異なるが、患者さんはよくわからない理由で急激に悪化することがある。その際に入院させたり、あるいは外来で抗精神病薬を筋注したりと治療内容がタイトになる時期がある。決して終了と言うパターンがないわけではないが、

治療者と患者さんの人生は並行して進んでいる。

ことの方が多いのである。しかし、システムエンジニア?のように「著しく濃い時期」と言うものは滅多になく、少なくとも夕方には家に帰れることが多い。その意味では、濃いと言っても彼らほどではないんだろう。

僕が初めてアメリカ本土に着いた日、ロサンゼルス空港で新しい管制のソフトを使い始めた日と重なったらしく、バグが生じ大変な目にあった。なんとオンタリオ国際空港で、機内で5時間も待たされたのである。

以下、過去ログから

初日からトラブル。なんとロサンゼルス国際空港は、管制のソフトにバグが出たとかで閉鎖されていた。しばらく、30分~40分ぐらい空港上空でグルグル廻っていた。しかし、そんなもんがすぐに直る訳はなくまた燃料も切れてきたらしく、ロス近郊のオンタリオ国際空港で着陸した。

さて、オンタリオ国際空港に着陸したものの、そこで降りられるわけはない。入国審査などあるためどうしてもロサンゼルスに戻らないといけない。給油して空港が再開するまでひたすら待つ。なんせエコノミークラスで座席は狭く、しかもすでに11時間以上飛行機に乗ってきているのでうんざりだ。「こんなもん、今日中になおるものなんだろうか?」とか不安にもなる。

この時は、今まで使っていた管制ソフトを再インストールしなんとか治癒したらしいが、ロセンザルス国際空港は非常に混雑した空港で順番待ちが大変なのである。このトラブルのためにロジャーススタジアム観光がなくなってしまった。

突然、濃くなるパターンとして、輪番がある。精神科輪番は、たまに全然来ないことがあるが、今日は厄日だ!と思うような目にあうことがある。

例えば、夜11時に救急車で1名搬送されてきて、その人を診ているうちに、もう1名問い合わせがあって、更に1名といった感じである。

ある日、深夜2時に1名を診察しているうちに2名ほど来て、深夜の待合室に2名の患者さんとその家族が待っていたことがあった。彼らは自分にとって全て新患なのである。

そして、やっと4時ころ診察を終えて、自室に戻ると、なんと早朝6時ころに救急車がもう1名搬送してきたのであった。

一般に精神科輪番は朝方になると、かなり受診する確率が減る。その理由は、その時間になると、朝一番に精神科にかかろうと思う人が多いからであろう。その意味でも、6時過ぎに更にもう1名というのは厄日である。

輪番の場合、九条良源氏の災難との違いは、それぞれのエピソードが短く、たいてい1つ1つが完了していることだと思われる。輪番患者は、他院の患者さんが一時的に受診するケースが多い。彼は以下のように記載している。

私はその時、自分はなんて人間らしい生活をしていないんだろうということに気付いた。時間のある休日でさえ、私はコンピュータの前に向かってブログ記事を書いたり、プログラムを書いたり、数学の問題を解いたりしている。つまり、私の生活はインターネットと一体化している。朝コンピュータを起動して始まり、夜コンピュータをシャットダウンして終わる生活である。これではうつ病になるのも無理はない。


きっと、人生には広がりというか、厚みのようなものも必要なんだろうと思う。僕のオーベンは、精神科医は何らかの趣味を持っていた方が良いし、酒も飲めないより飲めた方が良いと言う話をしていた。

酒が飲めた方が良い理由だが、酒が飲めないと、他の有害な嗜好品に走るからと言う話だった。有害な嗜好品とは、タバコである。個人的に過度の酒も十分に有害だと思うが、アルコール依存症になる人は最初から決まっているというか、大酒家が全て破綻を起こすわけではない。そういう意味なんだろうと思う。

しかし、タバコを1日80本吸う人は大酒家とは、かなり異なる濃度の有害物質にさらされている。

九条良源氏のあの未来記事(2014年12月06日ってどういうこと?)には、日常診療について、いろいろ考えさせられたので、過去ログを含めアップしている。

思ったのは、やはりその仕事が好きでないとやってられないということ。嫌で嫌でたまらないなら、続かないような気がする。

参考となる過去ログ
2000年のアメリカ旅行
人間らしくない生活をしていました(九条良源のブログ(うつ病システムエンジニア))
考察、「ジェネリックの都市伝説」 の後半
輪番で来院する患者
kyupinのブログのタイトルについてfeat.九条良源のブログ