抗うつ剤と眠気および不眠の副作用 | kyupinの日記 気が向けば更新

抗うつ剤と眠気および不眠の副作用

過去ログで、友人が全ての抗うつ剤を飲んでみたところ、唯一、トフラニールだけ眠くなかったと言う話が出てくる。(かなり前の記事)。

当時は、SSRIが発売されるずっと以前で、旧来の抗うつ剤に関して、眠さの副作用を実地体験したと言える。旧来の主に3環系および4環系抗うつ剤(リタリンを除く)は、眠さはあるが、不眠の副作用は大きな問題になることは少なかった。

当時、テトラミドは統合失調症に対して、病状をさほど悪化させず、不眠の補助薬として推奨されていた。この伝統は今のリフレックスに生きている。

新しいタイプの抗うつ剤は、脳に対し叱咤激励する賦活効果が大きく、不眠の副作用は従来の抗うつ剤に比べ大きいと感じる。それは補助的に使われる非定型抗精神病薬、エビリファイも同様である。

新しい抗うつ剤は、3環系および4環系抗うつ剤に比べ、自律神経系副作用はずっと少なくなっているが、不眠に関してはそうではないのである。

新しいタイプの抗うつ剤の不眠の副作用頻度
レクサプロ  9%以下
デプロメール 10~29%
パキシル   10~29%
ジェイゾロフト10~29%
サインバルタ 10~29%
リフレックス 5%以下


これを見るとわかるが、リフレックスは断然不眠の副作用が少ない。リフレックスは旧来の抗うつ剤の副作用を減じたタイプと言える。上記の表では、レクサプロは比較的不眠の副作用が少なく、不眠に悩んでいるうつの人にSSRIの中では使いやすいことがわかる。

眠さ・鎮静の副作用
レクサプロ  9%以下
デプロメール 30~49%
パキシル   10~29%
ジェイゾロフト10~29%
サインバルタ 9%以下
リフレックス 50%以上


眠さ・鎮静の副作用は、ほぼ不眠の副作用の裏返しである。これらは見方よっては副作用とはみなされないものである(リフレックスの50%以上のように)。

レクサプロとサインバルタは比較的、眠さ・鎮静の副作用が少ないことがわかる。

これらの結果から、脳を賦活しているとは言え、鎮静的に作用する人も少なからずいることがわかる。しかし、より難しいと思うのは、鎮静的なのに不眠もある人たちである。これこそ、セロトニン系抗うつ剤の不思議なバランスの悪さだと思う。(睡眠リズムのへ悪影響)

眠さや鎮静が少ない薬理特性は、仕事をしている人たちには大きい。仕事のパフォーマンスを維持するためには、鎮静が少ないことが望ましいからである。

不眠の副作用が出ている場合、眠剤を増やせば無問題には必ずしもならない。眠剤はタイプにもよるが、仕事をしている人にとってうっかりの失敗を増加させる。

一般に、SSRIは認知の影響が少ないため、車の運転や就業に影響が少ないと言われるが、そのために重い不眠が出ている人では、眠剤を重ねて処方せざるを得ない人もおり、これらが認知に悪影響を及ぼすため、トータルでは実用になりにくいことがある。

結局、抗うつ剤の選択は、効果の面で合う合わないだけでなく、その人の副作用の出方、日中の仕事の内容などもパラメータとして入ってくると言える。単純なものではないのである。

参考
抗うつ剤と頭痛の副作用
抗うつ剤と睡眠