障害年金の8万円で暮らすこと | kyupinの日記 気が向けば更新

障害年金の8万円で暮らすこと

普通、精神疾患で障害年金を受けている場合、単身生活者のケースで生活費が不足すれば、併せて生活保護も受給可能である。足りない部分が補充される。

厚生年金の障害年金(障害厚生年金)の場合、働いた期間の上乗せがあるので、生活保護を受給できる基準を超えることもあり、生活は楽ではないがなんとか生活できる。

統合失調症の場合、最も悪いパターンは、成人後、いかなる保険にも加入していない時期に発病し、初診したケース。このような人は障害年金は一銭も出ない。(特例の期間であれば別)


統合失調症の場合、長期に受給している人はたいてい若くして発病しており、20台前半で発病した場合、障害厚生年金でも上乗せ分はないかわずかである。一方、15年くらい働いて発病した人は額がかなり違う。

今回は、障害基礎年金1級の単身者の受給について。

このような人は大抵、長い入院期間があり、1級の年金額、月当たり概ね8万円を受給している。

1級の受給者の場合、入院患者であれば入院費の減額もあるので、よほどタバコを吸い、無駄遣いしなければ徐々に貯金が貯まっていく。これはお金を遣うという機能を喪失しているのかと思うほどである。(統合失調症の陰性症状)。

このような人の場合、障害年金を家族が流用し、使い込んで入院費やお小遣いが病院に入らないことがある。逆に言えば、きちんと入院費さえ支払ってくれれば、いかなる流用があっても、病院は文句を言える立場にない。

これは、患者本人が心神喪失に近い状態なので、好ましくないことである。

実際に、多くの精神科病院で、これに似た状況が起こっている。

厳密には、成年後見制度を利用し、第3者に管理してもらうのが良いと思うが、その提案も状況的にしにくいものである。(全く病院にお金が入らなければ、このような方法をとる他はないが)

外来患者の場合、また状況が異なる。1級の人は外来で単身生活は無理ではないかと思うかもしれないが、そうでもない。申請時期はよほど病状が悪く、その後、回復してアパートなどで生活できるようになる人もいるからである。少なくとも寛解ではないし、そのようなケースは急に1級から2級に格下げになるものでもない。これは配慮されている面もあると思われる。

しかし、買い物に行くこと、食事を作ること、惣菜を買うことも出来ない人もおり、グループホームで生活するか、あるいはアパートなら、屋内の清掃なども介助者に支援を受けたり、宅配弁当を頼んだりしている。このようなことは精神科病院のPSW(精神保健福祉士)や訪問看護の看護師などがその手続きなどを援助する。これは重要な業務である。

特に食事の宅配事業の発達は、このレベルの人の社会復帰というか、病院からの脱出をかなり可能にしている。これも高齢者社会が進んでいることと関係が深い。

1級の人が8万円程度でアパートで生活する場合、他の資産がないのであれば、生活保護も併せて受けられる状況である。実際に受けている人もいる。

ところが、例えば1級でなく2級であったとしても(6万5000円程度)、生活保護が受けられない人がいる。例えば親からの遺産などで貯金がある人である。

例えば両親が亡くなり、財産分与で2000万貰った人がいるとする。この場合、もちろん、生活保護の対象にならない。

統合失調症の人の凄いのは、このお金に全然手をつけないで生活している人がいることである。だから月に6万5千円その範囲内で生活し、2000万が全く減らない。

僕がこんなことを言うのも少し変だけど、例えば、少しずつ貯金が減って行きゼロになったとしても、統合失調症なので十分に受給資格があり生活保護が受けられるのだから、もう少し余裕のある生活をして貰いたい。

これでは入院しているより、退院している方がよほど悲惨である。

なぜなら、食事の状況もお粗末だし、風呂にもろくに入らず、衣類も悪臭を放っているからである。(よく尿失禁もある状態)

2000万も持っているのに全く生かされておらず、この人にとって意味がないお金である。

つまりだ。
精神病でも統合失調症と言う疾患は荒廃するかそれに近いと、お金なんて関係ない状態に至るのである。

もちろん、統合失調症の人でも無駄に同じものばかり買ってしまう人もおり、このような人はすぐに生活費がなくなる。

統合失調症という精神疾患は、基本的に合理的に生活ができなくなるか、合理的かどうか以前の向こう側に行ってしまう疾患である。

この人の2000万はいったいどうなるかといえば、遺産相続人がいるのであれば、最終的にその人が相続する。

しかし、そういう人に限ってしばしば相続人がいないのである。

このような人の2000万はやがて国庫に入ってしまうのであろう。そうであれば、なおさら遣ってほしいと思う。

僕の患者さんでは、過去に数億円が国庫に入った人もいる(僕は確認していないが、たぶんそうなったはずだ)。

その人は酷い荒廃状態で、自分の名前のサインも出来ず、(自分で考えて)遠い親戚に贈与する能力すらなかった。

参考
人生として成立していないほどの精神状態
生活保護の患者さん
どくとるマンボウ医局記の「便だらけになる女性」
精神疾患と生活保護受給について