精神疾患、生活保護と財産 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神疾患、生活保護と財産

近年は日本の経済状況が悪化していることもあり、生活保護の受給者が急増している。

近年は、精神疾患が原因で生活保護を受給せざるを得ない人たちも多いのではないかと思う。

精神疾患発病直後は障害年金の申請の診断書は出せないため、当初は生活保護で公的補助を受ける流れになる。

この場合、福祉の審査があり、例えば両親と同居で両親に収入がある程度あれば、生活保護を受給することは難しい。

単身者の場合でも、家族の援助可能かどうかは審査される。普通、家族が大金持ちなのに、その子供が精神疾患で働けなくなったと言って、安易に税金から生活保護費を給付することは国民の理解は得られない。

実際、生活保護は受けているが、毎月、両親が1万円ほど援助するパターンも存在する。援助できない部分を福祉が生活保護として支給する形態だが、この部分補助は思っているほど多くはない。このように1万円でも毎月援助している家族はえらいと思う。

稀に両親に資産がかなりあるのに、当事者を援助する気が全くない人たちがいる。また、かつて勘当したとかで「あいつは他人と同じ」と言い張るようなケースである。そのような場合、たぶん福祉のケースワーカーも考えるであろう。(柔軟に対処すると言う意味)

このような家族の問題も含め、福祉のケースワーカーは大変な仕事である。たぶん、こうすべきと言うモデルはあるのであろうが、個々の事例で多様性があり理想通りには行きそうにないからである。

問題は家族に援助する余裕がなく、本人に財産らしきものがある場合。

換金が容易なものは、まずそれを換金しそれを生活費に当て、使い切るのが目前になった時点で給付が始まる。換金が容易なもののうち、代表的なものは定期預金や生命保険であろう。また車などもそれに準じる。不動産の場合、実質的に現金化が困難なこともある。

一般に、エアコン、テレビ、DVDレコーダー、ノートパソコンを売れとまで言われない。例え、ソフマップで買い取ってくれるとしてもだ。

普通、定期預金がけっこうある人は、精神疾患で働けないとはいえ、その時点で生活保護を申請することはない。真に困ってから申請することが多いから。

生命保険は貯蓄に近い金融商品であることがよく理解されていないことがあり、生命保険を解約すれば数百万になるのに生活保護を申請しようとする人がいる。これは福祉のケースワーカーの指導の元、生命保険は現金化される。

ここが難しいところで、普通、精神疾患の場合、いったん生命保険を解約したら最後、再び加入することはほとんんど無理に近い。(過去ログ参照)。やむを得ないとはいえ、相当な覚悟が必要である。ここが普通の内科疾患での申請との相違だと思われる。

この財産の扱いだが、バブル時代は今より生活保護の受給率も低く、福祉の予算も今よりは余裕があったため、かなり柔軟に対応されていたと思う。

例えば、家を売れば5000万にはなるのに生活保護を受けている家庭すらあった。その理由は5000万の価値はあるとしても、買う人が急にはいないことと、当面の生活費に困っていたからである。その家庭は夫婦で精神疾患があったこともあり、福祉の人も対応に困り果ててそうしたものと思う。(生活保護を受ける場合、自宅を売らないといけないわけではない。その証拠に生活保護では固定資産税の軽減・免除の措置がある。ここでは豪邸?に住んでいるのに生活保護を受けるという苦情が出そうな状況を言っている。)

これは今でも同様に対処されると思うが、農家の場合、かなりの広さの田畑があるケースでは、資産だからと言って、それを売れとまでは言われない。その理由だが、その人はその田畑を使って仕事をしているわけで、もし売ってしまったなら、寛解ないし完治したとき仕事に復帰できない。財産であっても仕事と関係が深い場合は考慮されるのである。(普通、田畑や山林は資産価値があったとしても換金性が乏しいこともある)

だから今でさえ結構な財産がある人でも、条件次第で生活保護が受給できないわけではない。

しかし、統合失調症の人で次第に荒廃が進み仕事に戻れる可能性がなくなった場合、田畑は売るように福祉から指導される。この対処は当然と思われる。その時点では、普通は障害年金は受給可能と思われるが、国民年金なので1級だとしてもたいした額ではない。(厚生年金との相違)

全く悲惨な経過であることは間違いない。精神疾患は重くなると次第に貧乏になっていく疾病だと思う。

長期にわたり精神病院に入院している統合失調症の患者さんで、障害年金を受給できない人はたいてい生活保護を受けている。過去ログでは、全くお小遣いを使わないため次第に貯金が100万を超える人もいることを記載しているが、これこそ疾患性でもある。(近年はそうなる前に生活保護が止まる。そして国民保険になる。ただしある程度の貯蓄は許されている。)

しかしもう少し軽い人では寛解し、実質的に生活保護から脱却する統合失調症の人もいることはいる。

ある患者さんはざっと10年以上入院していたが、今は退院して単身でアパートに住んでいる。当初はデイケアなどに参加していたが、次第に働く意欲が出てきた。彼の薬はジプレキサ5mgだけである。彼のハイレベルの寛解は、ジプレキサの薬効なしではありえなかった。

今は、毎日非常に寒い環境で月に20日くらい仕事をしている。実質的に生活保護の援助が必要ないほどの収入があるものの、彼にとって働いたから収入が増えている部分はほとんどない。なぜなら、収入分に見合う部分は減額されるからである。(通勤などの必要経費が考慮されるので、福祉に全て没収されるわけではない)。

最近、朝、起きたら零下4℃だったらしい。その中で仕事をしているのである。彼の凄いところは、かつて発病前は社会的な地位もわりあい高かったことである。それなのに非常に厳しい労働環境で時給の安い仕事をもう数年続けている。

彼に聞いてみた。たいした実入りがない辛い仕事をなぜここまで続けられるのかと。

僕は、10年以上生活保護で入院していたので国に随分迷惑をかけてきた。だから、働くことでお返しできればそれで良いんですよ。

これが、統合失調症の人なのである。これも疾患性を反映していると思う。

参考
生活保護の患者さん
自分が自分を殺したら・・
ジプレキサのテーマ
生命保険のテーマ
統合失調症の寛解、就労、予後の謎
薬物治療と寛解のレベルについて