リフレックスは抗うつ剤治療のチャート? | kyupinの日記 気が向けば更新

リフレックスは抗うつ剤治療のチャート?

初診の患者さんにリフレックス(レメロン)からスタートした場合、うまくいけばそのままで良いが、不調な時は他の薬に変更しなくてはならない。

「眠くてたまらない」という人には、眠くなさそうな薬を使いたいが、元々希死念慮があるような人にはSSRIは使う気が起こらない。(SSRIはパキシル、ジェイゾロフト、デプロメールの3剤)。(参考

そのような人には、状況にもよるが、とりあえずルジオミールより眠さが少ない抗うつ剤を選びたいので、トフラニール、アナフラニール、アモキサン、アンプリットくらいになる。

アンプリットは柔らかく服用しやすい薬ではあるが、いまいち馬力が出ないところがあるので、積極的に賦活したい時は、アモキサンが良い。ノリトレンはトリプタノールの親戚なので眠いと言う人は次善の候補になる。(実はノリトレンはそこまで眠い薬ではない)

だいたい、余裕で社会復帰まで至ることができる抗うつ剤として、アモキサン、ノリトレンは非常に有用である。なぜなら、賦活系抗うつ剤で馬力が出るからである。

リフレックスで眠さはさほどないが、いかにもセロトニンが悪さをしているようなケースでは、いろいろな選択肢がある。平凡にはルジオミールが良さそうであるが、これも人による(ルジオミールはセロトニンを増やす作用がない)。

ルジオミールでこれは何なんだ!という感じで改善する人は、それで十分である(当たり前)。このような人はリフレックスから始めないと、簡単にルジオミールに行き着けない。

その意味では、リフレックスはセロトニンの可否の試金石のように見える。


リフレックスを45㎎まで使って、なお不調な人がいた。その患者さんは、これでも抗うつ剤が足りない感じなのである。副作用としては眠さもなく、またセロトニンの悪影響もなく、希死念慮もなかったので、思い切ってジェイゾロフトを使ってみた。

結果;失敗

その患者さんは、ジェイゾロフトを使っていると、焦燥感が出現した上に時にパニック模様になり、全く食事が摂れない感じになった。(最高75㎎まで処方している)もちろん、実感はリフレックスより悪化している。この人はアンプリット、ルジオミールも一時使っていたが、芳しくなかった。

結局、今はアモキサン125㎎でかなり好調である。この患者さんは、うつ状態の回復とともに血圧が下がり降圧剤が減量できた。

リフレックスは完璧な薬ではないが、抗うつ剤選択のチャート的側面を持っている。

上の患者さんの場合、リフレックスを服用しなかったなら、ジェイゾロフトをそれも75㎎まで使いはしなかったであろうから。

最初から、希死念慮がガンガンに出ている人は、たぶんリフレックスは不適切である。入院中なら、良く注意しておけば使えないことはないが、長期的にはリスキーと思われる。

希死念慮でもいろいろあり、双極2型のうつ局面の希死念慮は、気分安定化薬と中心に考えた方が良いが、シンプルにブプロピオンで十分な人もいる。なんだかんだいって、気分安定化薬だけで重いうつ状態を回復させるのは容易ではない。注意点は、明瞭に双極性障害とわかるような人にはアモキサンは不適切なこと。躁転の確率が高いからである。

ブプロピオンは双極性障害のうつ状態の治療の際に、ラピッドサイクラー化を比較的避けることができるのは重要である。

広汎性発達障害やその範囲に至らない人たちの希死念慮を伴ううつ状態も、気分安定化薬を中心に考えた方が良い(特にデパケンRとラミクタール)。抗うつ剤はいろいろだが、僕は特別な人を除き、SSRIは使わないようにしている。SSRIは希死念慮、衝動、暴力などに治療的ではないから。

広汎性発達障害および軽微な器質性の人たちの場合、うつ状態にトフラニールは悪くない。また、アモキサンまたはノリトレンが良い人がいる。(あくまで確率的なものであるが)

トフラニールが悪くない理由だが、いくつかのことが挙げられる。広汎性発達障害の人たちは昼夜逆転が起こり生活が成り立たず、朝、学校や仕事に行くことができない人たちがいる。そういう主訴で来院されることがある。過去ログで、睡眠相後退症候群と安易に診断するのはスジが悪いといった内容のエントリをアップしているが、つまり状態像しか捉えていないからである。(参考

このような人には、トフラニールは睡眠を改善するので悪くない。アナフラニールも有効である。ナルコレプシーや夜尿にも効果がある薬は可能性を秘めている(別に夜尿はないのだが・・)。また、トフラニールは3環系でも構造式的にテグレトールに似ていることもあるのかもしれない。