セロクエル200㎎錠発売 | kyupinの日記 気が向けば更新

セロクエル200㎎錠発売

kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)

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来月中旬(2009年11月中旬)にセロクエルの200㎎錠がアステラスから発売される。セロクエルは臨床の処方状況を考えるに、剤型の選択を間違っているといった話を過去ログに書いている。

セロクエルは、剤型は25mgと100mgがあるが、たぶん失敗していると思う。セロクエルは剤型は50mgと200mgが良かった。錠剤に割線が入れられておればなお良し。なぜかというと、セロクエルは600mgまで処方する人があんがい多いからだ。今時、単剤なのに1日6錠服用しないといけないのはお粗末過ぎる。向精神薬の1日の服薬回数から

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大きさがわかるようにキティちゃんのボールペンを並べてみた。このように200㎎錠はやや大きい。これで、セロクエルは、

25㎎錠   赤(臙脂に近い)
100㎎錠  黄(薄い黄色)
200㎎錠  白


の3色に色分けされるようになっている。エビリファイは最初は色分けしていなかったが、後に色分けするようになったことを過去ログで触れているが、このように利便性を図ることは昔よりずっと行なわれるようになっている。

これは製薬会社のサービスが良くなったことを示している。錠剤の色を変えるだけでも大変な費用がかかるからである。他にジェイゾロフト(特に細長い25㎎錠)は自動分包機に入れると粉砕されてしまうことが多いため、次第に硬い剤型に改良されたというのもある。

また、そもそも、エビリファイとかジェイゾロフトのネーミングにしてもそうだ。元々、海外ではアビリファイ、ゾロフトが一般的な商品名なのである。これは人為的なミスを起こさなくするためにそうしている。

かつて、セロクエルの剤型について種々の問題があると書いている。

セロクエルは200mg錠がないことに加え、剤型上、いくつかの点で問題をかかえている。例えば、セロクエル細粒は50%散であることもそうだ。例えば、同じ非定型薬物のリスパダールやジプレキサの場合、散剤は1%散となっている。(定型薬のセレネース、トロペロン、インプロメンなども1%である)

例えば、リスパダールを1mgを細粒で処方しようとするなら、細粒では0.1g(100mg)分である。ところが、セロクエルを老人に10mg処方しようとすると、0.02g(20mg)のという僅かな細粒を処方しなくてはならない。薬剤師さんにとっては耳かきレベルなのである(実際見たことないけど)。 セロクエル口腔内崩壊錠から)

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僕は200㎎錠も良いが、ぜひ12.5㎎錠も発売してほしいとアステラスのMRさんに頼んだところ、実際、医師からそのような要望がたくさん出ているらしい。25㎎錠は赤い錠剤なので、割ると少しだけ見苦しいというのがある。

また、せん妄の老人や薬に弱い神経症、広汎性発達障害、うつ状態の人たちに、12.5㎎錠は非常に有用である。

また、細粒についてもやはり50%散では不便だと要望も出ていると聞いた。12.5㎎錠は将来、発売されるかもしれない。

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ところがである。
現在、僕の患者さんではセロクエル600㎎という処方がほとんどない。セロクエルは病状が落ち着いてくるとけっこう減量できるのである。もともと離脱が出やすい薬でもなく、効いているのか効いていないのかよくわからないような薬というのもある。(セロクエルの処方件数自体は非常に多い。だから12.5㎎の方を先に発売してほしかった)

ある時期から患者さんのセロクエルを減量するように努力した。セロクエルで最も腹が立つのは、600~700㎎処方していても季節性などの増悪が避けられない人がいること。こういう人はむしろセロクエルをメインにせず補助的に使った方が合理的だしセロクエルの不安定性の欠点を補える。だから、例えばデパケンRやルーランを併用し、少し多剤にしてセロクエルを大幅に減らす。これはけっこううまくいくのである。

また、こういう操作をしているうちに、その患者さんは既にかなり寛解しており、少ないセロクエルで十分に安定していることに気付くこともある。だから、10年1日のように処方を変えない薬物治療はやはり無能であろう。

これは現在のある年配の女性患者さんの処方である(入院患者)。
セロクエル   200㎎ 
ルーラン     8㎎
他、眠剤と下剤


ところが4年前の処方は、
セロクエル   600㎎ 
ルーラン    24㎎
他、眠剤と下剤


であった。当時、何度かセロクエルの減量を試みたが、なんとなく悪化したためまた元に戻したことが数回ある。上の処方は当初ルーランの減量が容易であり、セロクエルの減量の方がやや時間を要した。そういう経緯もあり、当時、病棟婦長からもうこの人は退院しないのだから、減量は控えてほしいといわれていた(参考)。なぜなら、セロクエル600㎎でも本人が実感できる副作用が出ているわけでもなく、病状は十分安定していたからである。

この人は悪化しても対応しやすい人なので減量のトライはしやすいこともあった。またルーランとセロクエルのコンビネーションである。たぶんルーランをゼロにしまうと、セロクエルを200㎎まで減量することは難しい。この割合ならベストなのである。 

結局、このように減量を試みることは、確かに患者さんのこともあるが、病態の変化と薬物の必要量の時間的推移を確認することにおいても非常に参考になる。もともと単剤推奨ばかりされているので、ルーランとセロクエル併用の治療戦略など、どのような書物を読んでも書かれてはいない。この処方の良いところはセロクエルによる肥満を緩和し、メタボリック・シンドロームになりにくいことがある。

その人だけではなく、他の患者さんにとっても有用な臨床経験だからである。