小太りの妖精 | kyupinの日記 気が向けば更新

小太りの妖精

ある時、新患の患者さんで、「小太りの妖精が見える」と言う奇妙な訴えがあった。視覚的幻覚なので、これだけでも統合失調症的ではない。

やはり年齢が重要だと思う。年配の人なら、レビー小体病などの疾患も考慮しないといけない。極めて幼い子なら、そのような視覚的幻覚が何らかの原因で出現しておかしくない。いわゆる子供のファンタスティックな幻覚である。

それ以外の年齢ならば、やはり器質性疾患を疑うのが普通だ。その人は幻視の他、「いくら食べても満腹感がない」などの食障害や不眠、イライラ感、暴言(脅迫にも近い)などが出現していた。

対人接触性から、統合失調症ではないことは間違いなかった。ところが、その人は他の心療内科クリニックで統合失調症と言われたこともあったらしい。

本人に身体をいろいろ調べた方が良いと伝えたが、本人は全く検査をする気がなく放置した状態であった。こういうのは精神科医としては非常に困る。内科医に紹介し何か調べてほしいと言ってもあまりにも漠然としているから。(何も内科的異常がないのにどう紹介しろというんだ、といった感じ。過去ログに似たような話がある)

そのうち、偶然、正体が明らかになった。その人は別の疾患で病院にかかった時、エコーかCTで非常に小さな副腎腫瘍が発見されたのである。ステロイドホルモン値もたいした高値でもなかった。いつかの話に少しだけ似ているが、この人は手術が必要だった。腫瘍自体は良性腫瘍である。

こういうのって不思議なんだけど、必ずしも手術の後に精神症状がすっきり良くなるわけではないのよね。本来の症状精神病はそういう定義なんだけど(つまり身体疾患が治れば精神症状も良くなるという意味。こういうのが国家試験に出たら怒るよ)。

疾患にもよるのだろうけど、脳に明らかな変調を残しているとしか言いようがない人たちがいる。それは服薬していれば少しは良いんだけど。

バセドー病でも、治療後甲状腺ホルモンが正常化してもなんらかの精神症状が続いている人を診る。あれって、ある期間、「継続して体内のホルモンが異常を来たしていたこと」に意味があるのではないのかしらん。いろいろな面で。

症状性は器質性に含められるが、こういう疾患を診ると確かにその通りと思う。

参考
J.F.ケネディ
症状精神病
育児ストレスによる精神病状態
アトピーによる精神病状態
甲状腺と霊感