携帯料金と双極性障害 | kyupinの日記 気が向けば更新

携帯料金と双極性障害

かつては携帯電話の料金の多寡は、その患者さんの病状をよく反映していた。今もきっとそういう面はあると思う。

近年は通信費は安価になり、一定の料金を支払って使い放題状態になっている人もいるし、携帯のメールも普及していることから、今は精神症状と通信費の関係は低くなっているかもしれない。過去ログでいろいろなコンテンツをダウンロードし過ぎて浪費してしまった女性患者について触れている。

一般に病状が悪くなると携帯料金が跳ね上がる。(特に双極性障害、単極性うつ状態)

僕は、携帯電話で徹夜できる人がいることを知り、ちょっとびっくりした。携帯コンテンツは以前より多岐にわたっていて面白いサイトが増えているんだと思う。携帯電話で徹夜する人は、ずっと充電しながら携帯を使っているのかも?と思った。

あのような狭い画面を一晩中、目を凝らして見ていると肩こりが酷くならないか?ノートの10.4インチでも肩が凝るのに。

過去ログで躁状態になると万歩計の歩数が跳ね上がるおじさんの話をアップしている。しかし携帯電話の通話やメールの場合、むしろうつ状態の時の方が長時間携帯を使う傾向がある。過去ログの人の場合、躁状態の際に課金されるコンテンツをダウンロードしまくったために大変な額になった。

また、インチキまがいのメールサイト(出会い系サイトのような感じ?)でかなりの額を請求される人もいる。あのようなサイトはサクラがいると思うので、いかにも怪しげだが、嵌ってしまうような要素があるのだろう。2chの掲示板やネットゲームのように。

この人は躁状態ではなく、うつ状態でもなく、かといって典型的な躁うつ混合状態でもなく、単にうつ状態の回復過程のアンヘドニアが少し残っているくらいだった。これはうつ状態ではないか?と思うかもしれない。確かにそうなのだが、僕はちょっと違うことを考えていたのである。

1つは「依存する」こと。これはアルコール、ギャンブル、買い物依存の世界。躁うつ病やうつ病の人は時間が経つと何らかの依存症になっていることがある。アルコールとギャンブルの決定的な違いは、アルコールは身体(特に脳と肝臓)を壊すが、ギャンブルはそれがない点だと思う。アルコールでコルサコフになってしまうとか、あるいは糖尿病を併発して慢性動脈硬化症になってしまう人を時々診るが、そこまでいくと、身体面のダメージは取り返しがつかない。

あと、日本の男性は壮年期の自殺が多いが、うつ病ないし躁うつ病によるアルコールやギャンブルなどの依存によるものも関係ありそうだ。アルコールの場合、謎の事故死も時々みられる(交通事故や川に落ちてしまうなど)。

またもう少し違った考え方もできる。仔細に見ると、双極性障害(単極性うつでも)の人々は、うつ状態の局面でも思考パターンに躁的要素を発見する。例えば重いうつ状態で、これは絶対に入院をさせなければ自殺もありうる、と思えるほどの病状の際の言動。その人はうつ状態でろくに動けないのに、

今、会社を離れると、同僚に大変な迷惑がかかる、今は会社は休めないんです!

などと言っているのである。これはいかにも病識がなく自責的で本当に重いうつ状態に見える。普通、この病状だと躁病的要素がないので精神科医でも躁うつ混合状態とは言わない。

しかし焦燥感が強いタイプとは言える。焦燥感はうつ状態の重い局面に出るので、すぐに治療すべき重いうつ状態と考えるのが普通だ。けっこう動きがあるタイプだけど。(制止が少ないという意味)

しかし、「今は会社を離れられない。同僚に大変な迷惑がかかる」という言動は自分の能力を誇大視しているニュアンスは確かにある。彼の脳内では、自分は会社にとって重要でかけがえのない人であり、だからこそ離れられないという口調にもとれるのである。少なくともこの局面では「微小念慮」はさほど認められないと言える。

実際はその人はそこまで頑張って会社に出勤しなくても会社は十分回っていくはずであった。

そういう風に考えると、一見、うつ状態でも躁状態でもない局面でも躁病的浪費が出現してもおかしくないといった考え方もできる。(双極性障害的な認知の歪みが関係している)

僕はかつて携帯での浪費は、躁うつ双方の病態で増えるが、躁状態の場合は何処かしこ、全く脈絡のないところに頻繁にかけまくるのに比べ、うつ状態の人はもう少し相手先にまとまりがあり、特定の人に長くかける感じだと思っていた。うつ状態の人の長電話は、つまり淋しいからである。質的な相違を重視していたのである。その程度の理解であった。

ただし、うつでも極端にアパシーだとか亜昏迷模様になるタイプの人は、携帯の使用はぐっと減る。だから、患者さんの携帯料金を教えてもらうのは、少しだけだが、病状の経過と質の参考になっていた。

僕は思うのだが、このkyupinのブログもそういう面があるんじゃないかと。

読者の病状が良くなると、次第に僕のブログを訪れる頻度も減少していくような気がする(極端に悪くなって動けないとか、入院している場合は話は別)

社会生活をある程度営める人は、このブログをあまり見なくなったら、きっと良くなっているんだと思う。

参考
躁状態と携帯電話代(←過去に似た内容を書いているのを発見。ちょっとショック)
携帯電話
妄想と携帯履歴
万歩計を付けているじいちゃん
NTT株を100株以上買って放火