精神科治療における体重への配慮について | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科治療における体重への配慮について

最近の精神科のエントリは体重推移の内容が多くなっている。このブログの読者さんは自分の体重が増えて困惑している人も多いと思われるので、そのニーズに沿っているのである。

これは過去ログを読んでいると、体重に関しての僕の考え方が時々出て来るのでそれも参照してほしい。例えば、

育児ストレスによる精神病状態」から
入院1ヶ月半頃。
だいぶんゆっくりできるようになりました。体のきつさはないですけど、体がパンパンに張る。手につかない感じはだいぶん減りました。4kgくらい太ってしまった。この当時から単独で外出を許可。体重は増えるのはまずいが、良くならないまま時間がかかってしまうのはもっとまずい。この状況ではまず精神症状を改善することを優先。


やはり、「体重よりは良くなることが重要」なのである。ある程度、体重に配慮して治療を進めることができるケースではもちろんそうする。あまりにも体重が増えてしまうと、服やパンツなどが全然入らなくなり、新しい衣服を購入しなくてはならず金銭的な負担も大きい。

僕は精神科治療がうまく進むと、最終的には標準体重に近づくことが多いように思う。まだ紹介していないが、ある女性患者さんは著しい拒食で入院したが(35kg)、退院時にはかなり体重が増えて標準体重に近づいていた。結局、精神を改善するということはそういうことなんだと思う。(今後エントリとしてアップする予定)

トピック的に取り上げると、

慢性倦怠のおばあちゃん(前半および後半
この患者さんのエントリでは特に体重推移について触れていない。この患者さんは、ドグマチールなどが投与されていたこともあり入院時は60kgくらいあった。現在は44kgである。約16kg減量している。

2人目の女性患者(久しぶり。参考1参考2
この患者さんは紆余曲折あり、現在の処方はルーラン4㎎だけである。それまで微量のリスパダールを服用していたため体重が減らなかったが、ルーランに切り替えたことと、昼間にアルバイト、夜は専門学校に行っているので、やがて減るように思っていた。当初、アルバイトをしていない時期はあまり減らなかった。

最近、彼女を診察した時、顔を見ると少し体重が減っているように思ったので体重を聞いてみたら教えてくれなかった。でもルーランを使い始めて7kg減っていると言う。彼女の場合、アルバイトに行っているのが大きいと思う。

アルプスの少女ハイジの人(参考1参考2
この人は処方変更はずっと続いていたが、最近は下の処方であまり変えていない。精神症状も概ね安定している。

プロピタン     50㎎
クロフェクトン   25㎎
デパケンR    400㎎
リボトリール    1㎎
デパス       2㎎
ハルシオン    0.25㎎
補中益気湯     7.5g


今の体重はなんと56kg。入院時には82kgだったので大変な減量である。(-26kg)

ダイエットの達人」の人
この患者さんはその後処方変更し、デパケンRを中止してリーマス主体にしている。量は600㎎だったり800㎎だったり変動しているが、今は800㎎である。

現在の処方
リーマス  800㎎
セロクエル 150mg
サフラン    0.3g
他は降圧剤、睡眠薬、便秘薬


現在の体重は46kgである。遂に達人は50kgを突破し、病前の体重以下に減量している。これはリーマスへの変更も大きいと思われる。彼女にとって、セロクエルはほとんど問題にならない。

今後、もう少し詳細なエントリとして、今回紹介しなかった人たちをアップしたい。処方変更により、減量できる人はその「減量の大きさ」が本当にすごいのである。

知っておいてほしいのは、精神が安定しないことには減量など無理であること。

情緒不安定だと、減量計画を立てたり、減量できるサプリメント、グッズなど購入しても、反動が出て元に戻ったり、徒労に終わるケースも多い。だからこそ、精神症状の改善が体重より優先されるのである。

最近の参考エントリ
ルーランは不安定なのか?
「不思議な非定型病像」その後
ジプレキサと体重減少
統合失調症とバッチフラワーレメディ