精神鑑定での治療反応性 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神鑑定での治療反応性

昨年、医療観察法の精神鑑定を3例ほどした。このブログでも、受けざるを得ないので受けたという内容が過去ログにある。それ以外の鑑定もあるが(例えば簡易鑑定や成年後見制度の鑑定)、医療観察法の鑑定をしている時期は避けてもらっている。

医療観察法の鑑定は、たった1ヶ月で診察(鑑定)し精神鑑定書を書き上げねばならない上、平行して日々の診療も続けているので、身体的にも精神的にもきつい。このブログも、去年の7月、ちょうどこの鑑定が終わりほっとした時期に始まっている。下は昨年のある鑑定書の目次である。

目次
1、緒言――――――――――――――2ページ
2、鑑定主文――――――――――――2ページ
3、鑑定経過――――――――――――3ページ
1) 対象行為――――――――――3ページ
2) 家族歴―――――――――――3ページ
3) 生育歴・生活歴―――――――5ページ
4) 既往歴―――――――――――8ページ
5) 薬物歴―――――――――――8ページ
6) 現病歴―――――――――――8ページ
7) 犯罪歴―――――――――――11ページ
8) 対象行為前後の精神状態―――11ページ
9) 現在症―――――――――――13ページ
(1) 身体所見――――――――――13ページ
(2) 精神現症――――――――――13ページ
(3) 鑑定中の治療――――――――15ページ
(4) 臨床検査――――――――――15ページ
(5) 心理テスト―――――――――15ページ
4、共通項目による評価―――――――16ページ
5、精神状態と考察―――――――――18ページ
 1)医療観察法による治療の
  必要性の有無と治療処遇―――――18ページ
(1)疾病性 診断―――――――――18ページ
(2)疾病性 他害行為との関係―――19ページ
(3)治療反応性――――――――――20ページ
(4)社会復帰要因―――――――――21ページ
2)現在の精神状態について―――――21ページ
3)その他―――――――――――――21ページ
6、おわりに――――――――――――22ページ

A4の用紙に22ページになっているが、これは長いのか短いのか、他の人の鑑定書をあまり見たことがないのでわからない。医療観察法ならではのものは、5の項目の「医療観察法による治療の必要性の有無と治療処遇」、「治療反応性」、「社会復帰要因」などであろう。医療観察法の下で入院治療をする以上、治療可能性がないといけないのである。だから、精神病質系(いわゆるプシコパートの人々)はそういう施設には送らないでほしいという要望が出ている。(これにはワラタ)

僕は他の病院に出向いて鑑定するため、その病院で治療を指示?するのであるが、最初に行った時には、もう治療が始まっていることが多い。ちょっと驚いたのが、ある患者さんはセレネース30mgで治療を開始されていたのに、アキネトンもヒベルナも併用されていなかったこと。さすがにこれは副作用が出るって。しかも薬もあまり効いていなかった。

僕はセレネースを10mgくらいに落として、ジプレキサを30mg使うように言った。このクラスのヘビーな患者さん(犯罪内容のこと)をジプレキサで治療するなら、最初から30から40mg使いたいと思っていたことが1つ。あと、セレネースを30mg使っても全然効果がないように見える患者に、少量から順番に薬物を検証していっても、時間がかかりすぎることがある。そんな悠長なことをしていたのでは、1ヶ月で終わらない。

医療観察法の入院治療は、任意入院でも医療保護入院でも措置入院でもなく、いわば治外法権の入院なのである。医療費や検査の費用は国が支払う。そういうこともあり、国保や健保を気にせず自分の思うように治療が出来る面はある。もし珍しい検査をするならお伺いを立てないといけないのであるが、おそらく許可されると思うけど、検査の結果に時間がかかる場合、1ヶ月の鑑定期間に間に合わないため出来ない。

この患者さんはジプレキサは有効だったが、多く使ってもすべてが解決しないため、20mgまで減らしてセレネース20mgに増量し治療した。薬剤が効きそうだというのは大きな鑑定要因なのである。

鑑定上の珍しい検査では、ずっと以前(もちろん15年以上前)ある女性患者の染色体を調べたところ、なんとX染色体が3つあった。こういうのを超女性とかXXX症候群という。XXX症候群の人は表現型?は女性で、妊娠、出産もできる。

このような人たちは、少しばかり知的障害があるだけで、とりわけ外からは異常が見えない。また鑑定結果にもなんら影響しない。このような染色体検査はやや時間がかかるため、医療観察法の鑑定には向かないし、論点が従来のような本鑑定と異なるので重要性が低いのである。

参考
医療観察法の鑑定
医療観察法の精神鑑定
遂に鑑定書終わる。
臨床心理士(その2)