「自由論」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

自由論 (光文社古典新訳文庫)/光文社

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★★★★☆



「自由」、「個性」、「変人」、が人間社会の発展にいかに重要かが主張されているミルの名著。

ジョブズも、ザッカーバーグも、孫さんも、イノベーションを起こした人はみんな変人です。



以下、備忘(抜粋)


その意見が正しい場合、ひとびとは間違いを改めるチャンスを奪われたことになる。その意見が間違っている場合にも、ひとびとは前の場合と同じくらい大きな利益を失う。なぜなら、間違いとぶつかりあうことによって、真理はますますクリアに認識され、ますます生き生きと心に刻まれるはずだからである。


自分の頭で考えず、世間にあわせているだけの人の正しい意見よりも、ちゃんと研究し準備して、自分の頭で考え抜いた人の間違った意見のほうが、真理への貢献度は大きい。


われわれが論争するとき犯すかもしれない罪のうちで、最悪のものは、反対意見のひとびとを不道徳な悪者と決めつけることである。世の中で不人気な意見を持つと、とくにこうした中傷にさらされやすい。彼らは概して、人数も少なく、影響力にも乏しく・・・


世論の専制は、変わった人を非難するものだ。だから、まさしく、この専制を打ち破るために、われわれはなるべく変わった人になるのが望ましい。(中略)一般的に、社会に変わった人がどれほどいるかは、その社会で、ずば抜けた才能、優れた頭脳、立派な勇気がどれほど見出されるかにも比例してきた。


(中国には)最良の知恵を国民全員の心に、できるだけ深く刻み込むための仕組みがあった。(中略)すなわち、国民全員を画一化すること、国民全員の思考や行動を同一の原理とルールで統制すること、これに成功した。その結果が、いま述べたような中国の現状(停滞)なのである。






解説に書いてありますが・・・

インターネットの普及、ソーシャルメディアの普及により、多くの個人の思想や意見が発信されるようになり、民主主義にとって望ましい状況になりました。一方、副作用として「ネット上であっという間に形成される"多数派"が"自分たち"の意見を無条件に真理と見なし、"自分たち"に逆らう者に対して不寛容に振る舞う、「世論の専制」の危険性」も高まっています。

フィルターバブルにより、ネット上では自分の考えに近い情報や意見が集まりやすくなっていて、同じ意見の人と交流する傾向も強まっています。結果、特定の考えに確信を深め、他人の意見に耳を貸さない状況にすらなっています。本来、少数意見が発信され、新しい情報に偶然出会えることがネットのいいところなのですが。

人々の思考の硬直性・一面性が増幅される「サイバー・カスケード」。この問題を見直すためにも、ミルの自由論を再評価すべきです。




下記のブログエントリーも思想や表現の自由について考えさせられます。

◇参照:「mixiは死ぬ」で謝罪しているとブログは死ぬ
◇参照:電力会社の社員に表現の自由はないのか




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