年間7千人以上が自ら命絶とうとする東京-命守る都知事は猪瀬直樹さんか宇都宮けんじさんか | すくらむ

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 上のグラフは、武蔵野大学・杏林大学兼任講師の舞田敏彦さんが作成した東京都における自損行為搬送人員の推移です。このグラフについて、舞田敏彦さんはブログ で次のように指摘しています。


 自損行為者の数は、1990年代の半ば以降、ぐんと増えています。97年から98年にかけて大きく伸びていること(3,186人→3,719人)は、自殺者の傾向とそっくりです。自殺未遂者数の指標として読んでもいいかもしれません。


 2005年の4,933人をピークにやや減少し、近年は横ばいです。最新の2011年の年間搬送人員数は4,775人となっています。この年の東京の人口は1,319万人ほどですから、10万人あたりの出現率にすると、36.2人となります。


 この値を日本の総人口(1億2千万人)に乗じると、4万3,440人という数が出てきます。わが国の自殺未遂者数の試算値です。年間の自殺者はだいたい3万人ほどですが、その裏には、結構な数の未遂者がいることがうかがわれます。(※ここまでが舞田さんのブログからの引用です)


 年代別では、20代が一番多く毎年1,200人を超えているとのこと。年間3万人もの自殺の裏には年間4万3千人もの自殺未遂者数がいるということです。


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 上のグラフと表は東京都福祉保健局のサイト に掲載されている東京都の自殺者数の推移と年齢・階層別死因です。東京都の10代から30代までの死因トップは自殺で、先進主要国で若者の死因がトップなのは日本だけですが 、東京都も同様になってしまっています。東京都の年間自殺者数が2,800人、年間自殺未遂者数が4,700人、あわせて年間7,500人がこの東京で自ら命を絶とうという状況にあるのです。


 サラ金、多重債務から多くの人の命を救ってきた宇都宮けんじさん
 vs多くの命奪ってきたサラ金本社ビルを拠点とする猪瀬直樹さん


 それで昨夜、新宿駅で行われた都知事選の街頭演説を聞いていたら、辛淑玉さん(人材育成コンサルタント)が、「私たちが働いている現場は弱肉強食になってしまっていますから、政治のところでは弱者を必ず助けなければいけません」と語り、東京都知事選挙に立候補している宇都宮けんじさん(前日弁連会長、反貧困ネットワーク代表) は、「人の命を大切にしなかった、人権を大切にしなかった、石原都政を変えなければいけません。私は命を守るために原発に反対します。脱原発というのは人の命を守る政策、子どもの未来を守る政策です。そして、命を守るために石原都政が切り捨ててきた福祉を充実します。福祉切り捨ての石原都政のもとで、餓死者が倍増しています」と訴えていました。


 きょう投票がおこなわれる東京都知事選挙に立候補している宇都宮けんじさんは 、『連続授業 命と絆は守れるか?――震災・貧困・自殺からDVまで』(宇都宮健児・浅見昇吾・稲葉剛編、三省堂)の中で次のように書いています。


 1998年から日本の自殺者は年間3万人を超えるようになり、その内、経済生活苦による自殺は大体7,000人から8,000人くらい。その中には多重債務者もかなり含まれています。私達は2007年ごろから富士山のふもとの青木ヶ原樹海で自殺防止の看板の設置運動をやりました。「借金の問題で死ぬことはありませんよ。かならず借金問題は解決できます」という看板設置運動をやった結果、2010年の9月までに、1万5,399本の電話がかかってきました。その内、自殺しようと思い実際に樹海に入り看板を見て電話をかけてきた人は97人。こういう自殺防止の運動をやっています。


 また多重債務者の中には、サラ金業者などの取り立てを苦に夜逃げをした結果、路上生活者となる人がたくさんいます。東京、大阪、名古屋などの都市部には路上生活者が多いので、私達は5、6年前から路上生活者への炊き出しをやっているグループと連携して、炊き出しの現場で無料の法律相談をするようになりました。


 ――以上が本からの引用ですが、この後、この本では宇都宮けんじさんが名誉村長をつとめた年越し派遣村の取り組みなどが紹介されています。宇都宮けんじさんは、「命を守る」ためにさまざまな活動をずっとやってきたわけです。


 一方、石原都政を継承するという猪瀬直樹さん はどうでしょう。驚くべきことに、猪瀬直樹さんの選挙事務所は旧武富士本社ビルを丸ごと使っているとのこと 。サラ金、多重債務から多くの人の命を守り実際に救ってきた宇都宮けんじさんと、多くの人の命を奪ってきたサラ金本社ビルを拠点にする猪瀬直樹さん という、あまりに対照的な二人ですが、この問題以外でも対照的な場面が都知事選立候補者によるテレビでの論戦でありました。


 9人の命奪った笹子トンネル事故の背景には
 猪瀬さんの「功績」=道路公団民営化の維持管理費3割削減が


 12月9日のフジテレビ「新報道2001」で、9人の命を奪った笹子トンネル事故に関わって、トンネルの打音検査をしていれば内壁脱落の可能性が発見できていたことを受け、宇都宮けんじさんが「民営化以前は5年に1回の定期検査で打音検査をしていたが、民営化後は打音検査をしていなかった。猪瀬さんが小泉政権時代に進めた道路公団民営化での高速道路の維持管理費3割削減が関連しているのではないか」と発言したことに対して、猪瀬さんは「打音検査は2000年にやめている。民営化は2005年だ。事実にもとづかないと、デマを流したことになるから気をつけるべき」と反論しました。


 ここで猪瀬さんが言いたいのは、道路公団民営化は2005年で、その前に打音検査はやめてしまっていたのだから、自分が民営化で決めた維持管理費3割削減はまったく関係がないのだということでしょう。


 しかし、猪瀬さんが自ら「功績」と誇る道路公団民営化の最終的な委員会意見(2002年12月6日付)には、「道路公団関係4公団は、新会社発足までに管理費を、具体的な業務の必要性に立ち返って徹底的に見直し、概ね3割削減することを目指す」と書かれています。さらに加えて、猪瀬さん自身の意見書(2002年11月30日提出)に、「維持補修等の管理コストは徹底した合理化を行い削減することが求められる」と明記しているのです。


 猪瀬さんは打音検査をやめたことは自分が進めた道路公団民営化での維持管理費3割削減とは無関係と主張しているわけですが、2005年の民営化前からすでに維持管理費3割削減は、それこそ押しの強い猪瀬さんの当時のご奮闘で至上命題になっていたのです。


 海渡雄一弁護士は、「民営化政策の是非も都知事選の争点に」 として、「東京都知事選の争点は命を大切にする政治かどうかである。脱原発も福祉も命の問題である。猪瀬候補は、「都営地下鉄と東京メトロの一元化」=「都営地下鉄の民営化」を政策として掲げている。民営化された高速道路で、このような大きな犠牲が生じたことについて、民営化を推し進めた政治家や都知事候補はどのように考えているのだろうか、説明する責任があるだろう」と指摘しています。


 医療を切り捨て全国最低水準にした石原都政


 それから、命にもっともかかわる医療の問題です。猪瀬直樹さんは「石原都政を継承する」と公約しているわけですが、石原都政は、16あった都立病院を半分に減らし、2010年には人口10万人当たりの全病床数は全国43位、療養病床数は全国45位、精神病床数は全国44位といずれも全国最低水準にまで引き下げました。こうした貧しい石原都政の医療政策により、2008年、36歳の妊婦が7つの病院に受け入れ不能と言われ、死亡する事件が起きます。加えて石原都政で問題なのが、消防庁によると東京都の119番通報を受けてから救急車が患者を医療機関に搬送するまでの所要時間は平均54.3分で全国最下位(2010年)で、2006年と比較して10分以上も遅くなっているのです。また、都立の看護学校と定員も11校1,340人(2000年)から7校560人(2009年)へと半分以下に削減するなど、石原都政は医療崩壊に拍車をかけているのです。こうした都民の命を脅かす石原都政は「継承」ではなく、ぜひ「転換」していきたいものです。


(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)