財政破たん論のウソ - ギリシャの二の舞にはならない | すくらむ

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 ※「連合通信・隔日版」(2010年10月21日付No.8384)からの転載です。【★連合通信の購読申し込みは下記アドレスへ
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〈連載企画〉消費税引き上げはなぜダメか(4)
 ギリシャの二の舞にならず/財政破たん論のウソ
 (※「財政破たん論のウソ」については、国公労連のオフィシャルブログ「くろすろーど」 でも取り上げていますので参照ください。→「どうみる?日本の財政赤字(1) - 孫子の代まで借金漬け?(山家悠紀夫さんに聞く)」

 消費税増税の理由に財政破たんを懸念する声がある。今年のギリシャ危機を例に「日本も1,000兆円の借金があるから危険」との報道も多い。この話を信じる前に事実を確かめてみよう。


 ギリシャは財政赤字を過小に発表し、世界的金融危機で資金繰りも悪化して危機に陥った。日本がこの要因で破たんするとは考えづらい。


すくらむ-表1


 表1では主要国の多くが赤字であることを示した。日本の赤字は増えているが飛び抜けて悪くない。懸命に赤字削減に取り組むイギリスでも、破たんするとの話は聞かれない。


 ●国際比較では安全


 それより大事な点は「誰に借金をしているか」。ギリシャ国債の購入先は7割が外国で、日本は銀行などの金融機関を中心に9割以上が国内だ(表2参照)。


すくらむ-表2


 家計に置き換えると、日本は「父さんがじいさんなどの家族から借りている」状態。万が一、政府が資金繰りに行き詰まっても、国内金融機関が借り換えなどで融通すれば対処できる。だが、ギリシャは赤の他人から借りているようなもので緊急時に対応できない。


 01年のアルゼンチンの財政破たんも他人からの借金、つまり多額の対外債務が原因だった。隣国ブラジルの輸出強化で競争力が落ちて外貨が稼げなくなり、対外債務の支払いが不能になったのだ。表3では、世界銀行の資料を元に経済規模の大きい75カ国から対外債務の多い国を並べたが、日本はランク外で国際的にも安全と言える。皮肉にもこの安全性が現在の円高を招いている。


すくらむ-表3


 ●「将来不安」に惑うな


 「今の借金を孫の世代に回すな」との意見も多いが、論破する証拠もある。ここで言われる借金とはあくまで政府の負債。表4では、民間や家計も含めた日本の資産状況を示したが、家計や金融機関の資産は政府負債を優に上回る。

すくらむ-表4


 金融機関の資産には国債が多く含まれており、この元手も国民の預金や保険金だ。今後、政府がさらに国債を発行して負債が増えても、その分、国債を買った金融機関の資産も増えるだけで、全体の収支バランスは崩れない。


 「国債を刷り続ければ、家計資産が消えるのでは」との心配も無用だ。「金は天下の回りもの」で、例えば家計資産の約1割である150兆円を消費すれば、企業の利益すなわち表にある「非金融法人」の資産が増える。そこで、政府や経済界が企業利益を家計に回す努力をきちんとすれば、国内需要が伸びて経済は成長し、政府の負債圧縮につながる。要するに、財政支出を必要以上に抑えることや消費税増税で需要を冷え込ますよりも、国内経済の活性化こそ財政健全化の道だ。


 ちなみに、ギリシャの消費税(付加価値税)税率は18%から危機後に20%台へ上がった。高い税率でも財政に貢献しない一例だ。