消費税は大企業の「打ち出の小づち」 -「濡れ手で粟」の輸出還付金 | すくらむ

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 ※「連合通信・隔日版」(2010年10月19日付No.8383)からの転載です。【★連合通信の購読申し込みは下記アドレスへ
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 〈連載企画〉消費税引き上げはなぜダメか(3)
 大手企業は「濡れ手で粟」/引き上げ求める本当のワケ


 中小零細や下請け業者、労働者には重荷でしかない消費税も、大手企業にとっては「打ち出の小づち」であり「濡れ手で粟」だ。


 元静岡大教授で税理士の湖東京至(ことうきょうじ)氏がまとめた表(下表)がある。名だたる企業が2009年度分だけで巨額の消費税還付を受けており、上位10社の合計で8,000億円を超えた。還付金は輸出するごとに入る構図だ。

すくらむ-輸出還付金



 ●輸出で得をする


 輸出還付金は、本企画(2)で登場した「仕入税額控除」 と深くかかわっている。この制度は、全売上高に5%の税率をかけた分から、仕入れコストに税率5%をかけた分を差し引いた額が消費税額となることはすでに紹介した。


 ところが、輸出を多く手がける大手企業は、全売上高の数字を減らしつつ、コスト仕入れ分を変えない手法で、納めるどころか逆に消費税を還付してもらうことができる。輸出で売り上げた分は税率がゼロなので、その分を全売上高から除くことが可能だからだ。


すくらむ-しくみ


 上図で説明する。全売上高1兆円のB社は、国内販売と輸出で稼いだ分が5,000億円ずつで、仕入れコストは8,000億円。本来は1兆円の5%に当たる500億円に、仕入れの5%分の400億円を引いた100億円を消費税として納めなくてはならない。


 しかし、輸出分の5,000億円は税率ゼロ。実際に売り上げに5%がかかるのは残りの国内販売分5,000億円で、税率をかけると250億円になる。一方で、仕入れ分は変わらず400億円なので、差し引くとマイナス150億円。B社には逆に国から150億円を還付してもらえる。


 ●還付は国の「補助金」


 輸出の売り上げが税率ゼロとなる理由は、外国でも日本の消費税に当たる付加価値税があり、輸出先で課税される商品の売り上げに消費税をかければ「二重課税」となるからだ。「認められた制度で負担しているのだから、還付を受けてもよい」と考える人もいるだろう。だが、輸出で稼ぐ大企業に甘い言葉は禁物だ。


 企画(1)で紹介した下請け企業の苦境 を思い出してほしい。


 大企業が製造する自動車や精密機械、電気製品は国内の下請けの力なくしては出来上がらない。本来、大手企業や親会社は、下請けに仕事を回すときに消費税分をきちんと負担して発注しなくてはならないのに、効率化を理由に発注額を減らし、消費税分も削減対象にしている。それゆえ下請けは、自らの利益から消費税を納めざるを得ない。つまり、大手企業は強い立場にある取引関係を使い、国内の下請けに負担を押し付ける一方で、国から還付を受けているのだ。


 前出の湖東税理士は言い切る。「消費税は国が輸出する大企業に補助金を出すために考え出されたのです」


すくらむ-消費税


 ●増税は「おいしい」


 日本経団連は今、政府与党に消費税引き上げを事あるごとに要望し続けている。米倉弘昌会長はその理由を「財政や社会保障の改革に欠かせない」と発言。同時に「経済成長に必要」として、法人税の引き下げもセットで求めている。


 仮にこうした要求が今の仕組みのままで通れば、大手企業は消費税率が上がるたびに輸出還付金をさらに受け取る。下請けを泣かせる事態にも拍車がかかるだろう。引き上げで苦しむ人のかたわらで「おいしい」思いができるわけだ。


 こうした面を抜きに、消費税を議論することはいかにも危ない。