主要23カ国で日本の公務員人件費は最低 - 国家公務員数はフランスの10分の1以下 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 『2010年国民春闘白書』(学習の友社)が、この出版不況のなか、またしても増刷となりました。毎年、企画・編集・執筆にかかわっているものとして、うれしい限りです。


 その『2010年国民春闘白書』で今回、OECDが発表している国際標準産業分類における「公務及び国防、強制社会保障事業(Public administration and defense; compulsory social security)」の人件費を調べて、対GDP比の国際比較を掲載しました。最新のデータは2007年で、数字が発表されているのは23カ国でした。

すくらむ-公務員人件費


 上のグラフは、主な国だけですが、23カ国を高い方からすべて紹介すると、(1)デンマーク16.9%、(2)スウェーデン15.1%、(3)フィンランド13.0%、(4)ポルトガル12.9%、(5)フランス12.8%、(6)ノルウェー12.3%、(7)ベルギー11.7%、(8)ハンガリー11.5%、(9)ギリシャ11.1%、(10)イギリス10.9%、(11)イタリア10.7%、(12)スペイン10.2%、(13)アメリカ9.9%、(14)ポーランド9.6%、(15)アイルランド9.3%、(16)オランダ9.1%、(17)オーストリア9.1%、(18)チェコ7.6%、(19)韓国7.3%、(20)ルクセンブルグ7.1%、(21)ドイツ6.9%、(22)スロバキア6.8%、(23)日本6.2%、となります。


 日本は、数字が発表されているOECD23カ国で、公的部門の人件費は最低です。デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ポルトガル、フランスと比べると、日本の公的部門の人件費は半分以下です。23カ国の平均が10.4%ですから、日本の公的部門の人件費は各国平均の6割しかないのです。

すくらむ-公務員数


 また、人口千人あたりの公的部門の職員数(総務省調査)は、上記のグラフのように、フランス88.8人、アメリカ78.2人、イギリス77.8人、ドイツ54.9人、日本32.0人です。日本の公的部門の職員数は、フランス、アメリカ、イギリスの半分以下です。国家公務員に限ると、フランスの30.1人に対して、日本は2.6人で、なんと10分の1以下の人数しかいないのです。


 ところが、大和総研が2005年に発表した「公務員人件費の国際比較」(※PDFです) の中で、「コア公務員の1人当たり雇用者報酬の、コア公務員以外のそれに対する倍率により国際比較」したという「コア公務員1人当たり雇用者報酬の国際比較」なる数字を持ち出して、OECD諸国の中で、「日本は上から2番目に高い」「(各国の)平均は1.37であるのに対して、日本は2.10であった。単純計算すれば、諸外国の平均よりも5割以上(=2.10÷1.37)高い状況にある」「しかも(中略)日本ではこの倍率が近年上昇しており、官民の賃金格差が拡大している」などとして、“意図的”に日本の公務員が、諸外国や、国内の民間労働者と比較してさも法外に高い賃金をもらっているかのように喧伝しています。


 しかしこれは、公務員バッシングをあおる“誇大広告”のたぐいです。大和総研もさすがにまずいと思っている証拠に、このデータを出したあとすぐに、「もちろん、国によるパートタイム労働者の比率の違いやその推移が反映されている。また、その測定は極めて困難なものの、公務員の生産性が高ければそれだけ賃金が高いのは当然であるし、それだけ公務員数は少なくてすむ(日本の場合、そういう面は確かにあると思われる)」などと言い訳を書いています。大和総研がみずから書いているように「国によるパートタイム労働者の比率の違い」がまさに反映しているのです。


 日本の賃金システムは、男性正社員をコアにする「家族賃金」で、ヨーロッパ諸国の同一労働同一賃金である「ジョブ型賃金」とは、大きく違います。

すくらむ-所得構成


 上のグラフ(※出所は、総務省『家計調査』、ILO, Labour Statistics Database 第一生命経済研究所「家計の労働所得とリスク資産の保有」08年7月11日発表)にあるように、国民の所得の構成を国際比較してみると、日本以外の国は所得を得る経路が複数存在しますが、日本は雇用所得(=労働所得)に完全に依存している構造です。これは下のグラフにあるように、家族関係社会支出や、教育機関への公財政支出など、国による教育・社会保障の移転=再分配機能が異常に低いため、日本の労働者は男性正社員をコアにする「家族賃金」に頼らざるを得ないからです。

すくらむ-家族支出



すくらむ-世界最低の教育


 ですから、日本の場合、非正規労働者の異常な低賃金を含む「コア公務員以外の労働者」と、その非正規の異常な低賃金を補完する「家族賃金」をもらう「コア公務員」(正規公務員)を比較すると、他国にはない異常な格差が生まれるのです。また、この異常な格差が近年拡大しているのです。大和総研のいうこの「コア公務員」を「民間企業の正社員」と置き換えると、もっと格差があらわれることになります。これは近年、日本で問題になっている「格差社会」「格差拡大」のあらわれなのです。


 加えて、日本の公務員数における女性比率の低さも影響しています。日本を除くOECD諸国の公務員数の男女比はほぼ同じぐらいで、若干女性の比率が低い程度ですが、日本の女性比率は総務省の2005年の統計で21.2%しかありません。大和総研は、2002年のデータを使用していますので女性比率はもっと低い可能性もありますが、2005年の数字でも「コア公務員」の8割は男性ですから、これと比較する「コア公務員以外の労働者」に含まれる女性の割合は多くなります。2006年の数字で、OECD諸国の男女の賃金格差は平均17.6%ですが、日本は33%と突出して女性の賃金が低い国です。ですから、大和総研のいう8割の男性が占める「コア公務員」はますます相対的に高い賃金となってしまうのです。


 過去エントリー「国家公務員の賃金は民間よりかなり低い」 でも紹介しているように、「どの年齢階層でも国家公務員の賃金の方が低く、全体の平均では、民間労働者の平均賃金が635万円であるのに対して、国家公務員の平均賃金は598万円と民間労働者より低いということです。(※そして、地方公務員の賃金は、この国家公務員の賃金がベースになっています)」


 そして、この過去エントリーは相当“釣り”ではありますが、「99%の公務員は貧乏 - 「高給批判」は筋違い、リッチなのは、ほんの一握りのキャリア官僚だけ」 なのです。
(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)