海外進出企業の17.6%が「内部留保のほぼすべて換金が容易」-内部留保は雇用に容易に使える | すくらむ

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 この間、大企業の内部留保についてのエントリーをあげてきましたが、2週間ほどで300ものコメントが寄せられています。批判的なコメントで多いのは、「内部留保は設備などの固定資産になっているから容易に現金化できない。だから、雇用や賃金には使えない」という日本経団連と同じ主張です。なかには、「固定資産になっている内部留保を取り崩せというのは、そこで働く労働者を路頭に迷わすことと同じだ」などというものまであります。


 もう何度も紹介しているのですが、過去エントリーで「大企業の内部留保の4割強は雇用維持に活用可能 - ほんの一部の取り崩しで雇用を守れる」 ことを詳細に証明していますし、「トヨタもキヤノンも内部留保を使うが雇用には使えない? -10年で2倍増の内部留保こそ“埋蔵金”」 の中でも以下のように説明しています。


 そもそも、企業の内部留保を2008年度の財務省「法人企業統計」で見ると、内部留保のうち現金及びすぐに現金化できる「換金性資産」は、大企業で54.9兆円、全企業で184.4兆円もあります。



 内部留保の「換金性資産」の中身を見ると、「現金・預金」は大企業35.5兆円・全企業143.1兆円、「流動性資産の有価証券」は大企業11.5兆円・全企業24.4兆円などがあります。



 過去エントリー「経済危機打開のための緊急提言 - 内部留保を労働者と社会に還元し内需拡大を」 で指摘しているように、非正規労働者の正規化に必要な資金は7.7兆円ですから、実際に「現金・預金」で溜め込んでいる内部留保143.1兆円のたった5%に過ぎないのです。(※ここまで過去エントリーからの引用)


 繰り返しますが、実際に「現金・預金」で溜め込んでいる内部留保143.1兆円のたった5%を使うだけで「非正規労働者の正規化」も可能だと私たちは主張しているのです。


 『日本経済新聞』(2008年7月12日付)は、「大企業が6期連続の増益で積み上げた手元資金は08年3月期末で46兆7,000億円。かつてないカネ余り状態が続いている。成長企業は資金を投資に振り向け、資金余剰の成熟企業は配当や自社株買いで資金を市場へ返す。こうした当たり前の資本政策を実践できるか。企業に問われているのは、哲学のある株主配分だ」としています。日経ですから株主配当に使えと主張していますが、実際に「かつてないカネ余り状態」「資金余剰」=現金として使える内部留保の存在は指摘しています。実際に、トヨタもキヤノンも内部留保を取り崩して株主配当には使っているのです。


 最後に、経済産業省からの委託で、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが、2008年12月に発表した「我が国の国際租税制度に関する調査」報告書の中で、「内部留保残高で換金が容易な資産割合」を調査していますので紹介します。(※この報告書の調査対象企業は、東洋経済新報社の「海外進出企業総覧2008年版」に掲載されている全企業で、2008年9月にアンケート調査したものです)


 調査項目を正確に書いておくと、「内部留保残高で換金が容易な資産割合〈問〉内部留保残高について、そのうち金銭及び金銭に換金が容易な資産等の額はどれくらいの割合を占めますか」というものです。


 これに対する有効回答企業数は552社。そのうち、「内部留保のほぼすべて換金が容易」と回答した企業は97社(17.6%)、「9割程度換金が容易」は20社(3.6%)、続けて「8割程度」は17社(3.1%)、「7割程度」は24社(4.3%)、「6割程度」は13社(2.4%)、「5割程度」は35社(6.3%)、「4割程度」は17社(3.1%)となっています。内部留保を4割以上換金が容易とする企業は223社(40.4%)となります。とりわけ、「内部留保のほぼすべて換金が容易」と回答した企業が17.6%と2割近くあることも驚きです。(※ちなみに「わからない」などと回答した企業が168社(30.4%)もあったことも紹介しておきます。それとネット上には報告書の現物を見つけられませんでした)


 以上、「内部留保は設備などの固定資産になっているから容易に現金化できない。だから、雇用や賃金には使えない」などという主張が、まったくのウソであることが、企業みずからの回答で証明されました。


 そして、過去エントリーの「富士通総研が内部留保急増で「日本の賃金は他の先進国の半分に」「最賃引上げが最大の成長戦略」と指摘」 「『フィナンシャル・タイムズ』が内部留保の大幅削減こそ日本経済成長の最重要な要件と指摘」 「内部留保の還元でデフレ脱却・非正規の正規化・最低賃金引き上げ・サービス残業根絶」 などで、何度も紹介してきたことですが、内部留保を社会的に還元することでデフレを脱却して、下の表にあるように、内需は264兆円拡大、国内生産は424兆円拡大、付加価値は231兆円拡大、税収は41兆円拡大するのですから、企業にとっても大きな経済効果が生まれるのです。

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(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)