外国人研修生に強いられる過労死、発生率は日本人の2倍 - 現代日本に横行する奴隷労働・人身売買 | すくらむ

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     ▼外国人研修生・技能実習生の死亡者数と死因

すくらむ-外国人研修生死者数



すくらむ-外国人研修生死因


 上のグラフと表は、財団法人・国際研修協力機構(JITCO)が発表した「外国人研修生・技能実習生の死亡者数と死因」です。1992年度から2008年度の間に、212人が死亡し、そのうち20人が自殺、66人が過労死の疑いが濃厚と考えられる脳・心臓疾患で亡くなっています。


 過去最悪の数字となった2008年度の死亡者33人のうち、脳・心臓疾患で亡くなったのが15人。外国人研修生・実習生の年齢は、20~30代で、同世代の日本人の発生率と比べほぼ2倍となっています。


 現在、外国人研修生・実習生は約17万7000人。現代における奴隷労働を強制されている外国人研修生・実習生の実態を告発するため、全労連は昨年の6月22日に、「外国人労働者問題シンポジウム」を開催しました。そのシンポジウムの記録が『〈研修生〉という名の奴隷労働』(花伝社)という書籍にまとめられています。その中から、熊本県労連の労働組合に加入し、「天草縫製実習生強制労働事件」の原告として奮闘する外国人実習生の発言と、ジャーナリストの安田浩一さんの発言の一部を紹介します。


 ▼天草縫製実習生強制労働事件の原告
  谷美娟(グ・メイチェエン)さんの訴え


 私は、2006年の1月まで中国の縫製工場で働いていましたが、日本で働きたいと思って、中国の派遣会社に4万元を払い、日本に来ました。4万元は、日本円で70万円くらいです。中国での私の給料は月に1,000元くらいだったので、3年分以上になります。このお金は、親戚と親の友人に借りました。また、私が契約に違反したら、保証人になってくれたいとこが15万元も払わないといけません。


 2006年の4月、私は、フェリーで下関に着きました。到着すると、すぐに縫製工場スキールのK社長からパスポートと印鑑を取りあげられました。そして、社長の車で天草の工場に連れて行かれ、その日の夕方6時から夜の9時まで仕事をさせられました。私は、長時間の移動でとても疲れていたのですが、断ることはできませんでした。


 私の仕事は、女性用下着の縫製です。スキールでの仕事は、本当にひどいものでした。来る前に中国でK社長から面接を受けたときには、働くのは午前8時半から午後5時半までと聞いていたのですが、実際には夜10時頃まで、遅いときには午前3時まで働かされました。厳しいノルマが終わらないと、残業代も出ませんでした。社長がこわい顔で、テーブルを叩きながら、「ノルマは多くない」「バカ」などと怒鳴るので、仕事をやめることはできませんでした。


 休みは、月に1回くらいで、決まった日というわけではありませんでした。休みの日だからといって、自由に外出することもできませんでした。


 これほど休みなく長時間働いても、給料は月に6万円くらいしかもらっていません。残業代は時給300円しか出ません。社長には「バカだから給料が安い」などとよく言われました。


 給料は、銀行の通帳に入るようになっていて、貯金をさせられていました。この通帳は、来日してすぐ、K社長に銀行に連れて行かれて作らされたもので、私の印鑑と一緒に社長がずっと管理していました。そして、社長は、この通帳と印鑑を使って、私の給料を使い込んでいたのです。多いときには25万円も使われていました。


 私たちの寮は、一部屋に12人でした。仕事から寮にもどると、次の日の昼食を作らないといけませんでした。お風呂も一人用で、12人で交代で入っていました。私たちは、ゆっくり眠ることもできず、仕事の疲れがたまって、とても辛かったです。


 2007年の8月には、実習生の3人が倒れました。


 耳から縫製作業の機械の音が離れないで、眠れなくなった人もいました。


 寮を逃げ出す人もいました。私も逃げ出したかったのですが、中国の派遣会社に支払うためにした借金を返せなくなるので、逃げることはできませんでした。大きな借金をかかえたまま中国に帰されるのが一番恐ろしいのです。


 協同組合の人や理事長からは、「仕事をしたくないなら、中国に帰ってください」、「あなたたちが帰っても、すぐ別の中国人が来る」、「あなたたちの要求が、日本人と同じなら、中国人を使う必要なかったじゃない」などと言われ、とてもショックを受けました。私たちは、日本人よりも安い給料で、長い時間働かせるために、中国から雇われたのです。会社や共同組合は、私たちの尊厳を踏みにじっています。絶対に許せません。


 私たちが労働組合に入ってからの交渉でも、共同組合は少しのお金を示すだけで、帰国しろと言うばかりでした。


 国際研修協力機構(JITCO)や福岡の入管に、協同組合を指導してくれるよう、お願いにも行きましたが、何もしてくれませんでした。


 私たちは、もう、裁判所に訴えるしかありませんでした。とてもひどい目にあいながら、一生懸命働いてきました。その分の給料は絶対に払ってもらわないといけませんし、私たちを苦しめたことのつぐないもしてもらわないといけません。


 私たちは、希望をもって日本に来たのに、こんなに辛い目にあわせられるとは思ってもいませんでした。私は、私たちを3年間、奴隷のように働かせてきたこの制度は、すぐにやめてほしいと思います。そして、人間としての尊厳がきちんと守られ、ふうつに働いてふつうにお金をかせげる制度に作りなおしてほしいと思います。私たちは、いま、やさしい日本の人たちに支えられて生活しています。そんな日本の人たちといっしょに楽しく仕事ができる日が、1日も早く来ることを、心から望んでいます。


 ▼外国人研修生・技能実習制度は現代の奴隷制度
  ジャーナリスト 安田浩一さん


 取材をしていて必ずといってもよいほどに直面するのが、研修生・実習生に対する経営者の暴力とセクハラです。東日本のある研修生のケースです。彼女は工場に配属されたのですが、与えられた仕事は社長の家の家政婦さんのようなものでした。朝起きたら、玄関に水をまき、家の中を掃除して、洗濯して、そんな仕事を毎日毎日繰り返させられるんです。そして、夜になると社長に乱暴されるわけです。研修生は寮に住んでいたのですが、毎晩のように、社長が合鍵を使って部屋のドアを開け、布団の中に入ってきました。研修生はそのつど拒むのですが、恐怖によって激しく抵抗することもできません。当然です、生殺与奪の権は社長が握っているのですから。


 こんなことが1年も続いた。しかし耐えられなくなった女性は、その会社から逃げ出し、ある女性団体が運営するシェルターに駆け込んで、ようやくこの問題が発覚したわけです。取材していますと、このようなケースが本当に多いんですね。しかもセクハラの場合、多くの女性が泣き寝入りしているのです。


 外国人研修・技能実習制度は、「管理された安価な外国人労働力の活用」以外のなにものでもありません。しかも、「短期的なローテーション労働政策」です。これは、使用者にとっては非常に使い勝手のよいものなのです。制度の建前としては、国際貢献・人材交流、あるいは技術移転、そうした文言が並べられているわけです。しかし、実態は労働法に無自覚な経営者、脱法行為をなんとも思わない経営者、あるいは研修制度を金儲けの手段としているブローカーや送り出し・受け入れ機関、そのような者によって大きく歪められているのが実態です。


 それで、いまようやく制度の改定や見直しが進められていますが、それで、現代の奴隷制度に等しいこの研修・技能実習生制度が大きく改善されるかというと、私は大きな疑問を持たざるを得ません。


 そもそもわれわれメディアが報じる「研修生残酷物語」のようなものは、氷山の一角に過ぎないのではないかと思っています。実際、数多くの残酷物語が存在する。しかし、それがなかなか表に出ることはない。多くの研修生・実習生は、不当な扱いを受けても、声をあげることができないのです。ではなぜ、声をあげることができないのか。


 研修生として渡日するためには、多額のカネが必要となります。渡航費、事前研修費、手数料、そして保証金。様々な名目で、送り出し機関から「必要経費」の支払いを要求されます。さらに家の権利書を提出しなければならない場合も多い。当然、研修生となることを希望する者は、借金してこれら経費を捻出しなければなりません。借金しなくとも経費を支払うことのできる環境にある人は、そもそも研修生に応募などしません。そして「借金の返済」といった重荷を背負い、彼ら彼女らは日本にやって来るのです。また、送り出し機関に預けた保証金は、帰国するまでは返してもらえません。日本でなにかトラブルを起こしたりすれば、保証金は没収されます。


 これらは、いわば身代金のようなものです。日本で働いている間、その束縛から逃れることができない。たとえば低賃金や劣悪な労働環境に異議申し立てや抗議をすれば、即刻、強制帰国という「罰」が待っています。研修・実習を満了することなく帰国すれば、ほとんどの場合、保証金は返ってきません。もちろんカネを貯める前に帰国させられれば、借金の返済すらできないことも多い。


 だからこそ、いま現在も17万7000人という研修生・実習生の多くが日本で沈黙を余儀なくされているわけです。


 最後に、作家の雨宮処凛さんのwebちくま「反撃タイムズ~プレカリアートは闘うぞ」の一節を紹介します。


 ワーキングプアなどの問題にかかわっていると、最終的には究極の形態として「外国人研修生」の問題に行き着く。急激に「格差社会」が進んだこの国の、私たちが想像もつかないような「最底辺」で働かされる人々。「時給300円」「強制貯金」「人身売買」「トイレ1分罰金15円」。そんな断片的なフレーズを目にしたことがある人も多いはずだ。


 07年、アメリカ国務省の「人身売買報告書」で、日本における外国人研修・実習制度が「人身売買」として指摘された。どこか遠い国の言葉のように思っている「人身売買」が、今この瞬間も、この国で行われている。「自分には関係ない」と思っていても、そんな研修生・実習生たちの強制労働によって作られたものを私たちは当り前に手にしている。例えば、人気の苺「とちおとめ」。これを作っている人々の中に中国人研修生・実習生がいることを、誰が知っているだろうか。彼らは365日、1日の休みもなく働かされているという。


(byノックオン)

 追伸 京都自治労連のNさんから、「冒頭のグラフと表を使ってエントリーしてみては」とブログの企画へのアドバイスをわざわざいただきました。この場でお礼を申し上げます。Nさん、ありがとうございました。(※京都の、それも他の産別の方からブログ企画の心配までしていただいて、本当にありがたく思っております)