2009-05-11 07:07:05

子どもの貧困が世界最悪の機会不平等・少子化社会つくる - 世界一高い教育費・貧しい価値観

テーマ:ワーキングプア・貧困問題

 総務省が発表した4月1日現在の人口推計によると、日本における15歳未満の子どもの数は、1982年から28年連続で減少し、1,714万人と過去最少を更新しました。総人口に占める子どもの割合は、昨年比0.1ポイント減の13.4%で、35年連続の低下。人口3,000万人以上の31カ国と比べても、アメリカ20.2%、中国19.0%、フランス18.3%、イタリア14.1%、ドイツ13.9%などを下回り、世界最低水準の少子化状況が続いています。


 先日のエントリーで紹介した「35歳1万人アンケート調査結果」にもあるように、「収入が少なくて結婚できない」とした正社員(男性)35%、非正社員(男性)70%、「子どもを理想の人数持てない」が54%で、そのうちの74%が「子どもを持つと経済的負担が大きいため」と回答しています。


 先週、『子どもの貧困 - 日本の不公平を考える』(岩波新書)を書かれた阿部彩さん(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第2室長)のお話を聞いたのですが、阿部さんが強調されているのは、「少子化対策」ではなく「子どもの貧困をなくす対策」こそ必要だということです。日本社会を根本的に変えて、幸せな子どもの数を増やすことが必要であり、すべての子どもの幸せを追求するためには、急速に増えている「子どもの貧困」問題を解決しなければなりません。親の経済状況や家庭環境にかかわりなく、すべての子どもに、幸せで健全な発育の場と、教育の機会が与えられることこそが重要で、「すべての子どもが享受すべき最低限の生活と教育を社会が保障すべきである」と、阿部さんは訴えます。


 日本の子どもの貧困率は14.3%で、7人に1人の子どもが貧困状態にあります(OECD「子ども貧困リーグ」2000年)。小学校や中学校のひとつのクラスに、少なくとも4~5人の子どもが貧困状態にあるということです。具体的には、親2人と子ども2人の世帯で年収が手取り276万円以下、親2人と子ども1人の世帯で239万円以下、親1人と子ども1人の世帯で195万円以下の場合に、子どもが貧困状態にあるとされます。


 子どもの貧困状態にもっとも深刻なダメージを与えているのが、日本における世界一高い教育費です。


 AIU保険の試算によると、子どもの食費や衣服費などの基本的養育費および教育費のひとりあたりの合計額は、幼稚園から大学まですべて国公立に通ったとしても2,985万円になり、すべて私立に通うと6,064万円もかかります。先ほど紹介した親2人と子ども1人の貧困世帯の年収は239万円以下です。この貧困世帯で、子どもが生まれて大学を卒業するまでの22年間の所得の合計が5,258万円です。この所得は、私立に通う教育費の6,064万円におよびません。国公立の場合でも、世帯の全体の所得の半分以上を占めることになります。これでは貧困世帯の子どもは最初から大学進学をあきらめるほかありません。


 下のグラフにあるように、日本は、すべての教育段階に対する公的な支出は、OECD諸国の中で最低です。


 ▼教育機関への公財政支出の対GDP比(全教育段階、05年)

すくらむ-世界最低の教育


 加えて、下の表にあるように、児童手当は、他の先進諸国にくらべて、異常に低い。ヨーロッパの多くの国は、大学まで教育費は無料なのに、児童手当も手厚いのが当たり前になっています。


          ▼先進諸国の児童手当

すくらむ-児童手当


 日本の子どもを軽視する姿勢は、明確な数字としてあらわれています。下のグラフにあるように、家族関係社会支出の対GDP比はアメリカと最下位を競い合っています。(※注→日本は高齢化で子どもが最も少ないのだから当然だと主張する人がいますが、このグラフで見られる大きな差を説明できるものではありません)


    ▼各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較(03年)
      (内閣府『少子化社会白書』2009年版)

すくらむ-家族支出


 2007年に厚生労働省が行った調査で、全国のホームレスの人々の学歴は、中学校卒54.5%、高校卒31.5%、短期大学・専門学校卒2.9%、大学卒5.6%となっています。


 貧困世帯の子どもに低学歴が集中することは、高校や大学の授業料が払えないといった問題だけから派生しているわけではなく、社会経済階層による大きな学力格差が存在する点にも注意する必要があると阿部さんは指摘します。


 子どもの学力の形成を考えた場合、熟や家庭教師などの教育投資を行うことができないという「経済的要因」、家庭において親が子どもの勉強をみたり、ゆとりをもって子育てができないという「ストレス要因」、家庭内に落ち着いて勉強ができる場所がなかったり、居住地域に図書館や公園などの社会資源がないという「環境要因」など様々な要因が子どもの成長に影響していきます。東京大学の苅谷剛彦教授が親の社会階層別に高校生の実態を調査をしたものが下のグラフで、下位階層の学習時間は、上位階層の半分以下しかなく、結果として、学力格差がついてしまう要因と考えられます。


        ▼社会階層別 学校外の学習時間(平均)

すくらむ-階層別学習時間


 貧困世帯に育つ子どもの中には、基礎学力さえ身についていない子どもが増加しています。国の教育政策として、貧困世帯の子どもたちに基礎学力をつけることの重要性を認識すべきです。


 下のグラフは、OECDの「PISA調査(学力到達度調査)」の結果の一部です。これを見て分かるように、子ども全体の学力が高い国では、学力が一番低い層の子どもたちの学力も高いのです。学力格差の底辺の子どもたちの学力向上を図ることは、すべての子どもの「学ぶ権利」を保障するとともに、子ども全体の学力を底上げすることになるのです。


        ▼OECD「PISA調査」(06年)読解力

すくらむ-読解力


 阿部さんは、2008年に「子どもの最低限の生活水準」についてのアンケート調査を実施。1800人を対象に、「現在の日本の社会においてすべての子どもに与えられるべきもの」について聞いたところ、いま全世帯の高校進学率は97.5%に達しているのに、アンケート結果では、「希望するすべての子どもが高校に行けるべき」と答えた人は61.5%、「希望するすべての子どもが大学に行けるべき」と答えた人は42.8%しかなかったのです。


 このアンケート結果について、阿部さんは、次のようにコメントしています。「子どもが希望したとしても、親が貧困なら、高校にも大学にも行けなくても仕方がない--このような最低限の生活水準に対する貧しい価値観であるというのが残念ながら日本の現状といえます。これは、『貧困は自己責任』とする考え方が、親のみならず、その子どもにまで浸食しているといえるのかもしれません。こうした状況で、『教育の平等』や『機会の平等』を訴えても、支持されないはずです。しかし、『教育の平等』『機会の平等』が支持されない社会とは、どのような社会でしょうか。不利な状況を背負って生まれてきた子どもたちが、そのハンディを乗り越える機会を与えられない社会とは、どんな社会でしょうか。自らが属する社会の『最低限の生活』を低くしか設定せず、向上させようと意識しないことは、次から次へと連鎖する『下方に向けての貧困スパイラル』を加速させ、結局、社会全体の活力や生活レベルを下げていくことにつながります。私たちは、まず、この貧しい価値観、この貧しい“『子どもの貧困』を見る目”を改善しなければなりません。『子どもの貧困』に対する政治の無自覚は、じつは社会の無関心、私たちの無関心の裏返しでもあるのですから」


(byノックオン)

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2 ■不平等は作られた悪

少子化の原因は今の生活がいっぱいな非正規社員や低所得の正社員の増加、女性の社会進出による職の奪い合いの影響があるのではないか。小泉、竹中のアメリカ被れがめちゃくちゃに構造破壊、つまり派遣という奴隷制度を導入し広めてしまった結果だ。

1 ■子どもの人権感覚も貧困

そうなんですね。日本人は子どもの人権についても貧困な人権感覚しか持ち合わせていなかったのですね。そういう意味ではこの国民にこの政府ありですね。でも地道に頑張りましょう。

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