「収入が少なくて結婚できない」正社員35%・非正社員70%(35歳男性)、「収入増えない」69% | すくらむ

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 6日に放送されたNHKスペシャル「“35歳”を救え~あすの日本 未来からの提言」。いろいろ注文を出したい部分もありましたが、「安心して仕事を得られる社会」「安心して子どもを育てられる社会」につくり変えなければ、日本の未来はないとする大筋の方向性には賛同できるものでした。


 番組が“35歳”に注目するのは、団塊ジュニアで人口が多い世代であると同時に、今後20年にわたって子どもを育て、日本社会を支えていく中核であるからとのこと。ところが、いまの“35歳”の現実は、オイルショックの年に生まれ、社会に出るときにはバブル崩壊で就職氷河期にあたり、まさにロスジェネ世代で、4人に1人は非正規社員と、不安定な状態に置かれています。


 将来への不安が広がる日本において、“35歳”が「安心して仕事を得られる社会」「安心して子どもを育てられる社会」に変えていかなければ、日本社会の衰退は免れないとの問題意識のもと、「あすの日本」への希望をどう取り戻すか、解決への道を探りたい、というのが番組の意図するものでした。


 まず、35歳の置かれている仕事と暮らしの実態をつかもうと、「35歳1万人アンケート調査」を実施(※こうしたアンケート調査は過去になかったそうです)。以下、番組で紹介されたアンケート結果です。(※なお、番組中ではアンケート回答者の男女比や正社員・非正社員比などは明示されませんでした)


 ▼35歳1万人アンケート調査結果


 ◇「将来生活が良くなる」と思う 15%
 ◇「収入はもう伸びない」と思う 69%
 ◇1年前とくらべて給料が減った 42%
 ◇貯蓄を取り崩して生活している 56%
 ◇正社員の不安は
   会社が倒産するかもしれない 42%
   解雇されるかもしれない 30%
 ◇転職した経験がある 66%
   年収500万円台→転職経験あり54%、なし46%
   年収200万円未満→転職あり82%、なし18%
 ◇収入が少なくて結婚できない→
   →正社員(男性)35%
   →非正社員(男性)70%
 ◇子どもを理想の人数持てない 54%
   →そのうち74%が経済的負担大きいため
 ◇今回のアンケートに回答した女性の出生率0.86
   (現在44歳の女性の出生率1.46)


 このアンケート結果を紹介したNHKのアナウンサーは、「先の見えない不安が広がっている」「少子化のさらなる加速も懸念される」とコメントし、続けて、現状の社会構造のまま、労働者の所得は増えず、正社員と非正社員の格差を放置した場合の20年後のシミュレーションを紹介。それによると、2029年の日本は、人口が1割減少し、経済はゼロ成長、失業率13%、年金28%減、消費税18%など超コスト負担社会が到来して中間層も崩壊するとのことです。


 そして、こうした明るい未来のない日本を裏付けるような35歳の実際の暮らしぶりをドキュメント。努力して勉強し十数個もの資格を取得したのに、正社員になれず、結婚を考えていた女性の親から年収が低いことを理由に結婚を反対され、「僕は生涯結婚できない」とつぶやく35歳男性。正社員だが予想もしなかった大幅な賃下げにあい、マンションのローンをかかえ、3人目の子どもはあきらめ、家族とすごす休日だった土日もダブルワークについやす35歳男性。夫の会社が倒産し、再就職したものの夫の年収は半分になり、小さな子どもをかかえ、深夜コンビニのアルバイトと昼間のパートのダブルワークを睡眠時間2時間半でこなす35歳女性。こうした状況から希望を取り戻すには、どうしたらいいのか? 番組では、①積極的雇用政策、②生活支援(子育て・教育・住宅への支援)、③家庭と両立する働き方(子育ての妨げとなる長時間労働の解消)の3つのキーワードによる新たな政策が必要と提言。たとえば、イギリスでは「積極的雇用政策」として、生活費を支援しながら職業訓練を実施し2年間で10万人の雇用を創出。イギリス政府のシミュレーションでは、積極的雇用政策への予算投入400億円で、雇用が創出され、税収はアップし、失業手当は下がるので、800億円の経済効果があるとのことです。


 そこで、日本で積極的雇用政策を実施した場合のシミュレーションを紹介。2006年の数字で、積極的雇用政策への日本の支出は、OECD諸国の平均0.6%(対GDP比)の3分の1の0.2%しかないので、これをOECD諸国の平均まで引き上げるために2兆円を追加。イギリスで実施している再就職支援プログラムを真似て2年間生活費を支援し職業訓練を行うと、失業者が正社員へ、非正社員が正社員になるなど25万人が正社員化。これは、雇用者報酬の増加→消費の拡大→企業業績アップで設備投資が増加→GDPを0.3%押し上げるという、日本経済全体が良くなるという波及効果をもたらします。


 番組の最後に司会者が、「子どもなくして未来なし」というフランスの理念も紹介しながら、これからの日本社会では、「モノへの投資ではなく、若い人への投資へと発想を変えることが何より大切になっているのではないか」と締めくくりました。


(byノックオン)