684. ロング・キス・グッドナイト(97)/カットスロート・アイランド(96) | 同世代名画館DX

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昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

大傑作を撮って一線に躍り出た後、目も当てられぬ駄作を連打して、フェードアウトしてしまう映画監督がたまにいる。
レニー・ハーリンもまた、その一人である。


元々は低予算ホラー「プリズン」で注目されたB級監督。ここから「エルム街の悪夢4・ドリームマスター」に起用され、わらしべ長者のように「エイリアン3」の監督候補に。
なかなか進まぬ「エイリアン3」に痺れを切らしていたところ、転がり込んで来たのが、前作の大ヒットを受けた「ダイ・ハード2」。当然速攻で飛び付いた。
つまりはラッキーボーイ。こんなおいしい話が続くことは滅多にない。脚本も良く出来てたから「ダイ・ハード2」は傑作となり、大ヒット。ハーリンは、そのデカい図体と金のロン毛という風貌も手伝って、一躍スター監督となった。
そうなりゃ、引く手あまたのハリウッド。いい仕事がすぐ来る。スタローン主演「クリフハンガー」。久々アクションに気合入りまくりスタローンのパワーで、これまた大ヒット。
しかし「クリフハンガー」が、期待外れの予告編負け映画ではないか?と疑問を覚えたのは、私だけではなかったはず。それでも勢いのあるハーリンは、女優さんと浮名を流す。ローラ・ダーンを捨てて、ジーナ・ディヴィスと結婚(ハエ男ことジェフ・ゴールドブラムとスワップしたのだ)。


2本成功すれば、3本目は思うがままのハリウッド。自らの夢の海賊映画を再現した「カットスロート・アイランド」は、当時破格の製作費!主演は何と、嫁さんディヴィス!
金の無駄遣いとは、このこと。日本語では「モッタイナイ!」と言うのだよ、ハーリンさん。確かこれでカロルコは倒産した。「天国の門」が罪なら、これは終身刑に値する。
海賊映画は当たらないというジンクスも、弁護にはならない。「パイレーツ・オブ・カリビアン」は当たったじゃないか。ホクロの嫁さんが最悪だった。ハーリンのバカ!


1度の失敗は許されるのがハリウッド。すぐに「ロング・キス・グッドナイト」で起死回生を図る。当時史上最高額の400万ドル!で落札された、鳴り物入りの脚本。「大事に撮れよ」と言ったのに、またも主演は嫁さん。やめとけって!
ごく普通の主婦が、実は記憶をなくした凄腕の工作員だった!というワクワクするよな設定。「ボーン・何とか」に似てるけど、さすがは400万ドル。タイトルもいいし。
でも観たら、あれれ~。いつ面白くなるの~。あ、終わっちゃった。どこが400万ドルなの?悪いのはダレ?ホクロの嫁か?サミュエル野郎か?ハーリン、お前か!!


2本続けてしくじると、さすがにちょっと厳しいハリウッド。次の仕事はすぐには来ない。
やっと撮ったのが「ディープ・ブルー」。海のドキュメンタリーじゃないよ。そんなに辛抱強くないから、ハーリンちゃん。ハイテクのサメが襲って来る話。
明らかにスケールダウン、しかもカラーも違う題材。妥協したのね、カントク。え、嫁と別れた?それはよかった!ちょっと面白かったじゃん、これ。ごめん、劇場行く気になれなかった。

ヒットしなくても、世は情け。昔の仁義に堅いのもハリウッド。人一倍恩義に厚いスタローンが手を差し伸べる。俺のカーレース映画「ドリブン」撮ってくれ。
久々にちょっと客は入ったが、これがトドメを刺した。あの「ダイ・ハード2」はまぐれだったのか?1作上手く撮れば出世が出来るハリウッド。しかし、続けて行くのは難しい。

その後「エクソシスト・ビギニング」でホラーに復帰。
その次の映画は日本未公開。確かTSUTAYAで見かけたけど、タイトルも覚えてない。
落ちるところまで落ちたな、ハーリン。さらば、レニー・ハーリン。