683. ラストマン・スタンディング(97)/ワイアット・アープ(94) | 同世代名画館DX

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昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

少し以前、黒澤明のリメイクが続いた時期があった。
森田芳光監督、織田裕二主演の「椿三十郎」やら、長澤まさみが我儘姫を演じる「隠し砦の三悪人」やら。ドラマでも、「天国と地獄」と「生きる」が作られていた。さらにハリウッドでも、「酔いどれ天使」をスコセッシとディカプリオがやるとか、「七人の侍」や「生きる」をリメイクする話とか、噂になっては消えている。
一つだけ言えるのは、黒澤映画をなぞれば、面白いものは出来ても、オリジナルは越えることは出来ないということだ。黒澤映画は、そのれだけ高い境地にある。
しかしなお、その境地に挑戦するつもりなのか、少しだけ威厳に肩を借りる姑息な考えなのか、黒澤のモノマネは後を絶たない。


「ラストマン・スタンディング」は、「用心棒」のリメイク。
西部劇版「用心棒」と言えば、盗作として訴えられた「荒野の用心棒」が有名だが、これは久々の、ちゃんと著作権払ってのリメイク。
監督は、「ロング・ライダーズ」「ジェロニモ」など西部劇とバイオレンスアクションの雄・ウォルター・ヒル。「ストリート・オブ・ファイアー」「48時間」の全盛期から、ややおとなしくなったが、これが最後の雄叫びか。その後名前聞かないなあ。
主演は運の悪いヤツ、ブルース・ウィリス。しがない宿屋町を通りかかったところ、親分たちの勢力争いに巻き込まれ・・・。おっと、それは4作も作られた別の映画だが、話としてはそんなところ。
もちのろん、ウィリスは三船敏郎の役なんだが、仲代達矢がやってた敵役の方はクリストファー・ウォーケン。これはナイス・キャスティング。織田裕二版の「椿三十郎」では豊川悦司が仲代役をやってたが、やはりキレもののシャープで、かつナイーブさを持った役者がピッタリ来る。(そう言えばドラマ版「天国と地獄」では仲代が演じた刑事役は阿部寛だった。これも良かった。)
西部劇なので、刀は拳銃に変わる。何度も言うけど、作りたい気持ちはわかるが、過去に「荒野の用心棒」もあって、また作るからにはこれらを越える勝算がなければいけない。クロサワのリメイクならば、と観に来る客など今どきはいないのだから。


「用心棒」のもう一つのリメイクは、そのまんま直訳で「ボディガード」。いや、冗談冗談。
確かに劇中のケビン・コスナーは黒澤版「用心棒」のファンで、映画館でこれを観るシーンがあった。なるほど「ボディガード」って用心棒」のことだよなあ、と妙なところに感心した。そのコスナー主演「ワイアット・アープ」は、久々の大作西部劇。
監督はローレンス・カスダン。「再会の時」でコスナーを死体役で使い、西部劇「シルバラード」の脇役でコスナーを注目させ、製作と脚本の「ボディガード」でコスナー最大のヒットをもたらした人。満を持して、コスナーとがっちり組んで作った力作だ。
結果は、コスナー人気が既に「ウォーター・ワールド」などで下降に入っていたため、それを加速することにしかならなかった。銀色基調の渋いポスター作って、ワーナーは宣伝してたけど、残念・・・。
そしてカスダンは、悪夢のような「ドリームキャッチャー」への道を。コスナーは「ポストマン」「ティンカップ」と、転がるように人気を落として行く・・・。
他に出演は、「西部劇なら俺を呼べ」とジーン・ハックマンがまた。ドク・ホリデイ役のデニス・クエイドが儲け役で、いい味出してた。


じゃ、あばよ!