不祥事は、日弁連の懲戒を指します。ここ1年の懲戒件数は全国で98件、この内除名と退会命令を受けた件数は8件です。8件の中に会費の不払いが3件が含まれています。1か月の会費を約4万円として30か月分、120万円位の会費滞納で退会命令になることもあるので厳しいとも言えます。

 横領のようなこともたびたびあるのではとか、東京の弁護士の事件が多いとか、年配者は要注意などということを耳にします。

 そこで、平成264月までの1年について統計を取ってみました。

 平成265月の弁護士数は全国で35094人、1年間の懲戒件数は98件でしたから発生率は1000分の2.8です。平成25年の懲戒が申し立ては3347件で、申立件数に対する懲戒率は2.9%です。申立のうち1701件は5人の人が申し立てたそうです。これを除くと、申立は1646件、申立の5.8%が懲戒になっています。

 1年間の懲戒について世代別、地域別の分布を調べてみます。あるところで除名が2件で他のところでは戒告が3件の場合に、どう見ても後者の方が悪質だとはいえないので、戒告を1点、3か月までの資格停止を3点、4か月以上の資格停止を4点、除名・資格停止を5点というポイントにしました。

 経験年数別懲戒率(ポイント合計÷人数×1000

 5065年  2.8  4049年  6.7      3039年  14.4   

   2029年  12.0   1019年   8.5       09年  1.9

 残念ながら、年配者ではなく脂が乗り切っていると思われる20年目から39年目の懲戒率が高いことが認められます。私もこの中間に含まれているので自戒です。 

   次に、地域別に分析しました。

 地域別懲戒率(ポイント合計÷人数×1000

 北海道   9.4    東北  12.1           関東  6.7   東京  5.7   

   東京第一 5.3     東京第二  5.1   中部  9.9    近畿  7.0

   中国四国 5.6       九州沖縄 5.7

  東北のポイントが高いのは、件数3件だけだったものの除名と業務停止各1件があるので、戒告が10件あったのと同じポイントになるからです。

 これを見ると、東京の三つの弁護士会が特に懲戒率が高いとはいえないようです。東京のみで会員の半数近くになるために報道で取り上げられることが多いことによる印象もあるようです。    

 また、東京の中で、野性的な印象の会(東京)とビジネス的な印象の会(東京第一)で懲戒率に目立った差はないようです。

 事例的に、戒告が61件を占めます。会費の滞納のように依頼者への迷惑にならないものもあります。ほかにも相手の代理人を差し置いて相手の本人に事情聴取をしたとか、酒気帯び運転での交通事故、交渉相手に詐欺などと書いた文書を送った、相手の代理人は法律の基礎も分かっていないと非難する文章を配った、拘置所の接見で写真撮影をした、交渉相手が国内にいないことを知りながら国内の勤務先会社に文書を送ったなども、少なくとも直接の被害を与えていない事例になります。

 このような直接の被害を与えていないものは98件中16件程度になっています。

依頼者の保証人になった反面で依頼者から借入をしたとか、夜間に女性依頼者の部屋に同行したというような微妙なものもあります。これは被害可能性のある事例にカウントしました。

 退会命令は所属弁護士会からの追放で、そこを含む弁護士会に再登録が認められれば業務が再開できます。除名の場合は日本弁護士会からの排除のため、それから3年間はどこにも登録ができません。

 5人で1700件の懲戒申し立てをしたのがどういう内容になっているかは、分かった時点でご報告します。

 また、問題の内容別にどのようになっているかも次回にレポートします。