前回は、1年間の不祥事(懲戒)を世代別、地域別に見ました。今回は、気の重い作業にはなりますがその内容を見てみます。

 264月まで1年の件数は全国で98件で、内容別に多い順は次のようになります。依頼者に対する不信行為が71件(ほぼ71%)、この内金銭にからむものが16件、事件の放置が23件です。

 複数カウントで、件数は次のようになりました。

   1対依頼者   71  2放置(未着手など) 23  3破産・債務整理 21 

   4金銭絡み   18  5その他     15  6対相手の不祥事 14
   7不当な報酬  12   8財産管理     7    9会費の滞納     3

     10刑事事件関係 2

  前回同様に、戒告を1点、3か月までの資格停止を3点、4か月以上の資格停止を4点、除名・資格停止を5点というポイントにし、事件数で割ると次のように重い処分になっている順序が分かります。

  1 会費の滞納    2 財産管理    3 刑事事件関係    

  4 事件の放置    5 対依頼者    6 金銭絡み

 会費の滞納は27か月から60か月分までの滞納3件で全部が退会命令になっています。

 財産管理については成年後見人、遺言執行者、破産管財人の場合の預り金に関するものが多くなっています。弁護士の日常としては、事件対応について依頼者の人と相談するようなソフトな作業が多いわけですが、金銭預かりの場合には別口座を作り銀行のような厳格な管理をし定期的に報告をするという切り替えが必要になります。

 刑事事件関係は2件で、2件とも自らの傷害事件や酒気帯び運転事故と、拘置所での接見のときに写真撮影したような問題が重なっています。                             

                      写真はスミレ

 事件の放置は、受任から1年以上が上げられています。放置して失踪とか、ごまかすために偽造書類を作ったというものまで多数です。

 依頼者に関する不祥事71件について、金銭に関するものが多い訳ですがほかにも、見通しのないような事件で着手金を預り目に見える進行もないとか、遺言執行者や契約立会人がその中の一人に対する訴訟を提起した、会社の顧問弁護士が会社への訴訟を提起した、債務者の意思は確認したが連帯債務者の意思を確認しないで和解をした、事件を事務員任せにしたなどです。

 自分を代理人にしなければ告発するという文書を送った人もいるそうです。はっきりした委任が決まらない段階で戸籍請求して戒告になっているケース、遺留分減殺請求の期間について注意を怠った、破産管財人が債権者委員会の文書によらない照会には答えなくてよいように破産者に助言したというような専門知識の不足か不注意によるものもあります。

 警察の意思を確認せずに警察と連名の立ち入り禁止の張り紙をした、遺言執行者が同じ事務所の弁護士に相続人の1人の代理人をさせた、雑誌社の記者に刑事事件の記録を渡した、なども不注意では済まない問題になります。

 その他、関係者の親族に警告文を送るとか、明渡し問題で○月○日までに片付けなければこちらで処分します(自力救済の予告)という文書を貼るなど、千差万別になっています。

 預り金をきちんとして定期的な報告をする、報酬について誰が見ても問題にならない額と請求方法にする、金銭に関してはとにかく慎重に扱って信頼関係を保つことが基本になるということ、また様々な期間や時効についてもどの辺に問題があるかだけは常に注意することなどが今回のまとめ、諌めになりました。

(これ以上の要約は難しいので、氏名を記載せずに98件をまとめた表は希望者の方にお分けします。)