前回に続き、会社・企業のコンプライアンスに関係する法律を概観します。
今回とり上げるのは法律です。法律を取りまく政省令、規則、通達もコンプライアンスには関連します。さらに判例や学説もコンプライアンスに含まれると書いている人もいますが、そこまではフォローできないため、今回は入りません。
分野として、①コンプライアンスに共通の土台のようなもの、その上の②法律の分野別のものと、③各業種ごとのものという3段階に分けました。
東証の一部上場会社の数は1700余り、その他上場していない大会社というものもあります。それぞれが取扱分野に応じた法令をもっています。例えば、医薬品の業種であれば薬事法、食品の業種であれば食品衛生法など、それぞれの業種の関係法令は上記で言えば③ですが、これも膨大なものになるため今回触れられません。
① 土台的なもの。
民法(M29) 人格、法人格、不動産(物権)、相続などやはり法律の基本です。
会社法(H17) 平成17年に商法から独立しました。会社の設立、株式、取締役、監査役、会計監査人の職務など、会社に関する基本法。取締役の内部統制に関する事業報告書の作成義務のようなものもありますが、全体的には規制というよりも制度設計というニュアンスです。
② 法律の分野別のもの
金融商品取引法(H18 大改正) 主に証券会社などの金融商品取引業者についてのものですが、「相場操縦の禁止」「内部者(インサイダー)取引の規制」「役員の株式の売買の報告義務」など多方面になっています。有価証券報告書は監査法人中心に作成して政府に提出されます。
国家公務員倫理法(H11) 公務員は「公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を私利私益のために用いてはならない」・・となっていて、民間の人と飲食をすることも憚られるようになってきました。
独占禁止法(H18から強化)、不正競争防止法(H5全部改正) 前者は不公正な取引の禁止、公共工事について刑法の談合罪と併用されるなどしています。後者は営業利益・秘密の濫用の禁止などで、特許法・商標法などの知的財産法のすき間を埋める形になっています。
この分野では商標の使用などについて争われることが多く、東京高裁に専門の部が設けられ、その後地裁に移りました。
製造物責任法(いわゆるPL法)(H6) 製造物に関しての無過失責任。被害者が認識したときから3年、製造から10年間となっています。
消費者基本法(S43) 国、政府、独立行政法人国民生活センターなどの構成が主なものです。
消費者契約法(H12) 現在11の団体が認められている「適格消費者団体」に「消費者団体訴訟」を認めています。アメリカのクラスアクション(集団訴訟)に習ったものといわれています。
この他、コンピューターへの不正アクセス禁止法(部外者の不正アクセスを禁止し、システム構築者にその防止措置を促す・H11)、個人情報保護法(区役所の戸籍の扱いなどが厳格化されました・H15)、男女雇用機会均等法(性的な言動に起因する問題に関する措置=セクハラ防止・S47)などがあります。
法人や企業のコンプライアンス・法務・監査の部門は、このような多方面の法律に目配りをしないといけないことになり、作業量も相当なものです。
以上について、読みなおしたり新たに読んだのは浜辺陽一郎(弁護士・早大法科大学院教授)、伊藤真(弁護士・受験法曹会の権威)、郷原信郎(弁護士・元検事)の各氏の本でした。企業のコンプライアンスのような実務知識を必要とする分野では弁護士の出番のようです。