借地非訟事件とは、借地について、建物の建替えや売却について裁判所の許可を受ける手続きです。
かなり前の数字では全国で1800件、そのうち最後の決定まで行くのが1割、残りの9割は和解や調停成立になっていました。
裁判所までいかない段階の借地に関する問題も少なくないと思います。
非訟事件は非公開。決定に対する上訴は2週間以内の特別抗告となります。高裁でも非公開の非訟事件で、判決でなく決定になります。
和解や調停で金額ががまとまらないときは、裁判所がえらんだ弁護士・不動産鑑定士・学識経験者でつくる委員会が土地の評価をして承諾料や地代の額についての意見を裁判所に出します。この費用は裁判所負担です。
借地非訟で最も多いのは①「建物再築の承諾許可請求」。借地契約の中にほとんど「貸主の承諾なく建物の改築や建替え(たてかえ)をすることができない。」という条項があります。それで承諾が得られないときに裁判所に建替え許可を申し立てる(必ず事前に=これは最重要です)。申立書はインターネットに裁判所の書式が載せられています。そこに書き込むことで大体はできます。借地の図面については「公図に手書きで書いたようなものでも結構」ということになっているので借地の測量図は不要です。
この建替え承諾料は都会地では土地評価額の3~4%くらいが標準です。地方では地価が安い分、この%は上がります。
次に、② 建物再築の中でも、木造から鉄骨やコンクリート造りにするようなときには「借地条件の変更許可」という非訟事件になります。鉄筋のような建物の許可を得るための条件は近隣で鉄筋などの建物が多くなりつつあるときというような条件があります。
条件変更の貸主への承諾料は、土地評価額の1割になっています(都会地では)。その後の契約期間は30年に変更されます。
借地権を第三者に売りたい場合は、③「譲渡承諾の許可請求」。借地借家法では「貸主に不利となおそれがない」ときに譲渡を許可することになっています。貸主の買い取り請求があったときを除いて原則的に許可になります。借地権の買取り希望者に経済状態の不安があるなどの具体的な心配があるときが「おそれがある」という場合ですが、具体的なおそれが必要です。
貸主に支払う譲渡承諾料は「借地権の1割」が多い。借地権割合が7割のときは承諾料はその1割なので、承諾料は土地価格の7%になります。
②の条件変更承諾料には③の建替えの承諾料を含んでいるので、同時に申立てれば承諾料の二重払いは不要です。
最後に、④ 借地権付き建物を「不動産競売で競落(けいらく)した人が承諾許可を求める請求」。貸主にとって「不利となるおそれがない」ときに譲渡を許可することや「承諾料が借地権の1割」になること、さらに「建替え承諾や条件変更承諾の申立てが一緒にできる」ことも③と同じです。
上記の③、④で新借主への譲渡を求められたときに、土地の「貸主は借地権の買取り請求をすることができる」。この申し立ては原則的に認められ、貸主が優先的に取得できます。
買取り金額は、借地権の評価額から貸主の譲渡承諾料にあたる1割を引いた額になっています。これを決定で決められた期間内に払うと土地の貸主が借地権を取得できます。
以上①~④のすべてで、契約期間が変更されます(20年または30年に)。賃料も変更されることが通常です。
ややこしいですが、借地非訟の種類、特に建替えや譲渡で貸主から承諾が得られないときに、非訟事件で原則は許可されることを抑えておけばよいと思います。