借地については、借地権の存否(無断譲渡による契約解除を含む)、地代の増額減額、それと建物の建替え、鉄筋用などへの目的変更、借地権の譲渡、競売で入手した借地権移転の承認の6の分野がある。

 最初の2つは民事裁判になり、後ろの4つは借地非訟事件になる。

なぜ「非訟」かというと、非公開の裁判で、裁判所が証拠集めの一部(現況や地価の調査など)を行うから。裁判の進行を早めるようにという規定もある(期日がどんどん入れられる)。このようなことは借地法(今は借地借家法)に定められた。昭和16年改正による、戦時立法というものの一つで、借地人保護の法律といわれている。

 借地人保護のおもなところは、契約更新や借地権の譲渡・建物の建替えについて原則として貸主に拒絶権がないこと。貸主側といえるところは拒絶権はないが承諾料の支払を受けられること、譲渡の場合に貸主に買い取り請求の選択権があることとなっている(非訟)
 借地人に対して裁判実務で厳しいのは賃料(地代)の不払いの場合で、1年以上も不払いをしていると借地権の解約が認められてしまい、高価な借地権でも消えてしまう(主に訴訟)。
 現在の借地借家法(平成3年)の借地には期限付き(定期・更新なし)や事業用借地権などもある。しかし、それまでの普通の借地権は従前の借地法の適用のままになっている。旧借地法は廃止されたが、新法に「それ以前の借地にはなお効力を有する」という附則があることによる。新法以後の契約も「単なる借地権」として契約したときは同じになる。
 例えば、建物の朽廃(老朽化のために建物としての機能を失ったとき)や無断譲渡による借地権の消滅、および地代の増減は単独では民事訴訟になるが、借地非訟でも付随的には判断の対象になっているのも分りにくいところ(訴訟、非訟)。





弁護士のKnowとHow(ノウとハウ)の記
 


 全国的にどうかは調べていないが、宗教法人が土地を貸している場合は結構多い。宗教法人その他で貸地を多く持っているところの代理をしている弁護士は借地に詳しいと思う。そうでない限り、以上のような仕組みを頭に入れておくのは簡単ではないかもしれない。

 最近になって、借地の扱いが難しいと改めて思うことがある。

 理由の一つは、借地権は債権であるから「消える」ことがあるということ。地代の不払い(1年を超えたときは厳しい)があり貸主が解約通知をした場合には借地権は消滅する。事前の催告(催促)が必要かどうかは契約にもよる(訴訟)。
 そのほかでむずかしい理由は、借地権は評価額が決まりにくいこと。

国税庁の毎年の「路線価表」に、土地の路線価と借地権割合(更地の7割か4割かというようなこと)が書かれている。これは主に相続財産の評価額を決めるための基準。。
 その土地の時価に借地権割合を当てはめ、地形などの修正をすると借地権の評価が大体わかる。上記の借地非訟事件で、貸主が買い取る場合の金額やそのほかの場合の貸主への給付金額(承諾料)は、弁護士・不動産鑑定士などでつくる鑑定委員会が裁判所に意見を出すが、更地価格を評価し、そこに借地権割合を乗じて借地権の価格や貸主への給付金額が決められる(都会地以外は計算方法が違うときがある(非訟))
 ところが、この基準が対外的にとおると考えると見当外れになることがある。
 建替えや譲渡の場合に貸主に承諾料を払うとしても、この額をいくらにするかで話がつかないと借地非訟裁判の確定までに1年近くは必要になる(上訴もできる)。
 借地権付きで建物を売る場合、買いたい人が銀行融資を受けるために銀行に相談すると、銀行は建物に抵当権を付けることになるが、前記のように借地権が消えてしまうリスクがあるので普通の担保評価にはならない。「『地代不払いがあったときは銀行に連絡する。』という確認書を地主さんからもらえれば」と言われることも多い。しかし、貸主は普通はこの確認書の作成には応じてくれない。
 そうすると、現金を用意できる買主か、銀行融資に問題のないといえる「貸主」に引き取ってもらうしかない。そうなると4割とか5割の減額になるときもある。建物はもちろん不動産で、借地権も不動産に近いところはあるが実際の譲渡にはこのようないろいろな問題が重なってくる。
 買主が決まっても、承諾の前に売買契約をして建物所有権移転登記をすると無断譲渡になって借地権が消滅するという判例がありますので要注意です(訴訟)。土地の貸主の承諾を条件とする建物売買予約の仮登記が限界です。