漫画連載が始まった当時、大きな話題になった。
少年マガジンで、こういうテーマをやるのかと。
そして今、アニメでこういうテーマをやるのか！と、当方の中で話題に。
本当は至極、当たり前でなければならないのに、だ。
今作は設定ありきなので、言ってしまうのですけれども。
この少女は耳が聞こえません。
その上、とても可愛い。
そんな子が小学校に転校してきたら、クラスはどうなりますか。
周囲の子どもらはどうなりますか。
建前や理想ではないから、ハッとすることばかり。
何より今作が他と一線を画するのは、その視点かと思う。
その描き方たるや、まさしく人間造形である。
もはや、アニメって何だろうと。
これ、実写ですよね、存在してますよね、この子らは。
そう思うほどの素晴らしさ！
少年をやらせたら抜群の入野自由（大好き）が、心底、上手い。
少女役の早見沙織は、難役を懸命に演じている。
『君の名は。』に続いて、今回もロケ地は岐阜。岐阜生まれの当方、ほくほく。
原作の大今良時は女性で、岐阜県大垣市生まれ。
そこが、この作品の舞台だから、ほくほく。
山田尚子監督は、『けいおん！』で一大バンドブームを作り上げた。
音楽の映画から、音のない世界で生きる少女の物語へ。
その繊細な描写たるや、眩暈がする。
散る花に葉に、彼らの視線にハッとする。実写を超えた描写かと思う。
恋心が、いじわるになって。
悪気という言葉もわからないうちに、人を傷つける。
これは、どちら側にいるかという問題ではなく。
周囲も含めて、少しずつ、対処法を間違えちゃう姿に現実味。
まさに、悲劇であろう。
実に重く深いテーマでありながら、心に残るのは爽やかな風のような時間。
親も含め、キャラクターが皆、いい。
皆、優等生じゃないから、いい。
とっても、とても意味のある映画だと思う。
大事にしたい作品だと思う。
映画感想とは関係がないのですけれども―
私事ながら中学の時に、耳の聞こえない友人がいました。
彼女は飛びぬけて絵がうまくて、漫画家になるのが夢でした。
周囲は普通に接していたように思います。
けれど、知らずに無神経に傷つけたり。
彼女は、本当は辛い思いをしていたかもしれません。
どこかで、彼女もこの映画を観ているかなと、ふと思い出しました。
スクリーン
The shape of voice
2016年・日本
監督： 山田尚子
原作： 大今良時
脚本： 吉田玲子
制作： 京都アニメーション
出演： 入野自由、松岡茉優、早見沙織、悠木碧、小野賢章、金子有希、石川由衣、藩めぐみ、豊永利行
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。