野田秀樹演出モーツァルト歌劇《フィガロの結婚》の感想 5/30フェスティバルホール(大阪) |   kinuzabuの日々・・・

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エス子「みなさーん!こんにちわーーー!」

中之島「こんにちは。今日は野田秀樹演出のモーツァルト歌劇《フィガロの結婚》の公演で大阪中之島のフェスティバルホールに来ています」

エス子「野田秀樹って誰ですか?」

中之島「演劇畑の劇作家、演出家で、演劇を中心に、歌舞伎などへも手を広げて活躍している人だそうです。実は私も名前を知ってますが、実際に演劇を見たことはありません」

エス子「演劇の人なんですかぁ。じゃあこのオペラ公演も演劇があるの?」

中之島「そのようですね。このオペラには歌の間にレチタティーボがたくさんありますから、そこに演劇の要素を入れてくるのではないでしょうか。私は笑いを取ってくれる劇を期待しています。では公演に行きましょう」


(5月30日の公演を見ました。以下ネタバレ注意です)
















中之島「いかがでしたか?」

エス子「ばぁっーーん!!!」

中之島「オチから始めちゃダメでしょ」

エス子「だってインパクトあったんだもん」

中之島「では最初から振り返りましょう。

  設定は、伯爵、伯爵夫人が外国人、フィガロ、スザンナなどが日本人。外国人はそれらしい服を着て、日本人は軽い羽織ものような服を着ていました。

エス子「外国人のおねえさんの服が水芭蕉みたいだったよ」

中之島「目立ってましたね。舞台は、立方体が3つ立っていて、松、梅、桜?で彩られてました。この立方体を使っていろいろ場面を作ってましたね。

エス子「なんで松竹梅じゃなかったんだろうね?」

中之島「竹は4幕で出て来たじゃないですか。木の棒をたてただけでしたが。木の棒を幕の代わりに使ったり、木ばさみも二本の棒だったり、棒が活躍してましたね」

エス子「庭師の人は棒を二本もってるだけなのに、音も出して枝を切るハサミみたいだったよ」

中之島「事前に思っていた通り、アリアとアリアの間がセリフの劇になっていて面白かったです。笑いどころも満載。大笑いというよりは、クスッという感じ。期待した大笑いはありませんでしたが」

エス子「結構笑った。面白かった」

中之島「難を言えば、日本語のところとイタリア語のところが入り混じっていて、日本語が突然イタリア語に変わったりするので、聴いていてわかりにくかったです。字幕はずっと出ていたんですけどね」

エス子「日本語で歌っていてもよくわからんから、どっちでもええわ」

中之島「全体的には、オペラと劇の組み合わせの試みとしては十分楽しめたと思います。また、歌とセリフのやりとりに違和感もありませんでした。一つの世界を作り出していたと思います」


エス子「で、ばぁっーーん!!!、は何?」

中之島「そうなんですよ。大筋はちょっと深刻な内容だと思いました。ケルビーノの辞令が赤色で召集令状みたいでしたし、塹壕のような奈落から、迷彩服のような着物の人たちが出てきて、かわるがわる銃を撃ちまくる。かつての日本軍を想起させるきな臭い雰囲気がありました」

エス子「それと、ばぁっーーん!!!とのからみがわからん」

中之島「最後に話が丸く収まったと思ったら、バーンと銃声がして、伯爵夫人が銃を撃ったらしい。私はよく見てなかったですが、伯爵夫人が銃を持っていました。これは、伯爵夫人がこれだけでは伯爵を許さないということでしょう」

エス子「まあね、もうちょっとなんかあってもいいわな。ちょっと謝ったぐらいじゃ許さへん」

中之島「これからもこういういざこざが続くのですよ。伯爵と伯爵夫人の不仲にフィガロとスザンナが振り回されるように、外国のいざこざに日本が巻き込まれて戦争が続く。そんなメッセージが込められているように感じました」

エス子「そこまで考えんでもいいと思うけどな」

中之島「初夜権もバルバリーナで行使しましたし、日本人は外国人のいいなりですね。といっても、これは私の勝手な想像で、こういうことを考えて構成したのかはわかりませんが。


中之島「さて、歌手はどうでしたか?」

エス子「伯爵の人は、結構威厳があったな。ケルビーノのひとはえらいごっついのに透き通った声でとてもよかった」

中之島「歌手は、伯爵のカロリスがよかった。歌も演技も雰囲気も伯爵にぴったり。次は、ケルビーノのエンゲルチェズ。演技はもう一つだったけど、『恋とはどういうものかしら』は体格から想像できないくらい透き通った声で最高だった。フィガロの大山さんはセリフの時の存在感がすばらしい」

エス子「女の人はもう一つやったな」

中之島「スザンナの小林さんの声は私には高音が耳障りで聴いていてつらかった。伯爵夫人のテオドラ・ゲオルギューはまあこんなものでしょうか。でも、演技はもうひとつ、というか、気合が入ってない感じに見えました」


中之島「音楽はどうでしたか?」

エス子「どえらい快調やった。目が回る~」

中之島「井上さんの指揮は、テンポが極めて速く、さわやかに駆け抜ける感じでとても気持ちよかった。オケも頑張っていました。劇も面白かったですが、この指揮とオケでオペラが引き締まって、オペラと劇の両方が生き生きとした上質の舞台になったのだろうと思いました」

エス子「舞台の人も生き生きしてたよ。外国人の歌手ぐらいか、乗ってなかったのは?」

中之島「それはこれから舞台を作っていくんでしょう。まだたくさん公演がありますからね」

エス子「これから作っていくのかぁ、初めの方で見る方がいいかと思ってたよ」

中之島「欧米では公演最初のプレミエに気合を入れてくるみたいですけど、こういうやり方もありかもしれません」

エス子「こうやってネタバレもできるしな」

中之島「そ、そうですね。ごほん、とにかくまたオペラに行きましょう!」

エス子「またネタバレを公開するために早めにオペラに行きましょーねー」