「スローターハウス5」カート・ヴォネガット・ジュニア著・・・★★★★
海外長編小説ベスト100から、60位の作品。
著者はアメリカの小説家(1922-2007)で現代アメリカ文学を代表する一人とされている。
本書は著者自身が体験したドイツでの捕虜生活と史上最悪ともいわれるドレスデン大空襲(アウシュビッツや広島、長崎の原爆に隠れあまり知られていないが、最大規模の爆撃で多くの死者を出した)を元に、主人公のビリー・ピリグリムが、戦時中、現在、トラルファマドール星と時空間を行き来し、戦争体験とその後の生活を描いている。
世の中に戦争を描いた作品は数多いが、本書のように著者自身の実体験とSFをミックスして描かれた作品は他に無いんじゃないだろうか。
そんな厳しい体験を元にしながらも、本書の作風はユーモアがあり、客観的視点からシニカルに物語を描き、それが逆に著者の戦争に対する批判と人間の運命に対する諦念といったものが強く伝わってくる。
それは作中に何度も出てくるフレーズ「そういうものだ」という言葉に表現されている。
- スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)/カート・ヴォネガット・ジュニア
- ¥756
- Amazon.co.jp