悩むアメリカ-すでに底が見えた「天安艦」事件  | 朝鮮問題深掘りすると?

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板門店で行われている朝米軍事会談(大佐級実務接触)について、お伝えします。5日に第6回接触が行われました。この問題について2度ほどかきましたがこの間、触れてこなかったので第4回接触のことも含めて現状をお伝えしようと思います。

http://ameblo.jp/khbong/entry-10592894561.html

http://ameblo.jp/khbong/entry-10618031338.html


現在断続的に行われている朝米大佐級接触は、「天安艦」事件の共同調査を実現するために北朝鮮側が要求している将軍級会談開催のための実務接触として行われているものです。これまでに6回開かれましたが、米側の不誠実な態度によってこれまでなんら成果を見ることが出来ないでいました。


北朝鮮側は将軍級会談の早期開催のために第4回接触でそれまでの北側の調査団による「天安艦」沈没の原因を独自調査するという提案を取り下げ、朝米共同調査団を構成し「天安艦」沈没の原因を共同調査するという画期的な新たな提案を行いました。


そして共同調査団の団長には朝米からそれぞれ高位将軍クラスを任命し、共同調査団は朝米からそれぞれ20~30人程度で構成する、調査期間は3~5日間、あるいは必要によってはより長く設定できるとし、調査対象としては事件発生現場と引き上げられた艦船、該当する証人及び物証、対象とする。調査方法としては現場検証、物証分析、証言聴衆、資料分析など可能なあらゆる方法を最大限利用するとし、米側は朝鮮人民軍側の要求するすべての資料を提供し、陸路通行と身辺の安全などの便宜を図るとしています。そしてこの提案に対する態度は「天安艦」事件の真相究明に対するアメリカの最終的立場を確認させてくれるというものでした。


しかし米側は第5次接触でも立場をはっきりと示しませんでした。そして第5次接触で朝鮮人民軍側は調査団の名称、団長の階級、人員の数などをそれぞれの立場で便利に定めできるだけ早く調査に入ることを提案しています。第4次接触での提案を米側はいっそう受け入れやすくするために大幅に修正したということです。


そして第6次接触が5日に行われたというわけです。ところが米軍側は人民軍側の提案に対する返答をするわけでもなく、米側の「調査結果」を一方的に通報するための朝米将軍クラスの会談から開催しようという、非現実的な要求を繰り返すばかりでした。人為的な障害が引き続き会談の進行を妨げたのです。


元来、この朝米軍事接触は、北朝鮮が「天安艦」事件が北朝鮮の仕業だとする李明博政権のでっち上げを先頭に立って支持し持ち上げた米軍側のいわゆる「調査結果」を微塵も認めることは出来ないとして、国防委員会の特別調査団を派遣し独自調査、もしくはそれがだめなら朝米合同調査を実施することで事件の真相を満天下にさらすために朝米将軍級会談を開催することを要求し、米側もそれを認めたことから朝米大佐級実務接触が実現したのです。


したがってまず合同調査を実現することが最良の選択です。「天安艦」事件の真相を科学的に客観的に明らかにすることは、それを北朝鮮の仕業だと決め付けたアメリカが疑問の余地無く立証する義務を果たすことでもあります。それを濡れ衣を着せられた北朝鮮側がすすんで合同で調査しようというのですから、米側が確証を持っているのならばはっきり言って北朝鮮の申し入れはアメリカにとっては願ってもっても無いことのはずです。にもかかわらず米側の中佐結果を最終的結論として一方的に北朝鮮側通告するという米側の主張は到底納得できるものではありません。北朝鮮側は第6回接触で「天安艦事件の真相を科学的、客観的に明らかにすることについての双方の合意に符合するように先調査、後会談の開催という原則を守るのは問題解決の初歩的順序」だと主張していますが至極当然な主張でしょう。


「天安艦」事件が北の仕業だと自信を持って主張しているアメリカにとって、北朝鮮の言い分はしめたものであるはずです。この機に北朝鮮に決定的ダメージを与えることが出来るのですから。
なのになぜ消極的な逃げの姿勢を取るのでしょうか。考えられる原因はただ一つ、「天安艦」事件の真相がばれるのを防ぐため、つまり「北の仕業」というでっち上げた結論の化けの皮がはがされるのがいやだからでしょう。それ以外に考えられません。仮にそういうことにでもなったらそれは李明博政権の命取りになり、アメリカにとってはその対北朝鮮政策の崩壊さえもたらしうる大ダメージを受けることになります。


朝米将軍クラスの軍事会談を開くための大佐級実務接触はいみじくも、誰が「天安艦」事件の真相究明に熱心であり、誰がそれに消極的であるのかをはっきりと示す結果になっています。


しかし北朝鮮側の真相究明にかける意気込みには恐れ入ります。米軍のあまりにも退歩的な、姿勢にもかかわらず、第6次接触では新たに再度の妥協案を示しました。その妥協案とは調査団の名称問題をはじめ現地調査と関連した包括的なもので具体的に見れば、米軍側が北側調査団の事件現場検証と軍事基地視察問題の受け入れを嫌がっている実情を勘案して、事件解明に必要な魚雷推進体、魚雷設計図などのような「物証」を板門店に持ち込み、双方が精密検査をした後に将軍級会談を開き「天安艦」事件の真相を論議しようという画期的なものです。


つまり北朝鮮側は独自調査団の派遣による独自調査→朝米合同調査→板門店での「物証」に対する朝米合同調査というように大胆な妥協案を断続的に提案したということです。


朝鮮中央通信は第6次接触でのこの画期的提案を「最終提案」だと伝えています。実際、米側がこの案を受け入れない場合、それは「天安艦」事件を「北の犯行」だと決め付けた米側の調査がまったくのでっち上げであったことを自ら暴露するようなものです。そう考えない限り、米軍側が北朝鮮との合同調査を恐れている謎が解けません。
米軍側はこの提案について解答を控え上部に報告して討議するとしただけでした。


ちなみにこうした米側の対応は「天安艦」事件の朝米合同調査問題に関する実務接触で見せた特徴的な態度だといえます。まったくの逃げ腰です。次回の接触は10月20日ごろになるということです。そのときにも米軍が何らかの答えを出さないとき、北朝鮮はどう出るでしょうか。アメリカもどう対処すればよいのかと頭を悩ますことでしょう。