化粧品犬です。
今回は、2017年夏季限定製品である、TSUBAKIオイルエクストラクールシャンプー・コンディショナーの解析の2回目をお送りします。
今回は シャンプー処方解析編です。
前編の製品概要編はこちら。
資生堂 TSUBAKIオイルエクストラクールシャンプー・コンディショナーの解析1 製品概要編
新製品とはいっても、この製品は2016年夏の製品と、処方的にはほぼ同じ(^_^;)
最大の違いは容器と名前です。
この解析編でも、2016年夏の製品と比較しながら進めていきます。
ちなみに2016年夏の製品の関連エントリーはこちらです。
資生堂TSUBAKIクールシャンプー・コンディショナーの解析1 製品概要編2016.5.1追加
資生堂TSUBAKIクールシャンプー・コンディショナーの解析2 シャンプー解析編2016.5.3追加
資生堂TSUBAKIクールシャンプー・コンディショナーの解析3 コンディショナー解析編2016.5.5追加
いつもの様に、裏面の処方を整理します。
今回は対象品のほかに、先に挙げた2016年に夏季限定で発売されたTSUBAKIクールシャンプーの裏面も整理しました。
分かりやすいように末尾にそれぞれ2016、2017とつけました。
原料の配合順は裏面のまま変えずに、機能毎にパート分けし、共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。
九通の成分は、共通欄に○印をつけました。
こんな感じになりました。
成分的には、両者全く同じですね。
しかし細かく見ると、2017年処方では、セラミド類似オイルのラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)が減らされ、その分ツバキ油が増えてるいるようです。セラミド類似オイルは値段が高いので、これはコストダウン目的かな。
ではパートごとに見て行きましょう。
まず洗浄剤のパートを見てみましょう。
今回の2017夏限定のクールシャンプーは、去年のオイルシャンプーと全く同じで、普通のラウレス硫酸系です。
ごく普通にラウレス硫酸Na主剤に、そこそこ低刺激な両性洗浄剤のコカミドプロピルベタインを併用し、増粘剤のラウリン飯PEG-2を加える組み合わせですね。
また去年も書いたのですが、この製品は、「資生堂シャンプーのアイデンティティ」とも言える、AMT(ココイルメチルタウリンNa又はその類縁体)が配合されていません。
資生堂シャンプーでAMT(ココイルメチルタウリンNa又はその類縁体)が配合されていのは、このシリーズしか見た事が無いです。
メントールや紫外線吸収iでかなりのコストがかかっているはずなので、コストダウンの為と思われますが、驚きです。
この製品は、「メントールとトウガラシエキスでガツンと効かせる」ということに重点を置いているということなのでしょう。
次はコンディショニング剤、オイル類のパートです。
メインのコンディショニング剤は、最近では再流行のグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドのみであり、カチオン性の成分はそれだけですね。普通のTSUBAKIシリーズは、他のポリクオタニウムやらカチオンやらを組み合わせて、丁寧に味付けをしてきたので、やや作りが荒くなった感があります。
これも、メントール、トウガラシエキスや紫外線吸収剤でかかる余計なコストを回収するためなのでしょう。
これだけガツンとメントールを効かせるためには、結構な量を配合しているはずで、かつメントールや紫外線吸収剤はオイル成分として働くので、ある意味贅沢な作りと言えるでしょう。
2017年処方hでは、セラミド類似オイルのラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)が減らされ、ツバキ油が増えてるいるようですね。セラミド類似オイルは高いので、若干コストダウンしたのでしょう。
次は防腐剤のパートです。
このパートではサリチル酸が目を引きますが、サリチル酸は昔から使われている素材であり普通の組み合わせです。
資生堂さんは実はノンパラベンの製品がとても多いのですが、この商品もノンノパラベンです。
次は増粘剤、保湿剤、香料等のパート。
珍しい原料ではないのですが、他のTSUBAKIシリ−ズには無い特徴的な成分として、低刺激な保湿成分ヒドロキシエチルウレアノ配合と、逆に刺激性成分のトウガラシエキスの配合が目を引きます。
トウガラシエキスはメントールと共に育毛剤としても使用されているので(効能成分として認可されている)、毛が抜けるとかの心配は無いですが、頭皮の刺激がイヤな人にはおすすめできないですね。
あとは、他のTSUBAKIシリーズと同様に、オリジナル成分「椿麹S」(アスペルギルス/ツバキ種子発酵エキス+ソルビトール)の配合が目立ちます。
椿麹Sは2015年から使われている、現在のTSUBAKIを代表する保湿成分ですね。詳しくは下の原料ごとのコメント欄をご覧ください。
それ以外は、メントール・トウガラシエキス・紫外線吸収剤にかかる余計なコスト(^_^;) を捻出するためか、エキス類の配合は控えめになっています。
解析は以上です。
2016年にこの製品が出たときは、新しい一歩か、単に退化したのか・・・資生堂さん自身も注目していているのかも?と書いたのですけどね。使用感もメントールをガツンと効かせる系で、客を選びそうだし、心配でしたが。
しかし、今年全く同じ組成で製品化したとこを見ると、去年はこの製品は売れたんですね。
個人的には良かったです(^_^;)
これから夏の定番製品となっていきそうです。
あとは例によって、原料ごとのコメントを書いていきます。
洗浄剤
・ラウレス硫酸Na:シャンプーでよく使われる洗浄剤。ネットでの評判は悪いが、洗浄力は強めであるものの、刺激はそれほどは高くない。そもそも、ラウリル硫酸Naという刺激の強い洗浄剤の、安全性を改良した洗浄剤。
下記エントリー参照です。
花王 メリットシャンプーの解析(前哨編2 ラウレス硫酸塩の安全性)
・コカミドプロピルベタイン;そこそこ安全性が高く、価格が安い両性洗浄剤。
・ラウリン酸PEG-2:若干泡は立つのですが、主には増粘剤として働く原料です。
コンディショニング剤、オイル類
・メントール:よく知られている清涼剤。育毛効果もあったりする。
・グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:昔から使われているカチオン化ポリマーの1つだが、最近再度よく使われるようになっている。
・ツバキ種子油;TSUBAKIの語源となっている素材。いわゆる椿油のこと。不飽和結合としてオレイン酸を多く含むため、比較的酸化されにくいという性質がある。
・ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル):アミノ酸を芯にして作られたセラミド類似オイル。セラミドと同じくラメラ液晶形成能を持ち、毛髪の層状構造(CMCや18MEA)の強化効果もある。抱水性が高く、保湿性に優れる。
・ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン:UVA・UVBの両方を吸収する、紫外線吸収剤。日本では2007年に使用か許可されており、安全性については最新のレベルで精査され充分に確認されている素材。
・トコフェロール:ビタミンEの別名。油溶性ビタミンで、べったりした使用感の油だが、抗酸化性に優れる。
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防腐剤
・サリチル酸:殺菌作用が強く角質溶解作用もある防腐剤。化粧品の防腐剤としては0.2%以下の添加であるが、医薬品用の角質溶解剤としては、2〜50%配合の軟膏が作られている。また化粧品や医薬部外品のふけ防止用ヘアトニックや育毛用のヘアトニックの他、ニキビ防止用の製品人も用いられることがある。
・フェノキシエタノール:比較的低刺激な防腐剤。ナチュラル系の化粧品に使用される事も多い。
当ブログでは、安全性については以下のエントリーで詳しく書いてます。
・安息香酸Na:広く使われている、比較的低刺激な防腐剤。食品にも使われる。
保湿剤、増粘剤、香料類など
・水:精製水のこと。化粧品では通常、イオン交換水が用いられている事が多い。
・ソルビトール:糖系の天然保湿剤。資生堂のオリジナル成分「椿麹S」のSは、ソルビトールを意味しています。
・ヒドロキシエチルウレア:尿素にヒドロキシエチル基をつけて刺激性を改善した素材。眼刺激・皮膚刺激が低く、保湿性に優れている。非イオン性であるが、毛髪や皮膚に吸着・補修を期待されて配合されることが多い。
・乳酸:pH調整剤。AHAの一種でも有り、pHによってはピーリング効果を示すこともある原料。
・ローズマリー葉油:抗菌効果や抗酸化効果により、防臭や抗シワ効果などで知られるエキス。育毛、血流促進効果も知られている。
・トウガラシエキス:育毛剤やスカルプシャンプーによく使われているエキス。刺激が強く血流促進効果が高い。
・アスペルギルス/ツバキ種子発酵エキス液:最近のTSUBAKIは保湿剤「椿麹S」配合、というのが売りです。「椿麹S」とは、「椿麹」と「S」の混合物という意味なのですが、このうち「S」は糖系保湿剤のソルビトールを指しています。処方からわかるように、この処方はソルビトールが多く配合されていますね。
残った「椿麹」が指しているのが、このアスペルギルス/ツバキ種子発酵エキス液です。
このアスペルギルス/ツバキ種子発酵エキスですが、昔は資生堂のHPの中に特集ページがあり、そこには「椿油を絞ったあとの豊富な美容成分が残っている椿の種に、麹菌を加えて発酵させ、そこから抽出したエキス」
と書いてあったのですが、現在は削除されているようです。
代わりに2015年にでたプレスリリースのリンクを載せておきます。
「椿麹つけこみ美容※1」で髪と地肌をWケア 「 一新、TSUBAKI 」 2015 年 3 月下旬発売
・DPG:汎用的な保湿剤。各種成分を溶かす能力も高い。やや抗菌性がある。ネットでは安全性について疑問の声もあるが、ほぼ誤解だと思われる。詳しくは以下のエントリーに書きました。
牛乳石鹸 カウブランド 無添加シャンプー・トリートメントの解析 番外編 DPGの安全性
・硫酸Na:無機塩の一種。シャンプーでは製剤と増粘させる食塩の代わりに用いられることが多い。
・クエン酸:pH調整剤。実はクエン酸はピーリング効果のあるAHAの一種でも有り、濃度やpHによっては、ピーリング効果を発揮する。
・EDTA-2Na、EDTA-3Na:キレート剤、製剤のpHを維持し、酸化や着色を防ぐなどの効果がある。
・乳酸アンモニウム:乳酸のアンモニウム塩で、キレート剤や保湿剤として利用される。
・エタノール:エタノールです。過去には変性剤を加えた変性アルコールが使われていましたが(変性すると酒税が回避されて安くなった)、税制が変更されて変性アルコールが値上がりしたため、現在は変性アルコールは使われず、ただのエタノールを使うのが主流になっています。
・ポリウレタン-46:資生堂さんがカラー用のヘアシャンプー等でよく試走している成分で、髪に吸着して平滑性を向上させるポリマーです。
・BG :多価アルコールとも呼ばれる、グリセリンの親戚のような保湿成分です。若干の抗菌性があります。