資生堂 TSUBAKIダメージケア(2016)の解析2 シャンプー処方解析編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
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化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

 

今年はTSUBAKI発売10周年の記念イヤーなので。
資生堂さんは、一気に5品発売!という快挙?暴挙?に出ています(^_^;)

 

今回は、そのうちの既存品のリニューアルとなる、TSUBAKIダメージケアシャンプー・コンディショナーの解析の2回目として。

シャンプー処方の解析を行います。

 

このシャンプーですが、リニューアルでもあり、基本的には旧製品と似ています。
しかし使って見ると結構違う。
粘度が高く、パールがギラギラ。

すすぎ時のきしみも旧製品より強いです。
資生堂さんからのコメントは「ツヤを重視したインナーモイスト処方に変更」
と言うだけです。

 

TSUBAKIの一番人気製品であるダメージケアシャンプーにどんな変更が加えられたのでしょうか?
今回はそこの所を中心に、解析して行きます。

 

では早速、処方の解析を始めます。
いつもの様に、裏面の処方を整理します。
今回は、リニューアル前の製品(旧製品)の裏面表示も整理し、新製品と併記してみます。
原料の機能毎にパート分けし、パート内の表記順番は裏面のまま変えずに記入しています。また共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。

こんな感じになりました。
いつも小さい写真をサムネイルとして表に置いているのですが、今回はサムネイルみたいな小さい写真だと商品の見分けがつかないです(^_^;)

 

では、洗浄剤とコンディショニング剤のパートを、まとめてみていきましょう。
TSUBAKIと言えば限定製品を除いて

   ラウレス硫酸ナトリウム+コカミドプロピルベタイン

というトイレタリーの王道に、資生堂らしく少しココイルメチルタウリンNa(いわゆるAMT)かココイルメチルタウリンタウリンNa(いわゆるW-AMT)を加えるという処方だったのです。

 

しかし今回は、インナーモイスト処方と言うことで、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)という、毛髪の層状構造(CMCとか18MEAとか言われる、セラミドのような部分)を強化する機能性オイルを使ってるんですね。これが間違いの元というか(^_^;)
このラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)自体は変なオイルでは無くて、セラミドに似た効果を持つ油(セラミド類似成分)として、食品メーカーでありアミノ酸メーカー、化粧品原料メーカーでもある味の素が、15、6年前から販売している化粧品原料です。グルタミン酸というアミノ酸を芯にして、油をつくっているところが、味の素らしさなわけです。まあ、いまではジェネリック的な類似原料も、他社に作られているので、TSUBAKIもそちらかもしれませんが。

しかしラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の導入で、このTSUBAKIはアンバランスゾーンに突入(^_^;)してしまったようです。
まず、この油は結構、泡立ちを阻害します。なので、それを補うために、泡立ちは良いけれど刺激や脱脂力も強いラウリル硫酸Naやラウリン酸を配合して補っちゃったんですね(表中の洗浄剤のパートを見てください)。
巷では、ラウレス硫酸Naが問題なりますけど、ラウレス硫酸Naは脱脂力は強いけど、刺激はそれほどでは無いですからね。そのラウレス硫酸の原型で、ラウレス硫酸Naの低痔激化を受け持っている、ポリオキシエチレン部分が無いのがラウリル硫酸Naです。
ラウレス硫酸Naと書くと似ている気がしますが、ラウレス硫酸Naの物質名は「ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Na」ですからね。

ここから低刺激化部分である「ポリオキシエチレンエーテル」部分を除いた物が、文字通りラウリル硫酸Naです。
昔は結構ヘアシャンプーに使われてたけど、今時あまり使われてないんですけどね(^_^;)
最近のラウリル硫酸Naの用途は、ハウス清掃用途を別にすれば、主にヒトパッチ試験の陽性対照だと思ってました(ヒトパッチ試験には、絶対に刺激が出る成分を一つ混ぜる)。しかしこの役割も、刺激が強すぎるので、若干刺激弱めだけど刺激のある、ラウリン酸Naに置き換えられる事が多いのです。しかし、そのラウリン酸もこのTSUBAKIに配合されてるといる。。。。もう、ギャグなの(^_^;)
まあ、ラウリン酸は弱酸性のシャンプー中では中和されていない状態なので、ラウリン酸Naの時ほどの尾アワーは無いはずですけどね。
とにかく、ヒトパッチ試験の陽性対照を2品も追加(^_^;)です。
そして低刺激なココイルメチルタウリンタウリンNa(いわゆるW-AMT)の配合順位は下がり、量も減らされているようです。
しかしさすが資生堂さんというか、おそらくヤバイ洗浄剤は配合量をコントロールしているのか、刺激を感じさせるような事はありません。

ただ、ヤバイ洗浄剤の多用は、すすぎ時のきしみ感の強さに現れています
マシェリにも使用しているカチオンポリマーである、(プロピルトリモニウムクロリドアクリルアミド/ジメチルアクリルアミド)コポリマーを新規採用したりしていますが、足りないようです。


ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の導入でだいぶバランスをくずしました。
しかも、ツヤのアップも個人的には感じられなかったです。

 

また、やけにパール光沢がぎらついた件については、パール化剤のジステアリン酸グリコールが増量されてますね。
見た目からリニューアル感を出そうとしたのでしょうか。

 

 

次は防腐剤のパート。
資生堂さんと言えば、実はノンパラベンに力を入れています。
今回も防腐力アップを図っているようですが、あくまでパラベンは使わず、サリチル酸を使っています。
サリチル酸も防腐性や刺激性はパラベンと似た成分です。

ついでにイボが取れるとか、角質溶解効果もあるのがちょっと怖いですが、化粧品の配合範囲ならば怖くありません。

 

保湿剤のパートはほぼ変更が無いので省略します。
興味ある方は最後の原料についてのコメントでフォローしてください。


全体としてですが。
うーん、、、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を配合するために、とんだ大惨事ですね。
この原料、、、新成分でも無いし、配合する必要あったのかな(^_^;)
今後のTSUBAKIの展開が不安です(^_^;)

 


あとは、パート毎の成分についてコメントを書いていきます。

 

洗浄剤
・ラウレス硫酸Na:シャンプーでよく使われる洗浄剤。ネットでの評判は悪いが、洗浄力は強めであるものの、刺激はそれほどは高くない。そもそも、ラウリル硫酸Naという刺激の強い洗浄剤の、安全性を改良した洗浄剤。
下記エントリー参照です。
花王 メリットシャンプーの解析(前哨編2 ラウレス硫酸塩の安全性)
http://ameblo.jp/kesyouhinken/entry-12019765318.html
・コカミドプロピルベタイン;そこそこ安全性が高く、価格が安い両性洗浄剤。
・ラウリン酸PEG-2:若干泡は立つのですが、主には増粘剤として働く原料です。
・ラウリン酸:ココナツオイルやパーム核油等から得られる脂肪酸の一種で、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムで中和されることで、泡立ちが良いラウリン酸Naやラウリン酸Kとなる(ただし、やや刺激がある)。この製品のようにシャンプー全体のpHが弱酸性の場合には、完全には中和されず、ある程度「油」としての機能をもち、エモリエント効果や泡立ちにコクを持たせる効果を発揮する事が多い。このような使われ方を過脂剤とも言う。
・ラウリル硫酸Na:ラウレス硫酸Naの原型である、泡立ちのとても良い洗浄剤。ラウレス硫酸Naよりも刺激が強く脱脂力も強いため、あまり使われていない。その刺激の強さから、パッチ試験の陽性対照として使われていたほどである(パッチ試験実施時には、試験の有効性を確認するため、絶対に刺激が出る陽性対照サンプルと、絶対に刺激が出ない生理食塩水が試験される)。しかし肌に対するダメージが強すぎるため、その陽性対照役も最近ではラウリン酸Naに変更される事が多い。
・ココイルメチルタウリンタウリンNa:その昔の資生堂が使っていたAMT(ココイルタウリンNa)の改良品で、ココイルメチルタウリンを、水酸化ナトリウムで無くタウリンで中和して作られた洗浄剤。W-AMTとも言われることがある。性能はAMTと類似している。

 

コンディショニング剤、オイル類
・ジステアリン酸グリコール:固形油の一種で、パール化剤。シャンプー中で微なに粒子となって析出し、シャンプー液にパール光沢をつける。
・グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:昔から使われているカチオン化ポリマーの1つだが、最近再度よく使われるようになっている。
・(プロピルトリモニウムクロリドアクリルアミド/ジメチルアクリルアミド)コポリマー:あまり他では効きませんが、資生堂と三菱化学さんの共同開発原料のようです。現在の資生堂製品ではマシェリに使われています。、
2009年ぐらいにはTSUBAKIにも使われていたようで(現在は抜かれてる)、その時の資料に詳しい説明が載ってます。
http://www.mylifenote.net/2009/03/21/200903sise.pdf
上記リンクから内容を抜粋すると以下の通りです。
(文中では(プロピルトリモニウムクロリドアクリルアミド/ジメチルアクリルアミド)コポリマーは、「(PA/MA)コポリマー」をと略称されています。)

( (プロピルトリモニウムクロリドアクリルアミド/ジメチルアクリルアミド)コポリマーは、)資生堂と三菱化学株式会社が共同で開発し、艶成分の吸着向上に適した、新しいシャンプー・ コンディショナー配合成分※7 です。「(PA/MA)コポリマー」を配合することにより、ダメージを受 けた毛髪表面を、健康的な髪に近い状態に整え、艶成分を効率良く吸着させるため、毛髪のなめら かさや艶を向上させます。

内容を読むと、現在のマシェリのヘアマニュキュア効果の源になっている原料のようです。
・アルギニン:髪や肌に吸着しやすい、塩基性アミノ産の一種。安全性が高いため、化粧品ではpH調整に使われる事が多い。血行促進効果や、ビタミン並みの細胞活性化・創傷治療効果を有し、抗酸化抗糖・化効果も発揮する。必須アミノ酸では無いが、生体内に広く分布しており、胎児の成長に必要なことから、生命の根幹に関わるアミノ酸であることが示唆される。味は苦い。・ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)
・ツバキ種子油;TSUBAKIの語源となっている素材。いわゆる椿油のこと。不飽和結合としてオレイン酸を多く含むため、比較的酸化されにくいという性質がある。
・ジメチコノール:水酸基が末端に結合している、ちょっと変わったシリコン油。性質は、通常のシリコン油と似ている。
・トコフェロール:別名ビタミンE。油性成分ですが、酸化安定剤として働きます。

 

防腐剤
・サリチル酸:殺菌作用が強く角質溶解作用もある防腐剤。化粧品の防腐剤としては0.2%以下の添加であるが、医薬品用の角質溶解剤としては、2〜50%配合の軟膏が作られている。また化粧品や医薬部外品のふけ防止用ヘアトニックや育毛用のヘアトニックの他、ニキビ防止用の製品人も用いられることがある。
・フェノキシエタノール:比較的低刺激な防腐剤。ナチュラル系の化粧品に使用される事も多い。
当ブログでは、安全性については以下のエントリーで詳しく書いてます。

プロピルパラベンの安全性についての文献を紹介
・安息香酸Na:広く使われている、比較的低刺激な防腐剤。食品にも使われる。


保湿剤、香料類等
・水:精製水のこと。化粧品では通常、イオン交換水が用いられている事が多い。
・ソルビトール:糖系の天然保湿剤。資生堂のオリジナル成分「椿麹S」のSは、ソルビトールを意味しています。
・塩化Na:いわゆる食塩と同じ物。シャンプーの種類によっては、少量の塩化Naの配合で増粘することが出来る。
・アセチルヒアルロン酸Na(スーパーヒアルロン酸):天然|l1来のヒア ルロン雌にアセチル基を導入することにより、皮膚への親ホl1性が高め、使用感と角質柔軟効果を向上させた素材です。
・加水分解コンキオリン:アコヤ貝貝殻または真珠から得られたタンパク質に酸やアルカリを加えて分解して、水に溶けるようにした、水溶性のタンパク質。吸着性に優れた成分で、皮膚や髪につやとさっぱり空いた感触を与えます。
・アスペルギルス/ツバキ種子発酵エキス液:最近のTSUBAKIは保湿剤「椿麹S」配合、というのが売りです。「椿麹S」とは、「椿麹」と「S」の個雲号物という意味なのですが、このうち「S」は糖系保湿剤のソルビトールを指しています。処方からわかるように、この処方はソルビトールが多く配合されていますね。
残った「椿麹」が指しているのが、このアスペルギルス/ツバキ種子発酵エキス液です。
アスペルギルス/ツバキ種子発酵エキスですが、資生堂のHPの中に特集ページがあります(^_^;)
それによると、
「椿油を絞ったあとの豊富な美容成分が残っている椿の種に、麹菌を加えて発酵させ、そこから抽出したエキス」
とのことです。
特集ページ
http://www.shiseido.co.jp/tsubaki/about/effect.html
・硫酸Na:無機塩の一種。シャンプーでは製剤と増粘させる食塩の代わりに用いられることが多い。・DPG:汎用的な保湿剤。各種成分を溶かす能力も高い。やや抗菌性がある。ネットでは安全性について疑問の声もあるが、ほぼ誤解だと思われる。詳しくは以下のエントリーに書きました。

牛乳石鹸 カウブランド 無添加シャンプー・トリートメントの解析 番外編 DPGの安全性
・クエン酸:pH調整剤。実はクエン酸はピーリング効果のあるAHAの一種でも有り、濃度やpHによっては、ピーリング効果を発揮する。・EDTA-2Na、EDTA-3Na:キレート剤、製剤のpHを維持し、酸化や着色を防ぐなどの効果がある。
・BG :多価アルコールとも呼ばれる、グリセリンの親戚のような保湿成分です。若干の抗菌性があります。