マスメディア報道のメソドロジー

マスメディア報道の論理的誤謬(ごびゅう:logical fallacy)の分析と情報リテラシーの向上をメインのアジェンダに、できる限りココロをなくして記事を書いていきたいと思っています(笑)

豊洲 地下空間



これまでにマスメディアを通して様々な【誤謬 logical fallacy】【偽説 untrue statement】が飛び交ってきた築地市場豊洲移転問題ですが、最近も誤謬・偽説の類ががとどまることを知りません。この記事ではそんな誤謬・偽説の具体例について整理して示したいと思います(冒頭写真:共産党都議団より引用)。



共産党とワイドショーによる豊洲市場の悪魔化

【情報歪曲 distortion】によって政敵を【悪魔化 demonization】して大衆に訴えることで政治的勝利を得るという手法は、土井社会党マドンナブーム、細川連立政権、小泉郵政選挙、鳩山民主党政権交代などにおいて採用され、熱病ともいえる一時的ブームを日本政治にもたらしてきました。この悪魔化は大衆の不満転嫁の対象を造る【スケープゴート化 scapegoating】のメソッドとしても利用され、事案の評価はともあれ、例えば江川卓氏、沢尻エリカ氏、亀田大毅氏、小保方晴子氏、佐村河内守氏、野々村竜太郎氏、乙武洋匡氏、宮崎健介氏、ショーンK氏、ベッキー氏、舛添要一氏などがマスメディアから極悪人認定され、様々な未確認の否定的情報と相まって連日にわたり日本中からヒステリックな批判を浴びました。このように悪魔化は、大衆に対して爆発的に浸透していく【風評 misinformation / rumor】の暴走を誘発する【心理操作 Psychological manipulation】のテクニックと言えます。豊洲市場問題においては、この悪魔化が豊洲市場と東京都を対象にして行われ、非科学的な風評が世間に溢れています。

豊洲市場の風評を拡げる原動力となったのが共産党と一部マスメディアのワイドショーであり、その内容は次に示す2つの[共産党の主張]に代表されます。

(a-1) ベンゼン・シアン化合物など大量の有害物質がしみ込んでいる東京ガス豊洲工場の跡地に生鮮食料品を扱う市場を移転させることは不適切
(a-2) 東京都が自ら決めた盛土対策や地下水管理も不完全で新たな土壌汚染も発見されている豊洲に移転させることは土台無理な話



このうち、(a-1)の主張は、他人の使った箸を使わない日本固有の「不浄」の意識と類似しています。箸を衛生的に洗えば再利用が可能なように、ガス工場の跡地であっても環境基準をクリアすれば生鮮食料品を扱う市場を移転させることは可能であり、それを「不適切」というのは明らかに非論理的です。また豊洲市場問題には最初から生鮮食料品の「食の安全」問題は論理的に存在しません。万が一市場の空気がベンゼンで汚染された場合には、まずは人間の健康被害に関する環境基準に抵触して市場が閉鎖されるため、その時点では表面に付着した水が環境基準の1/1000未満だけ濃度上昇するにすぎない生鮮食料品は、まったく安全なまま他の場所に移されることになります。したがって、「生鮮食料品」というキーワードで「食の安全」問うのは完全に非論理的であると言えます。

一方、(a-2)に関しては、専門家会議で「盛土対策は不必要である」ことが確認されたこと、「地下水管理システムが不完全であること」は立証されていないこと、新たな土壌汚染は土壌浄化のテンポラリーなプロセスである可能性があることなどから、これらを根拠に「土台無理」とするのは、【軽率な概括 hasty generalizations】であることに他なりません。

ここで、帰納的な科学的検討により豊洲市場はほぼ安全であることが示されているにもかかわらず、共産党や一部マスメディアを含む移転反対派が、不完全な根拠を基に不合理に「不適切」「土台無理」という結論を導いていることから何がわかるかというと、彼らの主張には客観的な【論理 logic】ではない主観的な【倫理 ethics】(個人の価値判断)が関与しているということです。ここに関与している倫理とは具体的に何かと言えば「豊洲移転は悪いことである」という価値判断に他なりません。この価値概念を適用することで(a-1)(a-2)の言説は、それぞれ次に示す(b-1)(b-2)の言説に置き換えることができます。

(b-1) そもそもガス工場があったような豊洲に市場を移すことは悪いことである。
(b-2) 豊洲に市場を移すことは悪いことなので、豊洲に市場を移すことなどできるわけがない。

このうち、(b-1)の言説は「豊洲移転」を「悪い」という単純概念と同一視するものであり、G.E.ムーアが提唱した【自然主義的誤謬 naturalistic fallacy】という誤謬です。ちなみに論理が介在することなく倫理で結論を得る行為は宗教による意思決定のメソドロジーと同値であることに注意すべきです。

一方、(b-2)の言説は「悪いこと」を根拠に「やってはいけない=できるわけがない(不可能)」とするものであり、【ヒュームの法則 Hume's law】とも類似する【道徳主義的誤謬 moralistic fallacy】という論理的な誤りです。

このような論理的誤謬を含む議論はまったく無意味と言えますが、共産党や一部マスメディア(特に一部ワイドショー)を含む移転反対派は、この誤謬を今なお強く主張しています。

ところで、論理を欠いた主観的な倫理(個人的価値観)で言説を主張している人物が、いざ論理を発揮しようとするとしばしば論理矛盾を起こし、この論理矛盾を隠すために無意識あるいは意識的に【情報操作 information manipulation】を行うことがあります。さらにこのような誤った主張の【認知的不協和 cognitive dissonance】の解消は基本的に新たな誤謬を生むことになります

2017/01/26「羽鳥慎一のモーニングショー」では、豊洲移転案に対して保守的(安全を厳しく追及するスタンス)な試算・環境分析を行い、築地残留案に対してはバラ色の試算を行うとともに環境を語らずに比較を行い、価格が変わらないことを根拠に築地残留をもう一度検討すべきという結論を導いています。この主張が、自分の信念を支持する情報を収集する【動機を伴う理由付け motivated reasoning】および自分の信念に反する情報を無視する【意図的無視 willed ignorance / backfire effect】という2つの認知バイアスによる無意識な情報操作なのか、確信に基づく意識的な情報操作なのかはわかりませんが、資料不全による誤謬であることは間違いありません。

youtube動画[2017/01/26 羽鳥慎一のモーニングショー]

そもそも「モーニングショー」の最大の勘違いは、司会者の羽鳥慎一氏が「これは良いこと/悪いこと」という【自然主義的誤謬】を乱発することです。「善/悪」は個人の価値観であり、放送法遵守の努力目標が前提のテレビ放送に適正なのは「合理/不合理」の議論です。ここで、羽鳥氏が説教臭く自然主義的誤謬を乱発するのは、ワイドショーを見る視聴者層の性向を考慮したことによるものと仮説設定できます。主観的倫理に基づく他人への説教臭い批判が主たるコンテンツであるワイドショーのメイン・ターゲットは、「スケープゴート」を批判することによって欲求不満を解消する情報弱者であるものと考えられ、羽鳥氏が個々の事案に対して「悪」を唱えることではじめて視聴者は「悪」を認識して怒ることができるというかなりおバカな図式が存在しているように思えます(笑)。豊洲市場問題は、情報弱者を怒らせて欲求不満を解消させるには格好のトピックであると考えられます。

素直に見れば、道徳教育反対と騒いでいるマスメディアが情報弱者に対して道徳教育をしているコンテンツがまさに「ワイドショー」であると言えます。私は、公正な社会の構築のためのエチケット教育としての道徳教育には賛成ですが、ワイドショーが行っているような特定の価値観に視聴者を誘導するような【倫理操作 ethical manipulation】に繋がる道徳教育には大反対です。

このようなワイドショーの徹底的な移転反対キャンペインによって「豊洲のようなガス工場跡地という悪い場所に食品市場を作るべきではない」=「豊洲のようなガス工場跡地という悪い場所に食品市場を作れない」という道徳主義的誤謬による混同が情報弱者に深く根付いてしまっていることが最も厄介な障壁であると言えます。加えて「危険という風評があるのでもう移転は無理」という風説も「風評が出るような悪い場所には移転すべきでない」=「風評が出るような悪い場所には移転できない」という道徳主義的誤謬です。風評が論理的に偽である認識をもっているのであれば、それを払拭することこそマスメディアの本来の公的ミッションです。

ちなみに「豊洲市場=悪」と認定する自然主義的誤謬を前提として「豊洲市場=悪なので移転できない」とする道徳主義的誤謬を展開するという論理破綻のパターンは今始まったことではありません。「豊洲市場=悪なので移転反対」という構図は、明らかに「原子力技術=大量破壊(悪)なので原発反対」「安保法案=戦争(悪)なので安保法案反対」「沖縄米軍基地=沖縄蔑視(悪)なので辺野古移転反対」「カジノ=博打(悪)なのでIR法案反対」といった思考停止した問題認識のアナロジーです。国の重要事項の意思決定に対して徹底的に議論することは極めて重要ですが、自然主義的誤謬を前提に道徳主義的誤謬を主張する【政治的公正性(ポリコレ)の誤謬 political correctness fallacy】による議論が無意味であるばかりでなく「政治的に不公正」な結果を招いていることを社会が認識することも極めて重要であると考えます。



政局巷談家による豊洲市場問題の政局化

築地市場の豊洲移転問題においては、ワイドショー報道の科学的合理性に大きな問題があると考えられますが、そんなワイドショーで幅を利かせているのが、もっともらしい検証不能な内部情報を自由に操って問題を煽っている伊藤惇夫氏、鈴木哲夫氏、二木啓孝氏などの自称「政治ジャーナリスト」です。

政治の動きをすべて痴話や時代小説のように物語化し、政策決定のメカニズムはすべて「永田町」「霞が関」という名の政治家・高級官僚などの個人的な利権や欲求によるかのように吹聴する彼らの肩書は、「政治ジャーナリスト」というよりは「政局巷談家」の方がふさわしいと考えます。

「政局巷談家」は、おバカなほど徹底して政策に関する客観的議論をすることはなく、口から出てくるのは政局の話題のみです(笑)。誰々と誰々が離れたとかくっついたとか、誰々が何かを仕掛けようとしているとか、言説の内容は芸能人のゴシップと大差なく、ひたすら問題を煽ることに集中しています。

例えば、下記リンクに示す伊藤惇夫氏のフリップはまさに「政局巷談家」の極みともいえる性向を如実に示すものです。民進党内部の「政局」について「どうでもいい」「何なんだろう」とコテンパンに批判しながら、なぜかその後も「政局」の話だけしています(笑)。あまりにもおバカな展開と言えます。

youtube動画[2017/01/26]

「豊洲市場問題に詳しい」という鈴木哲夫氏は、科学的論証に相当疎いのか、「ベンゼン79倍」をひたすら乱発し、検証不能の内部情報で事態の混迷をことさら煽っています。問題をわかっていない人物がわかったように解説する典型例と言えます(笑)。

youtube動画[2017/01/16]

「政治の裏の裏まで知っている」をキャッチフレーズとする「政局巷談家」のビジネスモデルは、政策を報じる【争点型フレーム issue frame】ではなく、政局の勝ち負けを報じる【戦略型フレーム strategic frame】の報道を吹聴し、情報弱者に「自分も事情通だ」と勘違いさせることで番組視聴率に貢献するというものです(笑)。

「政局巷談家」は事情通を演じて裏話をまことしやかに語りますが、そんな裏事情を知ったところで国民には何の得にもなりません(笑)。一方で「政局巷談家」は「政策」の話になると「これは~するしかないと思う」「~することはできないと思う」という旨の簡潔な憶測コメントを乱発します。このようなコメントの根拠は何かと言えば「ある政治家がそう言ってた」とか「それではみんなが納得しない」とかいう検証不能のリーク話であり、根拠のない【権威に訴える論証 appeal to authority / ad verecundiam】を展開して巧妙に自分の立証責任を回避しているわけです(笑)。

豊洲移転問題において、「政局巷談家」が「豊洲への移転の可否」の根拠を何に求めるかと言えば、それは合理性を持つ「科学的考察」ではなく、常に「小池都知事の周辺からもれてくる声」に根拠を求めています。これは権威論証の中でも最も程度が低い【他人の言説に訴える論証 ipse dixit / he, himself, said it】という他人の言説の無批判な肯定や【伝聞に訴える論証 argument from hearsay】という伝聞情報の無批判な肯定に他なりません(笑)。

合理的な根拠を示さない「政局巷談家」の言説はカンペキに無意味ですが、彼らがワイドショーで堂々と活躍していることには合理性があります。それは、痴話が大好きなワイドショーの視聴者にとっては、根拠なき「裏の裏の情報」が何ものにも代えがたい興味深いコンテンツであるからです(笑)。

人間には【利用可能性ヒューリスティック availability heuristic】という「想起しやすい記憶情報に影響を受ける」脳のアルゴリズムがあるため、ワイドショーで「政局巷談家」を繰り返してみれば見るほど「政局巷談家」に対するビリーフが重症化します(笑)。これは【単純接触効果 mere exposure effect】による【培養理論 cultivation theory】と呼ばれるものです。

情報弱者は、「政局巷談家」の「私は~と思う」という簡単なフレーズの繰り返しを潜在的に知覚・認知・記憶・想起し、あたかも自分の意見であるかのように【記憶錯誤 paramnesia】して世間に拡散し、最終的に極めておバカな世論や風評が形成されます。これが豊洲移転問題の病理の一つです。そしてさらにバツが悪いことに、このような世論や風評にポピュリストの政治家が反応して都合よく政治利用するというおバカな展開となっています。

この意味で「ワイドショー」は、大衆に対する情報操作・心理操作・倫理操作のパワフルな道具となりうるコンテンツであり、報道番組よりもむしろ危険と言えます。法の下の平等を宣言する民主主義においては、どんなに注意深く事案を分析する人の1票も、「政局巷談家」の話を鵜呑みにする人の1票も価値は全く同じなわけです。illogicalでirrelevantでfutileな「政局巷談家」の皆さんは、大衆を操作すると同時にポピュリストを創出することで公正な社会の形成を阻害するという意味で、そろそろ退場していただきたく願う次第です



反対派による偽説の流布

2017年1月30日の夜のワイドショー「橋下×羽鳥の番組」で水谷和子氏は豊洲市場に対してシナリオのないリスクを繰り返し、果てには「地下空間の中に小さなショベルカーは入ってボーリングマシンは入らない」と自信満々に語りました。これは完璧なデマです(笑)。

youtube動画[2017/01/30 橋下×羽鳥の番組]

水谷和子氏の意見を要約すれば「ボーリングマシンが地下空間に入らないため、8m下の地盤の調査&環境対策ができず、豊洲移転は無理」だそうです。この言説は完璧に不合理です。なぜか橋下徹氏はそんな偽説を「的確に答えている」と評価しました。

ボーリングマシンは、高さ2m×幅1m程度の間口があれば入りますし、仮に入らない場合(ありえませんが)には一度解体して搬入し、中で組み立てます。小さなショベルカーというのは最小のショベルカーである「ミニユンボ(ジャンボという言葉にミニという形容詞がつくネーミングにはいつも笑わされますが)」のことを言っていると思いますが、ミニユンボが入ってボーリングマシンが入らない状況というのがまったく理解できません。

高さ2m×幅1m程度の間口があれば、孔径86mmのロータリーボーリングが可能なボーリングマシンを搬入でき[実例]、建設工事におけるほとんどの調査・試験・地盤処理が可能となります。水谷氏は、わずか10m程度の深度の豊洲市場の地盤調査にあたって、1000mも掘削する石油・鉱山・地熱開発に用いるような大型ボーリングマシンの搬入を考えているのでしょうか(笑)。

例えば、ダム・地下空洞等の大型土木構造物やHLW地層処分の「岩盤」の調査では、人間が入れるだけの[横坑]と呼ばれる小さなトンネルを掘り、そこから数10m~100mのボーリングを行いボーリングコア鑑定・ボアホールテレビ観察・各種力学的試験・各種水理学的試験を行います。これによって得られた各種物性値ならびに境界条件によって、岩盤に対する設計が行われるわけです。豊洲の8m程度の「土」を調査できないわけがありません。

一方、ダム基礎岩盤の透水性の改良工事の工法であるカーテングラウティング/リム・グラウティングでは、同様に人間が入れるだけのリム部のグラウトトンネル・監査廊から大量のボーリング(数10~数100m長)を行い、セメントミルクを注入します[実例1] [実例2]

一般の方は、ダムの設計と言えば、堤体の設計がすべてと思われるかもしれませんが、アーチダム(現在はほとんど建設されることがない)を除けば、堤体の設計はアンノウンファクターがほとんどないルーティンワークであり。技術力の大半が割かれるのは、ダム基礎岩盤の設計(掘削線の決定・岩盤改良工の配置)であるということは工学的な常識です。もしも高さ2m×幅1m程度の間口にボーリングマシンが入らなければ、ダムを建設することは不可能と言えます。

なお、東京都が勝手に黙って豊洲市場の建屋下に大きな地下空間を作ってしまったことで、今後の市場の営業にまったく影響を与えることなく、いつでも調査を行い、環境対策を実施することができるようになりました(笑)。建屋下で地盤調査や環境対策ができないなど完璧な偽説です。

橋下徹氏がテレビ番組で偽説に騙されてその言説を高く評価したことは残念でなりません。これは橋下大阪市長が繰り返していた「当事者を知らないバカマスコミの不勉強」以外の何物でもありません。当事者でないことがこのような発言に繋がったとしたら本当に残念です。

ちなみに、2012年当時の橋下大阪市長が大阪市特別顧問の古賀茂明氏と飯田哲也氏を実質的に無力化して大飯原発を再稼働したことは大英断でした。実は原発を再稼働していなかったら、2012/8/2&3に関西電力の使用電力がピーク時供給力の97%を上回ったため、計画停電が実施されていたのです[関連記事]

2012年4~5月頃、大阪市特別顧問の飯田哲也氏と古賀茂明氏は「関西の電力は足りている」と憶測で豪語し、テレビ朝日の朝のワイドショー「モーニングバード」で関電を「原発再稼働ありき」の極悪人のテロリストように報道しました[停電テロ1][停電テロ2]。科学的な見地から言えば、2012年真夏の関電管内の電力量予測は6月末の段階でも難しく高度な数学モデルを駆使しても7月までは適正な予測は不可能でした[時系列分析結果]。そんな中で4・5月に「電力は足りている」という発言したのは極めて不合理です。彼らが軽口で関西人の生命を危険に晒したことは間違いありません。当時からテレビ朝日のワイドショーが不見識なコメンテイターを起用してデマを流していた構図は、現在の豊洲市場問題の構図とよくシンクロしています。[出力調整機能]を無視して新エネルギーを即座に導入するという非現実な対案を出していたこともよく類似しています。また両問題ともに合理的に問題点を指摘している池田信夫氏におかれましては本当にお疲れ様です(笑)。

橋下市長が大飯原発を再稼働したことで猛暑の中での計画停電が回避され、関西人の尊い命が救われたということです。どのような論理があったかは私は認識していませんが、橋下市長の判断が正しかったことは紛れもない事実です。そんな英断を下した橋下氏が、当事者ではない東京の問題において、とんでもない偽説にコロッと騙されているのは何とも残念な限りです。もちろんテレビというメディアは即断を要求されるので同情いたしますが。

なお、ボーリングマシンが豊洲の地下空間に搬入できることが確認されれば、水谷和子氏がこの問題に対して反対する根拠の多くはなくなるものと考えられます。なぜ、こんな基本知識もない人が堂々と反対しているのか?なぜ、テレビ朝日はそんな基本的なことをチェックできないで放映してしまうのか?豊洲市場問題の病理です。



専門外の科学者によるシナリオなきリスク評価

豊洲市場問題においては、「私は○十年も経験がある」とかいう恐ろしい帰納原理を根拠に科学的事案に対する憶測を主張する人物が登場したりしますが(笑)、ワイドショー等で地下水挙動について説明する科学者の言説も極めてナイーヴなものが多いと言えます。
ワイドショーがどこからどのような経緯で連れてくるのか、有機化学の専門家が地下水挙動について論評したり、論点とは異なる分野の権威者の言説を無批判に肯定する【偽の権威者に訴える論証 appeal to false authority】が飛び交っています。ワイドショーの視聴者は、このような人物が事案のステイクホルダーではない「第三者」であることを過度に意識し、公平な立場にある第三者の言説を無批判に肯定する【第三者に訴える論証 interloper effect】に陥っている可能性があります。

そんな中、歯に衣を着せぬ科学者の武田邦彦先生がインターネットの情報番組で、豊洲問題の安全性について次のような発言をされています。

youtube動画[2017/02/03 虎ノ門ニュース]

要約すると「豊洲市場のような環境基準の79倍の地下水ベンゼン濃度のところで造ったマグロを食べると交通事故死確率の79倍の疾病率になる」ということですが、この言説は究極に非科学的です。

現在、豊洲市場の地下水において最高で地下水環境基準の79倍のベンゼン濃度が観測されていますが、実際には、ベンゼン濃度が地下水環境基準の100倍程度であっても地上の空気は環境基準内であり、気化したベンゼンがマグロ表面の水に付着しても、その濃度は環境基準の1/1000未満であることが[豊洲市場専門家会議の計算]で示されています。

すなわち地下水中ベンゼン濃度が環境基準の100倍程度であれば、マグロに付着している水を70年間にわたって一日2トン(2リットル×1000倍)も飲む人が10万人いたとしても、確率的にガンになる人は1人未満であり、帰納的な蓋然性から考えて、交通事故死の79倍の疾病率になるいう武田先生の言説は完全に非科学的な風評であると言えます。

武田先生の言説がいかに蓋然性に乏しいかについてハザードのシナリオをもとに具体的な数値で検証してみたいと思います。

地下水環境基準の100倍の地下水中ベンゼンが市場のマグロに付着した水によって10万人に1人がガンになるレベルに達するには、最低でも70年間毎日2トンのマグロを1人で食べ続ける必要があります。しかしながら、これは物理的に不可能なことです。

1時間に最高で10kgくらい食べるギャル曽根さんが24時間マグロを食べ続けたとしても240kgであり、マグロが全部水でできていると仮定しても0.24トンの水にしかなりません。つまり、2トン食べるにはギャル曽根さんの限界量よりも約8倍多い量のマグロを24時間食べ続ける必要があります。おそらくそんな人はこの世の中に存在しないと蓋然的に考えられます。

ちなみに築地市場のマグロ入荷量は10トン強/日[参考]なので、1人2トンを食べるとなると、最高でも5~6人くらいしかマグロにありつけない計算になります。マグロ価格は低く見積もって3000円/キロなので1日600万円、70年間で1人1500億円かかります。正確に言えば、交通事故死は10万人に1人ではなく、3万人に1人なので、交通事故死と比較する場合には疾病率が上記の3.33倍となる必要があります。このためには、1日に6.67トン(約700万kcal)以上のマグロを1人で食べる必要があり、70年間にわたるマグロの購入額は総額で約5000億円になります。強力なスポンサーが必要ですね(笑)。

さらに交通事故死の79倍になるには6.67×79≒500トンのマグロを最低でも1日に一人で食べなければなりません。このとき豊洲市場は築地市場の約50倍のマグロを入荷する必要があります。マグロの購入額は70年間の総額で約40兆円になります。これでも死亡確率は1/380に過ぎません。もしもこんな人物が380人いたとしたら、豊洲市場のマグロの年間売り上げは約220兆円(日本の国家予算の約2倍)となり、豊洲市場が世界経済のぶっちぎりのトップランナーなることは確実です(笑)。

なお、武田先生が「地下水測定を9回行ったのは誤りで1回で行うべき」というのも意味不明の言説です。地下水流動による物質移行は時空間変動を伴う非定常問題なので、時空連続体としての4次元の座標軸で現象評価することが必要になります。1回の調査で特定の時間断面における空間データを得たとしても解くことができるのはラプラス方程式による定常解のみであり、時間変動を評価することはできません。すなわち、将来予測ができないことになり、将来にわたる安全性を確認できないことになるわけです。

おそらく今回の武田先生の発言は専門外であり、誤解もあると推察しますが、【偽の権威者に訴える論証】による風評が発生する可能性がありますので発言は慎重にされるべきと考えます。



エピローグ

羽鳥慎一氏や安藤優子氏のようなワイドショーの司会者は、説教臭く「安全と安心は違う」と繰り返し、豊洲市場に食の安全を求めますが、豊洲市場において食料品の安全性が危険に晒されることは演繹的にも帰納的にもありえません。「安全と安心は違う」という言葉によって良民は思考停止させられ、とんでもない過剰なレベルの安全を疑うよう心理操作されているものと考えられます。

しかもこの過剰なレベルの安全が既に確保されているにもかかわらず「安心が確保されていないので移転しない」ことになると、この約6000億円費やしたアセットは買いたたかれ、都民は最大で一人当たり約5万円という「ぼったくりバー」のレベルの強制的な支払いを合法的にさせられる可能性があります。

ワイドショーによる心理操作が意図的か意図的でないかは微妙なところです。羽鳥慎一氏や安藤優子氏がしばしば発する非科学的な発言を聴く限り、科学的常識を覆して「安全と安心は違う」と主張しているのではないと考えます。おそらく羽鳥慎一氏や安藤優子氏は、単に「わからないものは怖い」というスタンスでいれば何が起こってもエクスキューズになると確信して、東京都民の税金支払いリスクなど一切恐れることなく、番組視聴率のために堂々と風評を流布しているものと考えられます。

安心というのは「個人の価値観」に依存する感情であり、個人の立場で「安心できない」と際限なく宣言しても、帰納的な解しか得られていない場合には、論理的には否定できません。基本的にブラウン運動を続ける分子レベルの挙動まで遡ることができる自然科学の問題については、一般に帰納的な解しか得られません。例えば、「1+1=3である」という言説は演繹的に完全に否定できますが、「99.999%安全な事案でも必ずしも安全とはいえないない」とする言説は演繹的に否定できません。これを安全というには、有意水準を設けることで帰納的に否定するしか方法はないのです。安全性を計算できない羽鳥慎一氏や安藤優子氏は、この帰納論理の弱点をついて「安心できない」と言っているものと考えられます。このメソッドは誰でも使える典型的なゼロリスク追及の論理です。

そんな中で、2017/01/25のBSフジ「プライムニュース」に出演した京都大学工学研究科都市環境工学専攻の米田稔先生は、この豊洲市場に問われている環境リスクと完全に分野が合致している専門家であり、番組において終始極めて常識的な解説をされたと考えます。

youtube動画[2017/01/25 プライムニュース]

米田先生の解説の重要な点は、環境基準の誤った使い方によって生じる誤解釈を明確に否定し、ハザードのシナリオを提示して適正にリスクを評価している点です。これまでに何度も述べているように、【リスク risk】というものは、【ハザード hazard】【シナリオ scenario】を設定した上で、そのハザードシナリオが発生する【確率 probability】にハザードによる【損害 damage / loss】を乗じたものです。この基本中の基本を、ワイドショーに出てくる自称専門家が一切語ることがなかったところが真の病理であると言えます。

ちなみに米田先生の解説の内容は、[統計学的な分析結果]ともよく整合するものです。

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