新エネルギー導入を分析する | 西陣に住んでます

新エネルギー導入を分析する

西陣に住んでます-Obama



菅首相がG8サミットで導入目標を世界に向けて発表以来、
再生可能(renewable)な自然エネルギーが話題になっていますね。


確かに持続可能な(sustainable)エネルギーシステムの構築には、
在来の原子力・火力・水力発電から新エネルギーと呼ばれる
再生可能自然エネルギーへのシフトは不可欠で

このことには誰も異論がないと思います。


西陣に住んでます-電力のベストミックス


ただ、ここのところ少々気にかかるのは、

最近ささかれている新エネルギー万能論です。
残念なことに、供給面から見てみると、

現在考えられている再生可能な自然エネルギーには
ベースロードを担う安定した電源が欠如しています。

つまり、日々の電力供給を考えた場合、
在来型エネルギーと新エネルギーとを組み合わせた形で
ベストミックスを構築していく必要があるということです。

また、再生可能な自然エネルギーが環境に良いかと言えば、
必ずしもそうではなく、多くの問題をかかえています。
そして、こうしたダークサイドの部分が排除されて議論がなされているのも

大いに気にかかるところです。


そんな危惧も含めて、この記事では、在来型および新型の各発電方式を

(1)供給安定性、(2)コスト、(3)環境の各面から概観したいと思います。


まず、最初に各発電方式について比較表を作りました。



各発電方式の供給面の比較

西陣に住んでます-エネルギー比較


各発電方式のコスト面および環境面の比較

西陣に住んでます-エネルギー比較

数値は経済産業省エネルギー白書他を参照



これらの表をベースに各論を述べていきます。




右矢印原子力発電


原子力発電は、核反応を利用して発生した水蒸気でタービンを回転させる
典型的な供給地集中型の発電方式です。
供給面では、燃料の供給が国際的に確約されていて、
省スペースで大容量の安定した発電を可能としますが、
出力調整が困難なため、ベース供給電源として利用されます。
冷却水として海水を必要とするため、立地は海岸に限られます。
コスト面では、バックエンド(廃棄物処理)を含めても
安価であることが経済産業省から示されていますが、異論も存在します。
そして、今では誰もが知るように、

ひとたび事故が発生すると補償費が甚大となります。
環境面では、CO2を排出しないという長所がある一方で
ひとたび事故が発生すると、
生態系に極めて深刻な影響を及ぼす放射線を放出することがあり、
その被害の範囲も地球規模にわたります。
また、数万年貯蔵することが必要な高レベル放射性廃棄物(HLW)が
発生し、地層処分(地下貯蔵)することが必要です。



右矢印火力発電


火力発電は、石油・液化石油ガス(LPG)・液化天然ガス(LNG)・石炭などの
化石燃料の燃焼エネルギーによってタービンを回転させる
典型的な供給地集中型の発電方式です。
タンカーによる燃料のアップロードを基本とするため、
立地は海岸線に限られます。

供給面
では、省スペースで大容量の安定した発電が可能です。
出力調整もある程度可能で、ミドル供給電源として利用されますが、
石炭火力の場合には、出力調整が困難でベース供給電源となります。
コスト面では、発電単価が基本的に低いのですが、

輸入に頼る燃料の価格に左右されるため、
石油価格が高騰している現在、ややコストが高くなっています。

これまでも電力料金は石油価格と為替レートの推移に

大きく左右されていました。
なお、高コストの未開発燃料として、カナダのオイルサンドや

エリノコタール、オイルシェール、シェールガス、
日本近海にも豊富に存在するメタンハイドレート等があります。

メタンハイドレートの利用には、採取費用の低減が絶対条件です。
環境面では、CO2などの温室効果ガスや有害ガスを排出します。



右矢印水力発電


水力発電は、水の位置エネルギーという再生可能な自然エネルギー
を利用してタービンを回転させる供給地集中型の発電方式です。
供給面では、出力調整能力が卓越しているため、
揚水式水力発電と調整池・貯水池式水力発電は
ピーク供給電源として利用されています。
なお、純揚水式発電は他電源を利用して揚水するため、
実質上は再生可能な自然エネルギーとは言えません。
一方、流れ込み式水力の場合には、
ベース供給電源として利用されています。
コスト面では、原子力や火力よりも発電価格が高くなりますが、
その存在によって全体設備量を低く抑えていることを考えると、
単なる数字だけでは評価できません。
環境面では、流域の生態系を一部破壊します。



右矢印太陽光発電


太陽光発電は、地球上に無尽蔵にある太陽の光という再生可能エネルギー
を利用した需要地分散型の発電方式です。

需要地で発電が行われるため、送電コストがかかりません。
ただし、パネルを1か所に集めたメガソーラーの場合には、
供給地分散型といえます。
供給面では、天気に依存する不安定な電源です。
コスト面では、現在のところ発電単価が1kWあたり40円を超す高コストです。
環境面では、発電時にCO2を排出しません。

太陽パネルの設置による景観破壊・土地占有などの問題があります。



右矢印風力発電


風力発電は、地球上に無尽蔵にある風という再生可能エネルギー
を利用してタービンを回転させる供給地分散型の発電方式です。
供給面から見ると、風まかせの発電方式なので
供給は極めて不安定で、季節変動も大きいことが知られています。
一般に夏よりも冬に発電量が多く、電力需要の季節変動と合致しません。
また、発電可能な地域も、需要の大きい大都市圏内にはなく、
そのほとんどは、需要がない山間部や特定の海岸部に限定されます[資料]
このため、発電負荷を下げるのには有効ですが、
電力供給計画に組み入れるには多くの困難を伴う発電形式です。
コスト面では、平均風速が秒速5m程度ある地域であれば、
10~14円/kWhという現実的な価格で発電することができます。
環境面では、CO2を排出しませんが、
発電時の騒音が環境に与えるインパクトが甚大です。
騒音(可聴音&低周波音)による人間の健康被害が報告されているとともに
通常は環境保護団体が人間以上に心配している鳥獣魚の生息環境に
与える影響も多数報告されています。
例えば、ダム建設などでは一羽のイヌワシがダムサイトで目撃されるだけで
かなり強硬な建設反対運動が起こりますが、
風力発電の騒音の方がより深刻な影響を与えるのは明白です。
人間に影響がないよう、風量が多い海上に風車を配置する
洋上風力発電という方式も注目されていますが、
海の生態系破壊を引き起こすことは明白で、漁場への影響も懸念されます。
また、景観破壊もあります。
北海道の日本海側で見た突然巨大な風車が並ぶ風景はかなり異様です。



右矢印地熱発電


地熱発電は、地下の高温貯留層にトラップされている

蒸気を取り出して発電する供給地集中型の発電方式です。
供給面では、ベース供給電力として利用できる安定性の高い電源です。
コスト面では、発電単価は比較的安いのですが、

そのコストを実現するためには、

立地が有力な地熱地帯に限らなければならないことになり、
この条件のもとでは、開発可能な電力量にも限界があります。
世界的に見て日本は地熱資源に恵まれている方ですが、
他の有望国の米国・フィリピン・インドネシア・メキシコ・イタリアと
比較して決定的な違いがあるのが温泉の存在です。
聖徳太子が道後温泉に入ったことが知られているように
日本人は古くから温泉が大好きですが、
地熱地帯はそのほとんどが温泉地で、
地熱発電所の建設計画が発表されると、温泉が枯渇するのではということで
温泉組合から強力な反対運動が起こります。
また、その多くが国立公園内なので、規制が多いのも難点で、
このような社会的状況が変わらない限り、
ドラスティックな発電量の上積みは期待できません。
八丈島などの離島で需要地集中型の電源として利用する場合には、

非常に効果的な電源となっているのは事実です。
環境面では、CO2を排出しませんが、
それ以上に怖い硫化水素などの有毒物質が
大気・水質汚染を引き起こすのが問題です。
なお、地下の高温岩体に人工的な割れ目を発生させて注水することで
人工的に蒸気を発生させてそれを取り出す
高温岩体発電と言う方式もありますが、
日本ではまだ実用化されていない技術です。



右矢印小水力発電


流れ込み水力発電のうち、発電容量が100kW以下のものは、、
小水力発電またはマイクロ水力発電と呼ばれています。
河川や水路の水流という再生可能エネルギーを利用した
供給地分散型の発電システムです。
供給面では、渇水時を除けばベース供給電力として期待できます。
コスト面では、設置コストと維持管理コストが高いのが難点であるのと、
水利権を伴うので河川法に伴う許認可が必要となります。
ちなみに河川法というものは非常に厳密で
許認可を得るために多くの労力を注ぎ込まなければなりません。
環境面では、負荷が比較的小さいことが知られています。



右矢印海洋温度差発電


海洋温度差発電は、深部と浅部の海水の温度差を利用して発電する

供給地集中型の発電方式です。
供給面では、表面海水温が25℃以上の海洋が対象となるため、
供給地が沖縄周辺の海洋に限定され、季節変動もあります。
コスト面では、発電単価が現段階ではかなり高いといえます。
環境面では、海水温の空間分布が変化するため
生態系が影響を受けるものと考えられます。



右矢印バイオマス発電


バイオマス発電は、植物や動物などが発する有機物を燃焼させて

発電する供給地集中型の発電システムです。
燃料を燃焼させることによってCO2が生じますが、
それを燃料となる植物が成長する過程でCO2を吸収するという考えで
CO2のゼロサムを実現しようとするものです。
立地に基本的な制約はありません。
供給面では、燃料確保のランダム性や季節変動があるため、
安定性に問題があるのと、
食糧問題を引き起こすことがあるのが問題です。
コスト面では、発電単価が実用的なレベルまで下がっています。
環境面では、植物伐採後の土地に同量の植物が育たないと
CO2のゼロサムが実現できずに単なる環境破壊となってしまうのと、
メタンや窒素酸化物などの有害ガスも生じることが問題です。



右矢印廃棄物発電


廃棄物を燃焼させて発電する供給地集中型の発電システムです。
供給面では、立地に基本的な制約はなく、
ベース供給電源として利用できます。
コスト面では発電単価が低く、廃棄物処理も同時に行うことができます。
環境面では、ダイオキシン等を排出するのが問題です。


晴れ晴れ晴れ晴れ晴れ晴れ


以上、各エネルギーの特性を概観してみると、
現在のエネルギーシステムが
供給安定性に優れた低コストのシステムであることがわかります。
ただし、大規模な危険性や環境面への悪影響も同時に内包した
エネルギーシステムであることもまた事実です。


エネルギーシフトを行う上で、

仮に原子力発電のシェアを低下させるには、

他の供給安定性の高いベース供給電源で代替する必要がありますが、

現在のところ、その役割を果たすことができるのは、火力発電だけです。

この場合、現在よりCO2排出量が上昇するのを回避することはできません。

また、原子力発電の一部を新エネルギーで代替しようとする場合には、

供給安定性が低下するため、現在より定格出力の高い多くの設備が

必要となります。さらにコストの増加とさまざまな環境破壊が生じることも

覚悟しなければなりません。


つまり、安全性の確保と、供給安定性・コスト・環境

トレードオフの関係にあることは明白であり、

議論にあたっては、この点を明確にすべきと思われます。


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さて・・・


ここで、再生可能な新エネルギーの導入について
現在注目されている太陽光発電を例にとって、
問題となっているコストを具体的に検討してみたいと思います。


まず神奈川県横浜市を例にとって15年元金均等返済のローンで
1世帯当たりの導入コストを次の条件のもとで計算すると、


住宅用太陽光発電の平均容量:4.12kw/世帯
システム導入価格:56.1万円/kW
補助金(国):4.8万円/kW
補助金(神奈川県):5.2万円
補助金(横浜市):6万円
ローン15年固定:3%→15年利率:1.24


{4.12kw/世帯×(56.1万円/kW-4.8万円/kW)-5.2万円-6万円}×1.24/15年
=16.6万円/年/世帯


年間返済費用は約16.6万円となります。


一方、全量買い取り法案が成立したとして、
各世帯あたりの年間売電額を次の条件のもとで計算すると


太陽光発電の電力買取価格(2011年実績):42円/kWh
予想年間発電量:1,000kWh/1kW


4.12kw/世帯×1,000kWh/1kW年*42円/kWh=17.3万円/年/世帯


電力売電価格17.3万円となります。


年間返済費用16.6万に対して年間売電額が17.3万円と言うことは、
7,000円の黒字と言うことになります。

つまり、15年の間にメンテナンスコスト年間平均7,000円で
太陽光パネルを維持管理できれば元金を回収できるということです。


太陽光パネルの寿命10~20年と言われてますので、
実現可能性が高い数値ですが、

この一連のローンによる投資を一般の国民が行った場合、
15年太陽光パネルがもたない場合の大きなリスクを負担するのは
投資を行った個人ということになってしまいます。


この解決方法としては、個人は屋根という場所を提供するだけで
後は、あるいは自治体がすべてを運営するという方法が

考えられます。この場合、個人には太陽パネルをつけることの

経済的な損得は存在しなくなります。


このようにすれば、大数の法則でリスクが分散され、
太陽光パネルの寿命の平均値まで導入コストを回収でき、
太陽光パネルの寿命の平均値が15年を上回る場合には、
新たな財源が生まれるということになります。


一見すると、まんざらでもない感じですが、
この計算には実はレトリックがあります。


電力会社は、1kWあたり10円前後で発電可能なところを
1kWあたり42円出して電力を買い取るわけですから
太陽光の導入世帯が増えれば増えるほど、電気料金が高くなって、
国民が実質発電価格と太陽光発電買い取り価格との差額を
負担することになります。


仮に菅首相が言うように、日本の全世帯数の1/5の

1000万世帯がこのような売電を行った場合、その総発電量は、


4.12kw/世帯×1,000kWh/1kW年*1,000万世帯=412億kW/年


412億kW/年となります。

簡単のため電気料金22円/kWhを実質発電価格とすると、


412億kW/年*(42円/kWh-22円/kWh)=8240億円/年


年間8240億円を15年にわたって国民が負担することになり、
国民一人当たり6500円弱を毎年支払うことになります。

この金額を高いと見るか安いと見るかは個人の考え方によると思います。

菅首相が、経済産業大臣にも内緒でG8サミットで宣言したことって
試算するとこのくらいのインパクトがあるんです。


なお、太陽パネルの価格を1/2コストダウンできれば
売電価格が発電価格とほぼ等しくなるために

この時点で国民負担はなくなります。

このことから何よりも重要なことは、
導入コストを下げることに他ならないことがわかります。


ちなみにこれだけ太陽パネルを設置したとしても
日本の年間発電量は約11000億kWhに対して3.75%増にしかなりません。



以上まとめますと、

原子力発電を縮小し、再生エネルギーの導入を進める

エネルギーシフトは必要なことではありますが、

供給面、コスト面、環境面についてかなり不利な面があり、

これらの点を踏まえた上で、

国民が大きな決意をもって臨まなければなりません。

そして、このことを推進するには、数値的な裏付けが不可欠です。


神奈川県知事が、数値的な根拠も示さないで
「スピードが大切」「損はさせない」とだけ発言しているのには

かなりの危うさを感じます。


そして、導入スピードが大切なのではなく、
導入コストを下げることが大切なのは明白です。
県知事がすべきことは、コストダウンを応援し、
コストが数値に乗ってくる時期を見極めて一気に設備を導入することで
さらなるコストダウンを誘発することだと思います。


この県知事に対して、メガソーラーを全国展開させて
最高に鮮やかなビジネスを展開しようとしているのが
ソフトバンク孫正義社長です。


太陽光発電でもっとも気をつけなければならないことは、
大地震などの壊滅的な自然災害時の太陽光パネルの損害です。
孫社長は、このメガソーラー事業を全国展開することによって、
自然災害による損害のリスクを分散し、
全量買い取りという好条件下で投資を目論んでいると私は見ています。

メガソーラーの場合、42円/kWhでの全量買い取りが
すでに決定されているので、大数の法則によってリスクを分散できれば
国民が負担する補助金(売電価格と実質発電価格の差)
を合法的に手にすることができるんです。
これは、国債と競争できるくらいの社債を販売する
ソフトバンクだからこそできる芸当です。
きっと利益は天文学的な数字になることでしょう。
しかも、見掛け上は国民の尊敬を集めながら・・・
今、孫社長は、最強のポートフォリオを手にしようとしていると言っても
過言ではないかと思います。


なお、菅首相は、6月12日にその孫社長他の有識者を招いて、
自然エネルギーに関する「総理・有識者オープン懇談会」
というものを開催したようです。
私は、その有識者の名前を聞いてボーゼンと立ち尽くしました。
新エネルギーの専門家と思いきや、孫社長の他には、
なんとサッカー日本代表の岡田前監督
音楽プロデューサー小林さんという方じゃないですか~


ホ・・・ホ・・・ホンマですか~(汗)


みんな、あなたのそういった三文パフォーマンス
やめてくださいと言ってるんですよ~


最強のKYというか・・・
麻雀で言えば、他の3人がリーチしてる中、
ドラで1枚も切れてない赤のウーピンを
1秒でツモギリするみたいな(汗)


きっとこの首相には、持続的に
再生可能エネルギーが安定供給されていることなのでしょう(笑)


チャンチャン