この世界の片隅に(日本語字幕版)(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

この世界の片隅に(日本語字幕版)(ネタバレ)

※尊敬する映画評論家の町山智浩さんの「非常に熱のこもった作品紹介」がアップされているので、聴いてみて!
※今回の記事は、映画とは関係のない文章が恐ろしく長くダラダラと書かれているので、ちゃんとした感想が読みたい人は、圧倒的成長侍さんとかカゲヒナタさんとかはちごろうさんとか読んでみなよ(なんとなくタメ口)。
※本作についての紹介記事は、こちらのサイトがタメになりますぞ。


<「鑑賞前に揺れ動いた気持ち」についてのムダに長い前置き>

当ブログは「僕の映画“体験”を備忘録的に残しておく場所」ということで、感想の前にダラダラと駄文を書き散らしておきますよ。まず、片渕須直監督に関しては、2010年に奥さんと「マイマイ新子と千年の魔法」を観に行っててそれがスゲー良かっただけに、「そういえば『マイマイ新子』は素晴らしかったのに、あの監督さんは新作を撮らないのかね?(・ε・)」なんて思ってた。こうの史代先生に関しては、以前、「夕凪の街 桜の国」を読んで非常に感動したものの、日本の「戦争が絡む話」はどうにもダウナーな気持ちになるので、それ以降の作品は見て見ぬ振りをしていたという感じ。で、その両者が組んで「この世界の片隅に」が映画化されるという話をどこかで小耳に挟んだ時は、「戦中」「広島」というキーワードから、「どうせほのぼのした人が戦禍に巻き込まれて酷い目にあった挙げ句、吉永小百合さんが『人間をかえせ!川゚д゚)』とか朗読するのだろうよ」なんて内容を勝手に想像して、すっかり脳内の「スルー予定フォルダ」に入れていたのです。

「マイマイ新子と千年の魔法」の予告編↓ イイ映画だから、みんな観ようね。



ところが! ツイートをチラチラ眺めていたら、本作の主演声優の「のん」さんは、あの「あまちゃん」でブレイクした能年玲奈さんであり、レコード大賞を受賞するためには1億円払わないといけないことで知られる系列の事務所に名前を奪われた&干されているんだとか(お互いに言い分はあるようですがー)。さらに「お金がなかったのでクラウドファンディングでファンが支援した」という美談も今さらながらに知って(この前、取引先の人と話した時、間違えて「クラウドファインディング」って言っちゃった♪ (*ノ▽ノ) キャッ)、「片淵監督×こうの史代先生×のん×美談=破壊力」という方程式により、観る気ゲージが満タンに。「これは封切りされたら応援も兼ねて即鑑賞せねば!ヽ(`Д´)ノ」と思っていたんですけれども。

なんかネットの評判が良いみたいで、映画もそこそこヒットしているみたいだから、「じゃあ、僕が観なくても良いかな (´∀`)」気分になってきたから、男心というのは複雑なもの。だって、どうせ「ほのぼのした人が戦禍に巻き込まれて酷い目にあった挙げ句、吉永小百合さんが『人間をかえせ!川゚д゚)』とか朗読するような映画」なのでしょう? どんなに良い内容だろうと、今はその手の「しっかりした作品」を観たくない気分でもあって。なんて言うんですかね、最近、8月に公開された「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>」を劇場で見逃したのが精神的に響いてて。僕は基本的にアクション映画を好む男であり、前作もそれなりに楽しかったのに、何見逃してんだと。「もうどうせロングランヒットするんだから、わざわざ行かなくてもいいや」と思い直した僕は、先日、「コウノトリ大作戦!」を観た時にお会いした宇多丸師匠から「『この世界の片隅に』はご覧になりました?(▼∀▼)」と聞かれた際も、「ああいう『良い作品』は僕が観なくても良いんじゃないかと ┐(´—`)┌ ヤレヤレ」「僕はむしろ、見逃していた「ラスト・ウィッチ・ハンター」を静岡まで観に行くことで頭がいっぱいなのです! (*゚∀゚)=3 ムッハー」なんて鼻息荒く答えたほどだったのです。

で、その夜、練馬の「か和もっち」に足を運んだら、僕のツイートを見たはちごろうさんが来てくれて。あーだこーだと映画話をしたんですが、先に本作を観ていたはちごろうさん的には「話を追うだけで、内容を理解するだけで精一杯だった」とのこと(詳しくはブログで!(o^-')b ヨンデミテ!)。それを聞いた僕は「そうでしょう、そうでしょう!(`∀´)」「どうせ「ほのぼのした人が戦禍に巻き込まれて酷い目にあった挙げ句、吉永小百合さんが『人間をかえせ!川゚д゚)』とか朗読するような映画なのでしょう!(`∀´)」と。ツイートを見た時の応援気分はどこへやら、結局、脳内の「テレビでやった時に見ればいいやフォルダ」に入れ直していたんですが、しかし。愛聴しているラジオ番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(略称:タマフル)の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画になってしまったというね。

これは結構迷った。実は今、仕事がスゲー忙しい上に、ブログの更新できてない記事だって溜まっているし、前売り券を買ってある映画や絶対観たかった映画の公開が今週で軒並み終了してしまう→映画を観るにしてもそれらを優先したい状況。なんだよ、宇多丸師匠、どうせなら「ラスト・ウィッチ・ハンター」を当ててくれればいいのに…なんて思ってもガチャの目は変えられない。まぁ、でも、もう「コウノトリ大作戦!」の感想のように、番組放送後にアップすればいいかなとも考えたんですが…。「インサイド・ヘッド」ライクに脳内で会議して僕の行動を決めている東堂俊介(冷静さ・性衝動担当)、板垣重政(怒り・性衝動担当)、河山三郎(日和見・性衝動担当)が相談した結果、出た結論は「牙を突き立てろ」。今週火曜日、仕事をサボッてスケジュールを調整して「ジェイソン・ボーン」(この日に上映終了)と「スター・トレック BEYOND」(この日に上映終了)との“雑な3本立て”として、ユナイテッド・シネマ豊洲で鑑賞したのでしたーー (ノД`) ナガカッタ...

「インサイド・ヘッド」の主人公の脳内はこんな感じですが…。
ライリーの脳内

僕の脳内はこんな感じなのでした(「マーダーライセンス牙」より)。
裸会議

そして下された指令は「牙を突きたてろ」。「だから何?川 ゚д゚) ハァ?」と思った方、本当にすみません。
牙を突き立てろ

ということで、雑な三本立てにしたんですが…。「間諜行為」や「戦争の犠牲者」という共通項はあるような…(深読みな文章)。
雑な三本立て

1番スクリーン、それなりに入ってました。
1番スクリーン










この世界の片隅に(日本語字幕版)

この世界の片隅に

2016/日本 上映時間126分
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代
企画:丸山正雄
プロデューサー:真木太郎
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン:松原秀典
作画監督:松原秀典
美術監督:林孝輔
音楽:コトリンゴ
アニメーション制作:MAPPA
声の出演:のん、細谷佳正、尾身美詞、稲葉菜月、牛山茂、新谷真弓、小野大輔、岩井七世、潘めぐみ、小山剛志、津田真澄、京田尚子、佐々木望、塩田朋子、瀬田ひろ美、たちばなことね、世弥きくよ、澁谷天外
パンフレット:★★★★☆(1000円/高いけど、記事は充実してるし、何よりも原作者直筆の「すずさんの手紙」が素敵すぎ!)
(あらすじ)
昭和19年、故郷の広島市江波から20キロ離れた呉に18歳で嫁いできた女性すずは、戦争によって様々なものが欠乏する中で、家族の毎日の食卓を作るために工夫を凝らしていた。しかし戦争が進むにつれ、日本海軍の拠点である呉は空襲の標的となり、すずの身近なものも次々と失われていく。それでもなお、前を向いて日々の暮らしを営み続けるすずだったが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




100点


泣きすぎて具合が悪くなりました… ('A`) 開始早々から泣き始めて、上映終了後もトイレにこもって泣いた挙げ句、終電を逃したほどだった…と書けば、その破壊力がどれほどかわかっていただけるのではないでしょうか。


映画開始直後からこんな感じでして(「餓狼伝」より)。
涙がほとばしるサクラ

上映後もトイレにこもってこんな風に泣き続けた結果…。
泣き続けたー

自宅まで3時間近く歩いて帰るハメになったというね。でも、途中で食べた博多ラーメンは旨かったなぁ…(しみじみ)。
自宅まで2時間50分


この映画に感動した要素は3つあって。まず、作品としてのクオリティの高さに感動しました。今年観たアニメ(って、そんなに観てませんが)では、「君の名は。」がとにかく人物がスルスル動いて気持ち良かったんですが、逆に本作はこうの史代先生の漫画が、行間や余白も含めて、そのままアニメになったような「ミニマムでゆったりした素晴らしさ」というか、「素朴にスゲェ!Σ(゚д゚;)」という印象(パンフの監督インタビューによると「執拗に中割りを増やして、3コマ撮りのフルアニメーションをやった」そうな)。それと、コトリンゴさんが担当した音楽も作品世界に非常に合っていて、サントラがほしくなるほどでしたよ。のんさんの声も自然でハマッてたし、これだけでも観る価値はあると思います。


こうの史代先生の漫画のアニメ化として、とても素晴らしかったのです。
原作漫画のよう


そして、物語の強度に感動しました。僕が開始早々から泣いていたのは、この映画の登場人物たちの愛らしさがハンパではないからでして。本作は「戦時中でも市井の人はそれなりに日常生活を送ってた」的な映画であり(近作では「小さいおうち」とか「この国の空」とか)、基本的には笑って観られるんですけれども。「未来人」である観客の僕は「戦争」「広島」というキーワードから連想される「どうしても避けられない悲劇」が待ち受けていることを知っているだけに、鑑賞中はずっと「もう止めて… (ノДT)」気分でもあって。どんどん物資がなくなるつらい状況下でも、笑って生きるすずたちに間違いなく大きな絶望が襲いかかるのが、本当につらかったんですよ。


物資のない状況をK.U.F.Uして生きる様子が面白く微笑ましいだけに…。
K.U.F.U料理

僕はすっかり愚地夏恵気分だったというね。
止めて…ッ


だから、晴美が米軍の「時限爆弾」のせいで死んだ時は、「ほれみたことか!ヽ(TДT)ノ ウワァァァァン!」と。娘のマナ子(仮名/5歳)が生まれてから、限りなく広大な宇宙が光の速さでさらに膨張を続けるように思い入れがグングン増している僕ですよ、最近はもう「子どもが死ぬ -30点(ただし女児の場合 -50点)」という評価基準で映画を観ているほどなので、右手を失ったすずと同じ絶望した気分でEDAJIMAがあと10人いれば… (ノω・、) クヤシイ」と嘆いただけでなく、こんな展開を見せつけた片淵監督とこうの史代先生への憎悪も噴出! 脳内で「片淵監督が舞台挨拶した時が狙い目か」なんて犯罪プランを練りながら続きを観ていたら(通報されそうな文章)、なんとそんな絶望すら乗り越える物語だったから、非常に驚いたのです。


晴美ちゃん、スゲー良い子だったのにね… (iДi) アンマリダー
すずと晴美ちゃん


いや、乗り越えるというか、悲しみと共生するというかさ。すずは晴美とともに右手を失うわけですが、ラストの「片腕のないすずを見た戦災孤児が死んだ母親を重ねて近づいてくる」という展開はね、「片腕になったからこそ、新しい家族ができた→人生、どんな時も前を向いて生きる価値はあるんじゃないか」と言われたようで涙が噴出したし、「片腕という個性(オリジナル)」即座に愚地克巳の姿が脳裏に浮かんだのは、我ながら台無しだと思ったり(なんだこれ)。


即座に浮かんだ愚地克巳の姿を貼っておきますね。
片腕という個性!


3つ目は、「呑気でもいいんだ」と思って。本作は「戦争とともに終わったすずさんの少女時代」を描いているとも言えますが、あのノホホンとした感じは自分の娘が重なってしまって。娘のマナ子はちょっと成長が遅めというか、5歳なのに今も「おかあさんといっしょ」に夢中であり、アンパンマンが大好きということからも、子どもを育てたことがある人ならわかっていただけるかと思います。だから、他の子にも舐められがちであり、先日、公園で一緒に遊んでいたところ、目が悪い=眼鏡を掛けているマナ子に対して同い年ぐらいの男児が「メガネザル〜 (`∀´)」なんて言ってきたのです。

そのクソガキの顔には“娘の心を傷つけようとする悪意”が表れており、その刹那、脳裏に「元警官、白昼の凶行!原因はママ友とのトラブル!?」なんて「週刊女性」の不吉な見開き記事が浮かんで、かぶりを振ったものの(だが、「このガキの親はスマホに夢中でこっちを見ていないな…」とはチェック)、肝心のマナ子ったら全然気付かなくて、「サルじゃないよぉ〜、マナ子だよ〜 (´∀`しンモウ!」と呑気な対応ですよ。僕としては、人を傷つけるような子にはなってほしくないけどさ、こんなことでこの厳しい世の中を生きていけるのかと不安になる部分もあって。せめて「しゃッ!川`Д´)」と一喝するような強さを持ってほしいと思ったりしたんですが、しかし。


周囲のギャラリーを一喝する範馬勇次郎を貼っておきますね。
しゃッ


本作の“優しい人たち”を観ていたら、これはこれで良いのかなぁと。隣組が出てくれば「相互監視社会か!(`Д´)」と、すずが憲兵に取り調べられたら「これで家での肩身が狭くなるのか!(`Д´)」と、晴美が死んだら「これでみんな険悪になるのか!(`Д´)」と、僕はすぐ悪い方へ悪い方へ考えがちだったんですが、本作は全然そんなことなくて。時代背景的に助け合わなくては生きて行けないだけなのかもしれないけど、世の中、意外とこういう“善の部分”もあるんじゃないかって、思わされてね、よくわかりませんが、なんとなく娘もそのまま育ってくれればいいのかな…なんて、今も涙が出たりする次第。


楠公飯を食べるシーン。「こんな飯を作りやがって!ヽ(`Д´)ノ」と夫がDVしたりはしないのです(そりゃそうだ)。
優しい人たち


最後、不満というか、気になったところを書くと、僕は「すずが、後から自分の記憶をエピソードごとに辿っているのかな」と思ったので飲み込めましたが、あまりにもエピソードをテンポ良く紡いでいくから、若干の「ダイジェストを見せられた気分」もあったかなぁ…ってぐらいですかね。その他、冒頭と後半に出てくる「子どもをカゴに入れて運ぶ人さらい」に関しては、すずと修平が出会うきっかけとなった幻想的な存在なんですけど(原作漫画を読むと、「鬼ぃちゃんのその後」でもある)、「僕も娘をカゴに入れて運んでみたい… (´Д`;)」と憧れてハァハァしたりしましたよ。


漫画版の人さらい。彼を見た瞬間…。
漫画版の人さらい

ジャック・ハンマーのような気持ちになった…って、どうでもいいね。
俺の理想像だ


ということで、例によって駄文をダラダラと書き散らかしてきましたが、僕が間違っていました。当ブログは「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>」「ラスト・ウィッチ・ハンター」を優先して見るべきなのは確かですけど、本作にあっては別腹。合うにせよ合わないにせよ、クラシックとなることが確定の「全人類が一度は観ておくべき映画」じゃないでしょうか。「すみちゃんの手に出たアザ」とか、説明不足に感じる部分もあるかもしれませんが、それはむしろ各自でいろいろと調べるキッカケになるんじゃないかと。日本人が読んでも「ペルセポリスI イランの少女マルジ」はスゲー面白いように、この映画は他の文化の人たちにも届くと思うので、海外とかでもバンバン上映されると良いですな。何はともあれ、娘が小学生ぐらいになったら家族3人で観て、この世に生きる喜び、そして悲しみのことなどを話し合おうと思っております。おしまい。




唯一観ていた片渕須直監督作。良い映画でございます。



こうの史代先生による素晴らしい原作本。中巻までは楽しく読めるも、下巻は35P以降、ページをめくれない… (ノω・、)



コトリンゴさんによるサントラ。スゲーほしい。デジタル盤もあります。



アニメの公式ガイドブックでございます。



絵コンテ集もありましたぞ。