十二単衣を着た悪魔 | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:黒木瞳
キャスト:伊藤健太郎/三吉彩花/伊藤沙莉
配給:キノフィルムズ
公開:2020年11月
時間:112分




平安時代中期に成立した日本の長編物語『源氏物語』。紫式部によって書かれてから1000年を経てなお読み継がれる超ベストセラー作品だ。ドラマや映画でも取り上げられ,このコーナーでも『源氏物語/千年の謎』に続き2作目となる。今夜紹介するのは人気脚本家・小説家の内館牧子が源氏物語の世界を舞台に描いた小説『十二単衣を着た悪魔/源氏物語異聞』を原作として,女優でもある黒木瞳が監督を務めた異世界トリップ・エンタテインメントだ。

醍醐天皇中宮の藤原穏子をモデルにしたと言われる弘徽殿女御(こきんでんのにょうご)の視点で物語が進むのはユニークで,嫉妬心・猜疑心の強いアクのあるキャラの見方が変わる。もちろんタイトルの『十二単衣を着た悪魔』とは,この弘徽殿女御を指している。『プラダを着た悪魔』にリスペクトしたタイトルや構成も面白い。

フリーターの伊藤雷(伊藤健太郎)は就職試験に59連敗中。京大に合格した優秀な弟・水(細田佳央太)に劣等感を抱いていた。ある日,イベント「『源氏物語』と疾患展」の設営バイトの帰り道,突然雷に打たれた雷は,目覚めると『源氏物語』の世界にトリップしていた。不審者扱いされ牢に閉じ込められた雷だったが,手提げ袋に入っていた『源氏物語』のあらすじ本のおかげで未来を当ててみせ,口から出まかせで陰陽師・伊藤雷鳴を名乗ると,さらにはこれもバイトの土産だった頭痛薬が皇妃に効き,まんまと後宮で陰陽師として重用されることになる。

皇妃の名は,桐壺帝(伊勢谷友介)の妃である弘徽殿女御(三吉彩花)。彼女は現代のキャリアウーマン顔負けの逞しいハートと冷静な分析力で,一宮(=長男)である息子の春宮(田中偉登)を帝にしようと野心に燃えていた。皇位を争うのは異母弟で何でもできる一流の二宮(=次男)の光源氏(沖門和玖)だ。雷は自分の境遇を“一宮”と重ねつつ,辣腕で悪魔的に強き女性・弘徽殿に翻弄されながらも次第に触発され,運命を共にしようと決心するのだったが…。

ちょっとバタバタ感はあるが,女性監督らしい華やかさと繊細さもあり,楽しめる1本。残念なのは主演の伊藤健太郎と共演の伊勢谷友介の2人が,公開直前にやらかしちゃったことで,興行的には大コケとなってしまった。

個人的には倫子を演じた伊藤沙莉がいい味を出していて,雷の成長を描く上でのヒロインとなっていく。しかし伊藤沙莉,NHKドラマ『いいね!光源氏くん』にこの作品と,『源氏物語』絡みでブレイクしてきたな♪


映画クタ評:★★★★


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