ファーストラヴ | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:堤幸彦
キャスト:北川景子/中村倫也/芳根京子
配給:KADOKAWA
公開:2021年2月
時間:119分




2018年の『人魚の眠る家』以降,年イチのペースで社会派ミステリーを公開している堤監督。今夜紹介するのは,人気作家・島本理生の第159回直木賞受賞作を原作とし,今年2月に公開された最新作『ファーストラヴ』。

タイトルからイメージさせる初々しさや甘酸っぱさはないし,決して軽くもない。しかし,めちゃくちゃ重いトーンではなく,キチンと見せる緩急のある作品に仕上がっている。

川沿いを血まみれで歩いていたアナウンサー志望の女子大生・聖山環菜(芳根京子)が,父親を刺殺した容疑で逮捕される。事件はメディアでも大きく取り上げられ,取り調べで環菜が語った「動機はそちらで見つけてください」という挑発的な言葉も注目を集めることに。そんな中,公認心理師の真壁由紀(北川景子)は,この事件のルポルタージュを依頼され取材に乗り出す。

一方,国選弁護人として環菜の弁護に当たるのは,由紀の夫・我聞(窪塚洋介)の弟で,由紀の大学時代の同級生でもある庵野迦葉(中村倫也)だった。由紀は迦葉と協力し本当の動機を突き止めるため,環菜との面会を重ねていく。しかし,二転三転する環菜の供述に翻弄され,真実が歪められていく。環菜にどこか過去の自分と似たものを感じ始める由紀。やがて,自分の過去を知る迦葉の存在と,環菜の過去に触れたことをきっかけに,心の奥底に隠したはずの“ある記憶”と向き合うことになる由紀だったが…。

累 -かさね-』を凌ぐほどの壮絶な感情の起伏を,鬼気迫る演技力で魅せた芳根京子。その芳根京子と面会室のアクリル板に反射し重なる北川景子のアングル。建前と本音が代わる代わる顔を覗かせるようなセリフ回しの変化など,いくつもの“TRICK”が仕込まれた作品でもあるが,個人的には窪塚洋介。『ピンポン』から19年,優しい眼差しと落ち着いた態度で妻・由紀や弟・迦葉を温かく見守る我聞の姿は最初,窪塚だとは気づかなかった。

タイトルの『ファーストラヴ』の意味も,単に環菜の初恋だけでなく,大人になったそれぞれの登場人物が過去と今に注ぐ“最初の愛”とのダブルミーニングであると気づいた時,見る者も“愛”に満たされる,そんな秀作だ。


映画クタ評:★★★★


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