キングスマン | p・rhyth・m~映画を語る~

p・rhyth・m~映画を語る~

メインブログ【くた★むび】



原題:Kingsman: The Secret Service
監督:マシュー・ヴォーン
キャスト:コリン・ファース/サミュエル・L・ジャクソン/タロン・エガートン
配給:20世紀フォックス/KADOKAWA
公開:2015年9月
時間:129分




「Manners maketh man.(マナーが紳士を作る)」とは,オックスフォード大学のニュー・カレッジや,ウィンチェスター・カレッジを創設した中世の神学者・政治家・教育者のWilliam Hormanの名言。「maketh」は昔の英語で,現代英語にすると「Manners make the man.」となる。この作品の台詞としても登場するこの言葉は,イギリスの伝統と階級意識をアレンジし,尊く美しいモノの真髄を現代へと継承するというテーマを響かせる。『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(2011年・20世紀フォックス)のマシュー・ヴォーン監督が,『英国王のスピーチ』(2011年・モメンタム)の名優コリン・ファースを迎えて描く痛快バイオレンス・スパイ・アクション。

高級テーラー“キングスマン”で仕立て職人として働く英国紳士のハリー(コリン・ファース)。その正体は,どの国家にも縛られることなく秘密裏に正義を遂行する国際的なスパイ組織“キングスマン”のエース・エージェント。ある日,エージェントの一人が何者かに殺害され,その欠員を補充するためハリーは,貧困地区で無軌道な生活を送っていた若者エグジー(タロン・エガートン)をスカウトする。彼の父はキングスマンのエージェントで,17年前,その犠牲的行為でチームを救い命を落とした,ハリーの恩人だったのだ。こうしてエグジーは,父の後を継ぐべくキングスマンの過酷な新人試験に身を投じていく。一方ハリーは,天才IT富豪のリッチモンド・ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)が水面下で進めていた恐るべき陰謀の謎を追っていくが…。

アメリカ映画でよく扱われる人種と,イギリス映画でベースにされる階級や家柄の対比も,こっそり描かれていて面白い。かつて労働者階級出身のショーン・コネリーが『007』を演じる際に徹底した紳士教育を受けたという逸話を膨ませたというこの作品。そこから見いだされた普遍的な答えが「階級に限らず,誰もが限界や境界を抱えている。それらを飛び越えて己の人生と闘う。それこそが紳士」というものだった。

ヴァレンタインvsハリーによる〈作り物の上品さvs真の品格〉も,ヴァレンタインの部下ガゼル(ソフィア・ブテラ)vsエグジーの〈作り物の力vs真の強さ〉も,キングスマンの頂点に立つアーサー(マイケル・ケイン)からハリー,さらにエグジーへの世代交代も,それらを象徴するもの。

観ている間は,スピーディでR15+な映像に釘付けになっちゃうけど,エンドロールと共にアドレナリンをクールダウンさせながら,そんな〈対比と継承〉を考えると,この映画の深さに感動する。

ハリーはエグジーに言う。
「Now, my point is that the lack of a silver spoon has set you on a certain path that you needn't stay on. If you're prepared to adapt and learn, you can transform.(要するに,私が言いたいのはね。家柄がよくないために今は好ましくない環境にいるかもしれないけど,自ら変化に適応し,学ぶ気持ちがあるなら,立派な人間に生まれ変わることができるんだよ)」と。

あッ!
弱冠,腕が飛んだり頭が破裂したりってシーンもあるから…心臓弱めの人は覚悟してね。


映画クタ評:★★★★★


右矢印「クタ評」5つ星★作品まとめ

右矢印サミュエル・L・ジャクソン作品まとめ

右矢印マイケル・ケイン作品まとめ