キングスマン/ファースト・エージェント | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:The King's Man
監督:マシュー・ヴォーン
キャスト:レイフ・ファインズ/ハリス・ディキンソン/ジャイモン・フンスー
配給:20世紀スタジオ/ウォルト・ディズニー・ジャパン
公開:2021年12月
時間:131分




ディズニーによるアメリカ大手映画スタジオの再編が止まらない。“ビッグ6”のひとつであった“20世紀フォックス”がディズニーに買収されて以降,また“Disney+”でしか見れない過去作品が増えてしまったのは戦略を称賛しつつも,配信に重きの置かれていくことへの寂しさもある。

この『キングスマン/ファースト・エージェント』も当初公開予定は2020年9月だったのに,買収劇のゴタゴタで公開が1年以上延期され,ちょうどコロナ禍で劇場鑑賞ができなかった作品の1つ。タイトル通り『キングスマン』の前日譚として,その誕生秘話を描く痛快アクション・エンタテインメントだ。監督は『キングスマン』『キングスマン/ゴールデン・サークル』に引き続きマシュー・ヴォーン。

1902年。戦場の殺戮に嫌気が差し,軍隊を退役後,世界の戦地に救援物資を届ける赤十字の活動を行うイギリスの名門貴族オーランド・オックスフォード公(レイフ・ファインズ/吹替:小澤征悦)。妻子と共に訪れていた第二次ボーア戦争中の南アフリカの基地で,盟友の指揮官キッチナー(チャールズ・ダンス)や副官モートン(マシュー・グード)と面会する。しかしその帰り際に,ボーア人兵士の重撃によって妻のエミリー(アレクサンドラ・マリア・ララ)を亡くしてしまう。

それから12年。“羊飼い”を名乗る謎の男が,世界に混乱を巻き起こそうとしていた。秘密会議の開かれた断崖絶壁の小屋に集ったのは,ロシアの怪僧ラスプーチン(リス・エヴァンス),女スパイのマタ・ハリ(ヴァレリー・パフナー),セルビアのテロリストであるガヴリロ・プリンツィプ(ジョエル・バスマン/吹替:松陰寺太勇),ロシアの革命家レーニン(アウグスト・ディール),ドイツのニセ預言者エリック・ヤン・ハヌッセン(ダニエル・ブリュール)など,後に世界を揺り動かすことになるキーパーソンたち。“羊飼い”の目的は,いとこ同士であるイギリス国王ジョージ5世(トム・ホランダー),ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世(トム・ホランダー),ロシア皇帝のニコライ2世(トム・ホランダー)を反目させ,世界に破滅的な戦争を起こすことだった。

キッチナーの依頼を受け,成人した息子のコンラッド(ハリス・ディキンソン)と共にオーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナンド大公(ロン・クック)を護衛するオックスフォード公だったが,サラエボ事件は起きてしまう。人類を破滅から救うため,執事のポリー・ワトキンズ(ジェマ・アータートン)やショーラ(ジャイモン・フンスー)と共に,世界大戦を密かに操る“闇の狂団”に立ち向かうオックスフォード公だったが…。

エグジーもハリーも出てこない『キングスマン』だし,そもそもエンディングまでスパイ組織としての“キングスマン”は登場しない。しかしその成立への経緯を描くこの作品は,歴史サスペンスとしての面白さに溢れている。“闇の狂団(The Shepherd's Flock)”のメンバーなんてリーダー以外全員が実在の人物だし,サラエボ事件に始まる第一次世界大戦時の国々の駆け引きに,オックスフォード公の親子愛を絡めた物語の厚み。スマートとは言えないが当時56歳レイフ・ファインズの必死のアクションも緊迫感を高める。

エグジーの出演する『キングスマン』続編の撮影も始まった頃。「『ファースト・エージェント』では時間をずっと遡って,次の『キングスマン』で起きることの種を植えた」と語っていたマシュー・ヴォーン監督。今後の展開に期待が膨らむ。


映画クタ評:★★★★★


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◆シリーズ一覧◆

キングスマン』(2015年)

キングスマン/ゴールデン・サークル』(2018年)