マインツの町は大聖堂 を中心にしたあたりが旧市街ですけれど、
大聖堂の裏手、南西側でしょうか、キルシュガルテンという一角に
最も昔の名残をとどめていると言われているようで。
ただ、そうしたエリアだからこそ観光客が通りすがることになり、
観光客が通りすがるとなれば、観光客目当ての店が軒を連ねるようになり…ですね。
ですから、こうした看板にも目は留まるものの、
何のお店かというと観光客の土産ものになる手工芸品のショップだったり。
ただし、観光客云々は結果であって、あたりにはギャラリーも多く、
ドイツ的なクラフトマンシップに溢れた方々が集まる地域なのかもですので、
想像でモノを言うのはほどほどにしときませんとね…。
とまあ、こうした路地を抜けて行きましたのは、ここそのものがお目当てなのではなくして
別の目的地への通り道だからということなのでして。
やがて、古い街並みも終わり、ちと高台へと。
何だかもったいぶって目的地を言ってませんですが、実は聖シュテファン教会なのですね。
前の晩にラインガウ音楽祭 の一環で開催されたバッハの演奏会を聴いた、その教会です。
前の晩に行ったのに「何故再び?」となりましょうけれど、
要するに夜では見られないものを見に行ったわけなのでありますよ。
それはステンド・グラスなのでして。
さて、いかにもキリスト教の教会らしく、
魚とパンをあしらった重そうな扉の中へと入ってみることにいたしましょう。
すでにお気付きの方もおいでと思いますが、タイトルにある「シャガール・フェンスター」、
フェンスターはドイツ語で窓のことですので「シャガールの窓」、
要するにマルク・シャガール が手掛けたステンド・グラスの窓で有名という。
ご存知のようにシャガールはユダヤ人
ですので、
画家という偶像を生み出す仕事に対する葛藤があったことは知られているところですけれど、
その葛藤を乗り越えて絵画芸術に邁進するときにヨーロッパにあってキリスト教会と無縁では
いられなかったことでありましょう。
内心の思いのほどまでは詳らかではありませんけれど、
割り切り(とは安い言葉ですが)が必要でしたでしょうし、むしろ逆境をばねにもしたのではと。
それにしても、シャガール・ブルーはステンド・グラスによく映えますね。
いつもいつも旅先では携帯電話のおまけ機能で写真を撮っているものの、
実は今回わざわざ借りてまでカメラを持参していったのは、これを撮るためでありました。
しかしながら、これまでの写真でご想像のとおり決してその効果を発揮しているようには思われない。
後から聞いたところによると「調子、悪かったでしょ」とどうも不具合があるのを知っていて
貸してくれていた由、いやはや…です。
が、差し当たりマシに撮れていたと思しきものをクローズアップして、
シャガールらしさの一端を振り返っておこうかと。
見れば見るほどにシャガールですなあ。
堂内の片隅にはシャガールが描いた下絵も展示されておりました。
ということで記録としての写真は芳しからざるものとはなりましたですが、
まあ、行ってきたものとしてはそんな写真でも見れば脳裡に蘇るものがある。
大事なのはそれですよね。


