おまたせしました!ノルウェー人の冒険家魂を偲ばせる第1弾であります。
ノルウェー民俗博物館前のバス停で改めて30番のバスに乗り直し、
辿りついたのはビグドイネスというところ。


ヴァイキング船博物館ノルウェー民俗博物館 がある辺りでは

全く見えなかった海が眼前に広がっていて、
オスロ市庁舎 前から出るフェリーも目の前の桟橋に到着するという場所なのですね。


でもって、このバス停のぐるり三方を3つの博物館が取り囲んでいるという状況。
さてどこに入ろうかと思うまでもなく、バスを降りて目の前の看板に
「毎日12時からアカデミー賞受賞のドキュメンタリー映画を放映」と

もちろん日本語ではありませんが、英語で書かれてあったものですから、
まずはこれ!と飛び込んだのが、コンティキ号博物館(Kon-Tiki Museet)でありました。


年少者向けの冒険物語シリーズなんかには
おそらく「コンチキ号漂流記」とかそんなタイトルで入ってましょうし(て読んでなかったですが)、
つい先頃には映画「コンティキ」が公開(って、観てないんですが)されたりもしてますので、
おそらくはご存知の方が多いと思われるコンティキ号の冒険譚ですが、
個人的にはこの機に本を読んだということもあり、その辺も織り交ぜていこうかと思っとります。


コン・ティキ号探検記 (ちくま文庫)/筑摩書房


事の発端は、トール・へイエルダールというノルウェー人学者が
南洋ポリネシアのとある島に滞在しているときのこと、
島で見つかった古い時代の石像がどうも南米に見られる石像と似てはおるまいか

と気付いたことにあります。


この段階では本来の専門とは畑違いの分野であったようですが、
あれこれ調べ、考えを巡らせているうちに辿りついたのは、
ポリネシアの島々には南米から移ってきた人たちが住みついたのではないか

という説なのですね。


人間(という種)はアフリカに端を発して各地に移り住むことで広がっていったわけですが、
まず地続きであれば移動していけますし、海があっても

たいていの距離なら渡っていけたと考えられる。


地図を見て、例えばマレー半島からインドネシアの島伝いに行くと

ニューギニアにもオーストラリアにもそしてフィリピンやソロモン諸島なんかにも

行けそうな気がしてくるわけです。


ですから、ポリネシア(ハワイ、ミッドウェー、ニュージーランド、イースター島を結んだエリアらしい)の
島々にも何とかかんとか島伝いに渡っていったのではないかと考えるのは、無理のない話かと。


ですがヘイエルダールが考えたのは、西から島伝いにじわじわなんてことでなく、
南米大陸からダイレクトに渡ってきたのだ!と言ったわけでありますよ。
そして、名だたる学者は誰も相手にしなかったそうで。


それもそのはずと言いますか、感覚的に捉えるにはこんな方法はどうでしょう。
Google Mapか何かでヘイエルダールが目指したマルケサス諸島(マルキーズ諸島)を検索します。


表示からはヒバオア島と周辺にいくつかの小島があることが分かりますが、
その状態で画面を東へ東へとスクロールさせるのですね。


表示される画面には一点の島影もなく、

ただひたすらの海がずーっとずーっと続いているのが分かります。
個人的に試したところでは画面横いっぱいのスクロールを37回繰り返して

ようやく南米ペルーが見えました。


要するにこれだけ海しかないところを渡っていったなどと考えることに
学者の方々は呆れかえってしまい、

「君がやってみたら」てなことをヘイエルダールに言ってしまったのですな。
「そうか!」と思ったヘイエルダール、自分でやってみようということにしたわけなのですね。


乗物は当時の人たちに作れたであろう筏。
南米でとれるバルサ材をロープで縛って(まだ鉄を使っていない人たちだったようで)組み上げ、
竹材で床を敷き、小さな小屋を載せて…と作り上げたのがコンティキ号というわけです。


コンティキ号@コンティキ号博物館


博物館で見たドキュメンタリー映画では、勝手に筏に飛び込んでくる魚を拾って料理したり、
はたまたイカの墨を使ってメモを書いたり、ギターを弾いたり、海に潜ったり…、
そして辿りついたところでは南の島のおねいさんがポリネシアン・ダンスで大歓迎!と
何だか楽しそうなふうにばかり見えたのでありますよ。


ですが、その実さきほど地図でスクロールしていただいたように海しかない中での100日あまり。
天候が悪く、怒涛の波に翻弄されたこともたびたびあったろうにと思うわけでして、
その辺りはむしろ本でないと知り得ないということになりましょうか。
(本を読むと、出発前の苦労のほどもまた面白いところですね)


とまれ、はっきり言って生きて帰れると考える方が楽天家というか、
ノー天気に思える無謀な実験航海に突き進んだヘイエルダールとは

並々ならぬ冒険者魂の持ち主だったのでしょう。
その後も大西洋をラー2世号という葦船で渡ったりといった実験航海を

何度もやっているのですから。


ラー2世号@コンティキ号博物館


ヘイエルダールは成功例でしょうけれど、

長い歴史の中では自説の立証もままならぬままに

検証の過程で消えて行った幾多の例があって、

その上に今の知見があり、さらに先を目指す人たちが続いている。


と、長々書いておりましたら、博物館のことがすっかりお留守に。
でも、こうしたコンティキ号をはじめとして

ヘイエルダールの行った実験航海のあれこれを見ることができる所ですから、
この場合は「読んでから行く」ことこそベストでありますし、

それによってより以上に楽しめる場となるということは言えましょうね。